公開日2021年8月26日
相続する遺産の中に不動産があると、分割の仕方が複雑になってきます。
少しでも分割方法と換金方法を理解して、いざという時のために備えておきたいですね。
(目次)
亡くなった方の遺産の中に不動産がある場合と無い場合では、遺産の分割の考え方に違いが出てきます。
それは不動産の価格をどう考えるかによる違いです。
下記のA、B、Cともに同じ不動産です。
A 不動産を固定資産税評価額にした場合
預金4000万円+不動産4000万円(固定資産税評価額)=8000万円(遺産総額)
B 不動産を相続税評価額にした場合
預金4000万円+不動産6000万円(相続税評価額)=1億円(遺産総額)
C 不動産を時価評価にした場合
預金4000万円+不動産8000万円(時価評価額)=1億2千万円(遺産総額)
上記のように不動産の評価額によって、故人の遺産総額は変わってきてしまうのです。
固定資産税評価額は、固定資産税の税額を決めるための評価額で上記の事例では一番低い評価額になります。
相続税評価額は、相続税の計算に使われる評価額で、時価の80%程度と言われていますが、立地等によって変わってくるので一概80%とは言えません。
時価は、売買価格に近い価格ですが、実際に売却して換金するわけではないので、幅が出るのが普通で一つの確定数字は出せません。
同じ土地の評価額が変わって、遺産総額が変わってしまうと以下のような不都合が起きてきます。
事例の財産を長男・長女で分ける場合に
遺産の総額を長女と二分の一ずつ相続したいが
長男は不動産が欲しい
■Bの不動産を相続税評価額とした場合
預金4000万円+不動産6000万円(相続税評価額)=1億円(遺産総額)
不動産6000万円→長男
預 金4000万円→長女
計 1億円
※遺産総額の二分の一ずつ(5000万円ずつ)を分けるとすると、
長女が1000万円不足
■Cの不動産を時価評価額とした場合
預金4000万円+不動産8000万円(時価評価額)=1億2千万円(遺産総額)
不動産8000万円→長男
預 金4000万円→長女
計 1億2千万円
※遺産総額の二分の一ずつ(6000万円ずつ)を分けるとすると、
長女が2000万円不足
このように、不動産がある遺産分割は不動産の評価で変わってくることがあります。
不動産の評価は、遺産の内容によってどのように評価するのか検討します。
遺産分割にどの評価を使わなければいけないという決まりは無いので、相続人全員が納得できる価格であればどれを使っても遺産は分割できます。
ただ、遺産分割で揉めることがないように生前に、遺言や家族信託を使って遺産分割の方法を決めておくことが望ましいのです。
①現物分割
例えば、土地であれば
イ、一区画の土地を誰か一人に相続させること
ロ、複数ある土地をそれぞれの土地ごとに相続させること
ハ、一筆の土地を、いくつかの区画に分筆して、それぞれを相続させること
などの方法があります。
いずれにしても不動産の評価は必要になります。
②換価分割
遺産の不動産を売却して、現金預金に換えて、そのお金を相続人等で分配する方法です。
売却した相続人等には譲渡所得税が課税されますので、住民税も国民健康保険料等もその翌年に増えることになります。
それを承知しておいてもらわないと後で揉めることになります。
また、譲渡した場合には特例で税金が安くなる方法もあるので事前に検討が必要です。
③共有分割
遺産の不動産を共有状態で相続することを言います。
例えば、一つのマンションの部屋を兄弟三人で三分の一ずつ共有で登記して所有する方法です。
不動産を共有登記すると、その不動産のどこが自分の所有というわけ方はできなくなります。
金太郎あめのように、不動産のどの場所を切り取っても相続人間で決めた共有持ち分の比率になっていて、誰でも利用することができるのが原則です。
共有状態の不動産を他人に売却する場合には、全員の合意が無いと売りにくいので、売却価格や時期で揉めることがあります。
売却せずに賃貸する場合には、この例でいうと原則として収入も経費も待ち分割合の三分の一ずつに分けることになります。
④代償分割
不動産を相続する人が、不動産を相続する代わりに他の相続人にお金(代償金)を支払って遺産分割する方法です。
例 相続財産が不動産4000万円だけで、兄弟二人で二分の一ずつ相続したい場合。
兄 弟
遺産の不動産 4000万円 → 4000万円 0円
兄の預金 2000万円 △ 2000万円 → 2000万円
±2000万円 +2000万円
兄が4000万円の不動産をもらう代わりに、自分の預金を2000万円弟に支払えば、差引それぞれがこの相続で2000万円のプラスになります。
この方法を使うと、代償金としてお金が動いても、譲渡所得や贈与の対象とはならず、相続の範囲内で相続税以外に課税されずに済ませることも可能です。
遺産に不動産がある場合の有効活用は次の切り口からも考えてみましょう。
不動産にローンがついているときには、債務の承継や返済も含めてできるだけ早く(おおむね相続開始後3ケ月から6ケ月以内)結論を出す必要があります。
①相続人が自分で住む
・遺産が居住用の土地であれば、相続税の小規模宅地の特例が使える可能性があります。
特例の要件に合致すればその土地の相続税評価額を80%減らすことも可能です。
相続税の節税になります。
・その土地建物に住んでも良い人にとっては、他から購入するより、価格も諸経費も安く済ませることも可能です。
②他人に貸す
・賃貸物件に転用できる不動産であれば、その不動産の収益を賃貸後に相続人で分けることも可能です。
例えば、配偶者がいるうちは配偶者の生活費として、配偶者が亡くなってからは売却して相続人全員に分配するような家族信託契約を結ぶこともできます。
・新たに賃貸用不動産を購入するより投資効率ははるかによくなります。
③売却する
・住みたい人もなく、賃貸に回すこともできない物件であれば売却になります。
売却する場合には、どのような売却方法が一番手取りが多くなるのか、売却の手法と共に譲渡所得の税金の特例も考えながら、誰が売却してどう分配するのかを検討していくとこになります。
遺産に不動産ある場合には、相続にあたって検討しておいた方が良いことがいくつかあることをご理解いただけたかと思います。
不動産のあるケースでは、相続専門の税理士に相談することはもちろんですが、
不動産の有効活用も考慮に入れた遺産分割の企画提案ができる相談室に相談されることをお勧めします。
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