公開日2021年8月23日 更新日2022年4月27日

相続同意書の記事中イメージ画像、書類に印鑑をおる手元が写っている

相続手続きをする中で、相続同意書の提出を求められるケースがあります。

相続同意書はどういったものなのでしょうか?また、どのような手続きに有効なのでしょうか?確認していきましょう。

❏相続同意書とは何?

相続同意書とは、特定の遺産を誰が相続するのかについて、共同相続人の間で話し合い、その合意内容を記した書面のことです。

多くの場合、提出先機関に「相続同意書」のひな型の用意があります。

例えば、被相続人の銀行預金を、特定の相続人が相続することを共同相続人が同意した場合の「相続同意書」は次のようなものになります。

相続同意書のサンプル画像

前段部分である相続人の署名、捺印(実印)までは、提出機関がどこであっても必ず記入が必要な項目です。下段の具体的内容は提出先機関により異なります。

このサンプル同意書は、提出先が銀行ですので、

「○○銀行○○支店 普通預金 口座番号xxxx について、相続人○○○○が相続することを、共同相続人の全員が同意した。」という内容が記載されています。

❏遺産分割協議書との違い

「相続同意書」に似た書類で、「遺産分割協議書」があります。

こちらも相続手続きの際、たびたび必要になる書類ですが、両者の意味合いは少し異なります。

「相続同意書」は、ある特定の遺産について、相続人の一人が受け取ることを、共同相続人全員が同意したことを示した書類であるのに対し、「遺産分割協議書」は、被相続人の全ての財産について、誰が、何を、どれくらい受け取るか、相続割合までを示した書類になります。

つまり、「遺産分割協議書」は「相続同意書」を兼ねています。

遺産分割協議に時間がかかるときや、特定の相続だけ先に進めたい場合に、相続同意書は使われます。

具体的に、相続同意書で可能な手続きについて確認していきます。

1.預貯金の払い戻し

金融機関の口座名義人が死亡したことを金融機関に知らせると、その人の預貯金口座は凍結されてしまいます。相続人であっても所定の手続きを経なければ、払い戻し、名義変更、解約等、手続きの一切ができなくなります。

当然、遺産分割協議書を提出すれば、預金口座の凍結は解除されますが、遺産分割協議がスムーズに進まず、すぐには預金を払い出せない場合には、相続発生後に必要になる諸費用や遺族の生活資金に支障がでることがあります。

そのような場合に、「相続同意書」を金融機関へ提出することで、遺産分割協議前であっても、特定の相続人が、被相続人の預金口座から払い戻しを受けることが可能となります。諸費用の支払いに充てられるため、当面の資金不足の心配が軽減されます。

また、その特定の相続人は、口座の名義変更、解約などの手続きも可能となります。

2.車両・船舶の名義変更

被相続人名義の自動車、船舶などの名義変更をする場合には、陸運局へ「相続同意書」を提出することで可能となります。

陸運局へ提出する「相続同意書」には、被相続人、相続人の住所、氏名、実印のほか、自動車登録番号、車台番号などの記載が必要です。

3.許認可事業の相続

行政機関から許認可を得ている事業を、特定の相続人が引き継ぐ場合に、「相続同意書」の提出で事業を承継することが可能となります。

許認可事業とは、例えば、飲食店、スーパー、タクシー業、旅館・ホテル業、等々、多種多様です。 なお、これら3つの相続手続きは「相続同意書」のみを提出すれば手続き完了というわけではなく、当然その他の必要書類を同時に提出する必要があります。あくまで、「遺産分割協議書」の代わりに「相続同意書」を使えるという意味ですので、ご注意ください。

❏相続同意書が不要な場合もある

次の場合には相続同意書は必要ありません。

遺言書があるとき

被相続人の遺言書があり、遺言書の内容に沿って相続が行われる場合は、共同相続人の同意は必要ありません。よって「相続同意書」は不要です。

相続人が一人のとき

相続人が一人だけの場合は、同意する他の相続人がいませんので、当然ながら「相続同意書」は不要です。

❏まとめ

「相続同意書」を提出することで、預金の払い戻し、自動車の名義変更、許認可事業の承継という、特定の相続手続きを、遺産分割を待つことなく迅速に行うことができます。

「遺産分割協議書」があれば、「相続同意書」は必要ありませんが、遺産分割協議書の作成までに時間がかかる場合などに有効です。

特に、葬儀費用や遺族の生活費などで資金不足が心配される場合は、相続預金の払い戻しは、早い段階で行いたいところです。

「相続同意書」でできる3つの手続きを覚えておけば、いざという時役に立つかもしれません。

相続の知識を持っていなければ難しいケースもありますので、相続専門の税理士への相談をご検討ください。

まずは、ソレイユ相続相談室の無料相談をご利用になることをお勧めします。

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この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。