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相続税の申告が必要か不要かは、原則として相続人が自分自身であるいは専門家の力を借りて判断しなければなりません。
では、申告はどのような場合に必要になるのでしょうか?
以下では、相続税の申告が必要になる条件についてご説明します。
相続財産の総額が基礎控除額を超え相続税がかかる場合は、相続税の申告が必要になります。
しかし、実際のところ相続税がかかる人の割合は非常に少なく、国税庁の調べによると、2018年に亡くなった方は約5万人で、そのうち相続税が発生したのは約3300人です。つまり、相続税の納税が必要なのは全体の6.7%ほどしかいないのです。
相続税は、相続財産の総額が基礎控除額を超える場合にのみ発生します。
「基礎控除」とは、相続税を計算する際に相続財産の総額から差し引くことができる金額のことで、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。
例えば、被相続人の相続財産の総額が1億円で、法定相続人は妻と子の2人の場合を考えてみましょう。
このとき、基礎控除額は3000万円+(600万円×2人)=4200万円となります。したがって、1億円から4200万円を差し引いた5800万円に対して相続税がかかることになるのです。
相続財産の総額が基礎控除額を超えて相続税がかかることがわかったら、誰に申告義務があるのかを確認します。
基本的に、相続税の申告義務があるのは、相続や遺贈等により財産を取得した人です。
遺贈とは、被相続人の遺言の指示により財産を受け取ることです。
例えば、被相続人の遺言に「友人〇〇にA不動産を贈与する」と書かれている場合は、A不動産は友人に遺贈されたことになります。そのため、被相続人の財産に相続税がかかる場合は、A不動産の遺贈を受けた友人も遺贈の額に応じた相続税の申告と納税をする必要があるのです。
また、相続税の申告義務があるのは、財産の取得方法が相続や遺贈による場合だけではありません。
被相続人に相続人となる人がいない場合に財産を取得できる「特別縁故者」や、法定相続人ではないが被相続人の財産の維持や形成に特別な寄与をした「特別寄与者」なども相続税の申告義務者となり得ます。
先ほど、相続財産が基礎控除額を超え相続税がかかる場合に相続税の申告が必要であるとご説明しました。しかし、相続税がかからない場合でも相続税の申告が必要になるケースがいくつか存在します。
以下では、相続税がかからないとしても申告義務が発生するケースをご紹介します。
小規模宅地の特例を適用しなければ相続税が発生していたが、特例を適用することによって相続税額がゼロになった場合は、相続税の申告が必要になります。
小規模宅地等の特例とは、被相続人と同じ生計で暮らしていた人が、住んでいた土地や事業をしていた土地、他人に貸していた土地を相続した場合に、相続税の軽減を受けることができる特例です。
この特例を適用すると、被相続人が住んでいた土地を相続する場合は、330㎡の部分までの評価額を80%も減額することができます。
例えば、300㎡で4000万円の居住用地を相続する際に小規模宅地等の特例を適用すると、4000万円×80%=3200万円減額することができ、土地の評価額は800万円となります。
しかし、これによって相続税額がゼロになったとしても、相続税の申告義務があることには変わりありません。
また、減額率は土地の利用目的によって異なりますので、「相続する土地に特例が適用できるか」「どれだけ軽減されるか」を事前に調べておきましょう。
本来は相続税が発生するが、配偶者の税額軽減を適用することによって相続税額がゼロになった場合は、相続税の申告が必要になります。
配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が相続した財産が1億6000万円、または法定相続分のどちらか多い金額までの部分には相続税がかからないという特例です。
例えば、被相続人が1億円の財産を残して亡くなり、法定相続人が妻と子の2人のケースを考えてみましょう。
この場合、配偶者である妻の法定相続分は、相続財産の2分の1である5000万円となります。実際に妻が相続した額が8000万円だったとすると、配偶者の税額軽減により1億6000万円、または5000万円のどちらか多い方の金額までには相続税がかかりませんので、配偶者の相続税額はゼロとなります。しかし、これによって相続税の納税義務がなくなったとしても、申告義務があることには変わりありません。
これまで、相続税の申告義務がある場合についてご説明してきましたが、どのような場合に「相続税の申告義務がない」と言いきれるのでしょうか?
ここでは、相続税申告の義務がない場合をご紹介していきます。
相続財産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要であるとご説明しました。
つまり、相続財産の総額が基礎控除額を超えない場合は、財産を受け継いだとしても相続税の申告義務はないのです。
例えば、被相続人の財産が4000万円で、法定相続人が妻と子の2人のケースを考えてみましょう。
この場合の基礎控除額は3000万円+(600万円×2人)=4200万円となり、相続財産の総額よりも大きくなります。したがって、相続財産をどのような割合で分けたとしても、相続税の申告義務はありません。
そもそも、相続財産を受け取っていない場合は相続税の申告義務がありません。
相続放棄をすると「初めから相続人ではなかった」とみなされるため、被相続人の財産を相続することができなくなります。よって、基本的には相続税の申告義務がありません。
しかし、相続放棄をしたとしても申告が必要になるケースがあります。ここでは、相続放棄をした場合の申告義務についてご説明します。
相続放棄をしたとしても「みなし相続財産」は受け取ることができます。
みなし相続財産とは、民法上は相続財産ではありませんが、相続税を計算する上では相続財産に含まれる財産のことです。代表的なみなし相続財産には、生命保険金と死亡退職金があります。
もし、相続放棄をした人が生命保険金等を受け取った場合は、相続税の申告が必要になる可能性があるのです。
また、生命保険金等には「500万円×法定相続人の数」で計算される非課税枠がありますが、相続放棄をした場合はこの非課税枠を適用することができません。そのため、受け取った生命保険金等の全額に対して相続税がかかってしまいます。
相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったとみなされます。
しかし、相続税の基礎控除額を算出する上では、相続放棄をした人も法定相続人として加えることができます。
また、相続放棄をした人がみなし相続財産を取得し、かつ相続財産の総額が基礎控除額を超える場合には、相続税申告の義務があります。
例えば、被相続人の財産が1億円で、法定相続人が妻と長男、次男の3人、そのうち長男が相続放棄をした場合を考えてみましょう。
長男が3000万円の生命保険金を受け取ったとすると、受け取った長男が相続放棄をしているために生命保険金の非課税枠は適用されず、3000万円全額がみなし相続財産として相続財産に加算されてしまいます。
そのため、相続財産の総額は1億+3000万円=1億3000万円となります。
そこから基礎控除額4800万円(3000万円+600万円×3人)を差し引いてもまだ8200万円が残るため、相続税の申告が必要ということになります。
なお、相続財産と受け取ったみなし相続財産の合計額が基礎控除額よりも小さい場合は、相続税の申告義務はありません。
もし、相続税の申告義務があるかどうか不安な場合は、専門家へのご相談をおすすめします。
今回は、相続税の申告義務者についてご説明しました。
相続税の申告が必要かどうかは、税務署から通知がされるわけではなく、自分で調査し判断しなければなりません。
また、相続税の申告・納税は相続が開始してから10ヶ月以内に行わなければならず、正確な判断が求められます。 相続税額がゼロになった場合でも申告が必要になるケースもありますので、なるべく早い段階で相続税申告に関する知識を身につけておきましょう。
申告が必要かどうか不安な場合は、相続の専門家へ依頼することをおすすめします。
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