公開日/2022年2月28日

生命保険で生活資金の確保の記事イメージ画像

生命保険金は、相続発生直後に必要となる資金確保という意味合いにおいて、大いに活用が期待できます。

ここでは、生命保険金が相続発生後の当面の資金として役に立つことを、金融機関の預金口座の資金の使い勝手と比較しながらお伝えしていきます。

❏死亡後にかかる費用

人が亡くなると、思いがけずお金がかかるものです。真っ先に思い浮かぶものとしては、葬儀費用、お墓の建立費用などです。突然の訃報であればなおのこと、何の準備もないまま、急にまとまったお金が必要になり困惑することもあるでしょう。

ある調査によると、葬儀、飲食代、返礼品を含めた葬式にかかる費用は、全国平均で185万円、同じくお墓の建立費用(一般墓)は169万円というデータがあり、このことからもある程度まとまった資金が必要となることがうかがえます。

この他にも、遺族の当面の生活費や、故人の生前に所得があった場合には、故人の所得税の納付も必要となります。

その他に相続関連費用として諸手続きにかかる手数料も必要ですし、事務手続きを専門家に依頼する場合にはそれなりの費用もかかります。

※早めに専門家に依頼する場合は→コチラをご覧ください。

❏故人の預貯金は相続人全員の共有財産

金融機関の口座名義人が亡くなって、家族がそのことを銀行などへ報告すると、故人の口座は凍結されて入出金などの手続き一切ができなくなります。

故人の生前の入院費や葬儀代、所得税の支払いなどがある場合には、故人の預金口座の資金を使いたいところですが、口座が凍結された時点で、預金口座は相続人全員の共有財産となってしまうため、たとえ、故人に関連する費用であったとしても、口座の資金を使うことができません。

口座凍結を解除し、故人の預金口座から払い出しをするには、遺言書で相続人が指定されている場合を除き、遺産分割協議を経る必要があります。遺産分割協議には相続人全員の合意が必要なことと、凍結解除のための必要書類も多岐にわたることなどから、相応の時間がかかります。

必要な資金を預金から払い出せないことで、葬儀やお墓などの手続きがスムーズに進まず困るケースがでてきます。また、遺産分割協議が長引けば、遺族の生活費の心配も増します。

なお、口座の凍結は基本、遺族が金融機関に報告することにより行われるため、報告をする前に資金を払い出してしまえばいいのではと考えるかもしれませんが、これはお勧めできません。なぜなら、この行為は、共有財産を使ったことになってしまうので、相続人間でトラブルになる可能性があります。また、後々相続財産をすべて洗い出したときに、負の財産のほうが多いことが判明したとしても、相続放棄ができなくなります。

❏故人の預金の相続には時間と手間がかかる

産分割協議が終わり、必要書類の準備ができたら、金融機関で口座の相続手続きを行います。故人が複数の金融機関に口座を保有していた場合は、金融機関ごとの手続きが必要です。

凍結解除のための提出書類

・金融機関所定の届出書

・故人の口座の通帳、キャッシュカード

・遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印)

・故人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本

・相続人全員の戸籍謄本

・相続人全員の印鑑証明 ・手続きする人の本人確認できるもの

このように、用意すべき必要書類も多いこと、遺産分割協議が終わらないと手続きに入れないこともあり、準備段階でそれなりの時間がかかります。無事に凍結解除に至るまでに数ヶ月を要することもあるようです。 この一連の手続きは、相続人自身で行うこともできますが、税理士、行政書士、司法書士などの専門家に依頼することも可能です。ですが、専門家に依頼すれば、当然費用が発生しますので、ここでも預金を払い出せないのは不都合です。

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❏遺産分割協議前の相続預金の払戻し制度

そうは言うものの、資金が足りずに困る方の救済制度として、凍結口座の正式な相続開始前に、当面に必要な一定額の払い出しができる「相続預金の払戻し制度」があります。

払戻しの上限額は、

「預金残高x1/3x仮払いを受ける人の法定相続割合」

であり、一つの金融機関ごとの払い戻し限度額は150万円です。

例えば、故人の預金口座の残高が600万円で払戻しを受ける人の法定相続割合が1/2であれば、

600万円x1/3x1/2=100万 まで払戻しができます。

なお、この払戻し制度によりお金を受けた人は、遺産の一部を前払いで受け取ったことになります。

相続預金の払戻し制度の詳しい記事は→コチラをご覧ください。

❏生命保険が相続発生後の生活資金として有用な理由

生命保険金と銀行預金の最大の違いは、銀行預金は相続人全員の共有財産であるのに対し、生命保険金は、受取人の固有の財産であることです。

生命保険金であれば、受取人が葬儀の費用や生活費など、共同相続人の許可なく自由に使うことができます。よって、被相続人の死亡後に葬儀の手配を含め一連の手続きについての費用を負担する予定の人を保険金の受取人としておけば、死亡直後に必要となる当面の資金の心配を回避できます。

また、説明してきた通り、銀行預金の相続手続きには時間がかかりますが、生命保険金の請求手続きは、提出書類も含め、銀行への手続きよりも容易です。必要書類を保険会社へ提出後、書類に不備がなければ、原則5日で保険金を受け取ることができます。

死亡保険金請求に必要な書類

・保険会社所定の請求書

・死亡診断書

・被保険者の住民票

・受取人の戸籍謄本(抄本)

❏葬儀費用や当面の生活費のために生前に準備できること

相続後の資金で慌てないためには、できることは生前に準備しておくと安心です。

・生命保険へ加入しておく

死亡直後に発生する費用に保険金を充てられる。

生命保険金は、受取人の財産ですので、他の相続人の許可なく自由に使えます。

・預金口座や、加入している保険を家族に共有しておく

預金口座にかかわる必要情報をあらかじめ家族へ知らせておくことで、口座凍結解除までの時間を短縮できます。特にネット銀行などは要注意です。口座の所在がわからないと、相続手続きに更に時間と手間がかかってしまいます。

加入している保険についてもあらかじめ家族へ知らせておくことで、スムーズな手続きができます。

・現金を準備しておく

亡くなった後にすぐに必要となるお金は、現金で保有する。

安全面が危惧されますが、最低限の生活資金を手元に確保しておければ安心です。

❏まとめ

相続開始後にはまとまった資金が必要となります。いざというときに慌てないためにも資金をどのように準備するか考えておくことが大切です。

銀行口座は相続までに一定の時間がかかりますし、救済策である仮払い制度も、払い出しには上限額がありますので、必要資金に充分でないこともあるでしょう。

生命保険の保険金であれば、保険請求から受け取りまでにかかる時間は短いため、すぐに必要資金に充てられます。

生命保険は、万一の時の保障という意味合いが大きいですが、このように相続対策として活用可能であることを知っていただけたら幸いです。


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この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。