この相続人には相続させたくない!

民法の規定により、被相続人(亡くなった人)の財産は相続人に相続されます。

それでは何らかの事情により、「この相続人には自分の財産を相続させたくない!」と思った場合にはどうすればよいのでしょうか。
法律では、このような場合も想定して、推定相続人から相続資格を奪う方法が用意されています。

推定相続人の廃除の方法

推定相続人から相続資格を奪う方法として「推定相続人の廃除」という制度があります。

この廃除をするためには、①その相続人に「廃除事由」があり、かつ、②「法律で定められた手続」をとる必要があります。
①   廃除事由
廃除事由の例としては次のようなものが挙げられます。
・被相続人に対し虐待をした場合
・被相続人に対し重大な侮辱を加えた場合
・その他の著しい非行があった場合
これらの廃除事由は犯罪行為またはそれに準じるほどの悪質な行為とされています。
②   法律で定められた手続き
法律で定められた手続きには次の方法があります。
・被相続人が生前に行う「生前廃除」
被相続人が,その生存中に推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求する場合の廃除の方法をいいます。
・遺言によって行う「遺言廃除」
遺言に推定相続人の廃除を定めておき、遺言執行者に推定相続人の廃除を改定裁判所に請求してもらう方法をいいます。
 

これらの手続きによる「廃除」は最低保証である「遺留分」すらも推定相続人から奪う強力なものなので、家庭裁判所における取り扱いは厳格で慎重なものになります。

また、家庭裁判所から相続人廃除の審判が下された場合には、市区町村へ推定相続人が廃除された旨を届け出てください。
戸籍を管理しているのは市区町村ですから、この届出がないと戸籍に廃除された記載がされません。
この記載があると、その後の相続の手続きがスムーズになりますので、忘れないようにしてください。

相続欠格

ちなみに、上記のように、被相続人が家庭裁判所に請求しなくても、被相続人や他の相続人を殺そうとして刑罰を受けたり、自分に都合のいいように遺言を偽造したり隠したりということをすれば、相続の資格を失います。

これを「相続欠格」といい、上記のような手続きは不要ですが欠格の事実は戸籍には記載されません。

この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。