公開日/2022年4月21日

デジタル資産についての記事のイメージ画像、パソコンとパスワードが重なる

スマートフォンの拡大を背景にネット証券やネットバンキングの利用、仮想通貨の運用などの敷居が低くなった現代社会では、以前は存在しなかった新たな相続問題が発生しています。

それは、「デジタル資産の相続」です。デジタル資産の相続はそれ以外の不動産や預貯金、貴金属などとは異なり、亡くなられた方しかデジタル資産を把握しておらず、相続人が何もわからないといった問題が起きているのです。

そこで、本記事ではデジタル資産と生前から始めておきたい整理方法にスポットを当てて、詳しく解説します。

デジタル資産とは具体的にどんなもの?

そもそもデジタル資産とは、具体的にどんなものなのでしょうか。

デジタル資産とは「ネット上で管理されている財産」を意味します。例として挙げられるのは、ネットバンキングに預けている預貯金、投資信託や仮想通貨などです。便利なPAY系アプリにお金を入れている場合も資産に該当し、ネット保険も含みます。

デジタル資産と耳にしたときに証券や仮想通貨など投機要素が強いものを想像するかもしれませんが、PAY系アプリなども含めると相当数の方が現在デジタル資産をお持ちでしょう。以前は若年層を中心に普及していた仮想通貨も世界規模で注目を集める金融資産となり、高齢者層の方も投資している方が増加しています。

また、新たな金融資産として注目を集めているNFTもデジタル資産の一角を担いつつあります。デジタル資産は私たちの生活にとって大変身近なものなのです。

デジタル資産(ネット上で管理されている財産)

デジタル資産の項目表

デジタル遺品(パソコンやスマホなどのデータやネットサービスのアカウントなど)

デジタル遺品の項目表

新たな投資先として話題の仮想通貨とNFTとは

デジタル資産の中でも近年注目が集まっているのは仮想通貨とNFTです。

この2つの概要は以下の通りです。

・仮想通貨…別名暗号通貨とも呼ばれる仮想通貨は日本円やドルのように国で流通する通貨ではなく電子データ上でやり取りをする通貨です。

金融機関を通さなくても入手できる手軽さがある一方で種類も多く、上場前に出資を募る詐欺事件も起きています。日本ではビットコインやリップルなどが知られています。

・NFT…日本名で「非代替性トークン」と呼ばれるもので、仮想通貨とは異なり代替性のないデータ、という意味です。仮想通貨は通貨を交換できるため代替性トークンとも呼ばれます。

NFTはデジタルアートの現場で盛り上がっており、希少性の高いデジタルアートを早期の段階に購入し、作品を出品することで収益を得る仕組みです。

美術コレクターのデジタル版を想像すると理解しやすいでしょう。音楽配信の世界にも浸透しつつあり、有名アーティストも自らの作品をNFT化しています。

購入時のデータにはブロックチェーン技術が使われているため、贋作を買ってしまう心配がありません。仮装通貨にはまだまだ市場規模は及ばないものの、急速に人気が拡大しています。

デジタル遺産記事入りイラスト若者がビットコインについて講義を受けている画像

デジタル資産は相続時にブラックボックス化しやすい

仮想通貨やNFTに関して簡単に説明をしましたが、実際に取引経験がないと実感を掴みにくいものです。都市銀行や地方銀行の預貯金なら通帳を記帳すれば現在どのぐらいの残高があるかわかります。不動産は固定資産評価証明書を取得するなどの方法で不動産の価値がわかります。

しかし仮想通貨やNFTは何を、どう見れば現在の価値が分かるのか、どう使うものなのかまだまだわかりにくいものです。

相続をする相続人が高齢者の場合には、そもそもデジタル資産についてご存じではなく放置されてしまうことも考えられます。故人が仮想通貨などのデジタル資産に関心を持ち、実際に取引していたことを知らないご親族も多く、故人の財産の「ブラックボックス化」が起きています。

デジタル資産は相続できるのか

亡くなられた方(被相続人)の財産を相続人が相続を行う場合には、不動産や預貯金と並んで仮想通貨やNFTも相続を行うことになります。

冒頭に触れたようなネット証券やPAY系アプリにプールされている資産も同様です。デジタル資産全般も相続人はしっかりと把握したうえで遺産分割協議や相続税の申告・納付などの手続きを進めていく必要があります。

※相続手続きのご相談は⇒コチラ

デジタル資産がない場合にはこれまで個人が所有していた不動産や預貯金、保険などを調べれば相続の範囲が容易にわかりましたが、デジタル資産が一般の方にも広く浸透している今、昔よりも相続人の財産調査が難航しやすいのです。

財産調査とはどのようなもの?

ご家族が亡くなり相続が発生した場合には、財産状況を把握するために財産調査を行います。

財産調査はご家族間で財産状況が把握できていれば決して難しいものではなく通帳などを準備し相続の手続きに入れば問題ありません。

※財産調査を詳しく説明している記事は⇒コチラ

相続は貴金属や自動車なども対象となり、働いていた方が亡くなった場合には退職金など会社から支給されるお金も含みます。

つまり、「経済的な価値があるものは全て」が相続対象です。しかし、遠方に住んでいたご家族のご逝去でロックのかかっているパソコン、スマホ内にあるデジタル資産の情報を知ることは容易ではありません。取引履歴が紙で残っていればデジタル資産があることに気が付けますが、証券取引や保険でさえペーパーレスに移行している時代のため、デジタル資産を残されたご家族で調べることは大変な苦労です。個人が遺した財産状況が分からないまま放置することは相続税の申告を誤るだけではなく、高額の借金も相続してしまう可能性があります。

不測の事態を避けるためにも残された方は徹底して財産状況を調査せざるを得ないのです。そこで、大切なことは生前の段階からデジタル資産も含めて残される方のために財産を整理していくことです。また、万が一の際にも慌てないように正しい相続知識を身に付けていくことが大切です。

※国税庁HP参考記事「 相続税がかかる財産」は⇒コチラ

ご自身や家族のためにもデジタル資産を生前から整理しよう!

残される方、残る方の双方が慌てず円満な相続を迎えるためにはどのような準備を進めると良いでしょうか。早速デジタル資産の整理を中心に財産整理について紹介していきます。

相続の対象の有無についてわかりやすく記録化する

仮想通貨は一説には数千種類を超える存在があるとされ、NFTに関しても日々新しいデジタルアートが登場しています。経済的な価値があるものは全て相続の対象になりますが、NFTなど新興のデジタル資産の中には相続手続きが現段階で不明瞭なものがあります。

取引を開始する、あるいは開始すぐに、万が一の自体に備えて取引するデジタル資産が相続の対象となるのか調べ、誰が見てもわかるような形で記録をすることがおすすめです。

しかし、財産は非常にデリケートな個人情報のため、エンディングノートや財産状況一覧表のような形式で記入し厳重に保管しておくことが望ましいでしょう。

※エンディングノートの詳しい書き方を解説する記事は⇒コチラ

信頼できる家族に保管を依頼することもおすすめです。

デジタル資産に関してはもちろんのこと、預貯金や財形、保険などの資産もあわせて書き記しておけば、相続人は大変スムーズに手続きを進めることができます。

デジタル資産以外のデジタル遺品も記録をすることはおすすめ

近年はデジタル資産以外にも、「デジタル遺品」と呼ばれるものも問題化しています。

デジタル機器周辺に紐づけされたSNSや交友関係の情報、写真などのデータが厳重なパスワード管理により削除も取り出すこともできないという問題です。

有料サイトの会員情報もわからないため、口座引き落としで会員情報が発覚するケースもあります。SNSなどのパスワードに関しては亡くなったことを理由に削除してもらいにくく、いつまでも残ってしまうケースもあります。

また、経営者や個人事業主の方などはパソコンやスマホに会社関連の資産情報を保管してしまうことも多く、ご逝去後に誰もロック解除ができないため経営にも影響してしまうことがあります。

デジタル機器に紐づけされたデータに関して、すでに不要なものがあれば生前にしっかりと削除や解約を行い、必要なものに関してはこちらもエンディングノートなどにパスワードやアカウント削除の依頼を残しておくことがおすすめです。

❏まとめ

この記事ではデジタル資産の相続を中心に、起こりうる問題点や生前の整理方法について紹介しました。

便利なスマホに色んな情報を集約している分、万が一の際には「誰も何もわからない」という事態を招きかねません。生前からしっかりとデジタル資産や遺品となり得るものを整理しておくことで、残される家族がトラブルに巻き込まれる可能性を下げることができます。

また、生前からご自身の手でエンディングノートを作成し、デジタル関係を整理しておくことでデジタル機器の盗難や紛失時などにも慌てず対処ができます。ご家族だけでなく、自分のためにもデジタル資産や遺品の整理を始めませんか。

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この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。