公開日2021年8月4日
公正証書遺言とは、遺言者が原則、公証役場に出向いて公証人に依頼をして作成する遺言で、最も安全で確実な遺言作成方法です。
公証人とは、弁護士・検察官・裁判官・法務局長経験者などから法務大臣が任命する法律のプロ。「公正証書遺言」を作成する人は、約11万3,000件(令和元年)と年々増加傾向にあります。
他の方法と比べて時間と費用がかかる点を除くと、メリットばかりですので、「とりあえず遺言を作ってみたい」という方から「しっかりとした遺言を作りたい」という方まで、ぜひ利用していただきたい方法です。
今回は、公正証書遺言の作成方法やメリット・デメリットについてご説明していきます。
公正証書遺言の作成手順
1.遺言書作成の事前準備
・財産の種類・金額などを書き出す
どの方法で遺言を作成する場合でも同じことですが、まずは自分が何の財産を、どこに、どのくらい持っているのかを調査しましょう。例えば、預貯金の口座や不動産の場所などです。そして、それらの財産の価額を確認できる書類を用意します。預貯金であれば、通帳や残高証明書、不動産であれば登記簿謄本や固定資産税評価証明書などがありますね。
・誰にどのように遺産分割するかを考える
必要書類を集めたら、その書類の情報をもとに遺言の内容を決めていきましょう。まだ案の段階ですので、箇条書きやメモのようなもので構いません。ただし、自分の考える遺産分割を公証人に伝える際に必要になりますので、漏れのないようにしっかり書きましょう。
・遺言作成に必要な2人の証人を決める
証人は信頼できる親せきや友人などに依頼しますが、相続に詳しい専門家に依頼するのが安心です。また、自分で用意できない場合は公証役場から紹介してもらうこともできます。
2.公証役場で公証人と打ち合わせ
・遺言内容の案を考えたら、実際に公証人と打ち合わせをし、最終的な内容や作成日を決めていきます。公証人との打ち合わせには、最寄りの公証役場へ連絡をして予約を取る必要があります。
3.証人と公証役場へ行き、公正証書遺言を完成させる
公正証書遺言を作成する当日になったら、あらかじめ用意していた証人2人と共に公証役場へ向かいます。当日は、遺言者が遺言の内容を話し、公証人がそれを筆記する形で作成が進められます。その後、遺言者と証人がそれぞれ署名押印をすることになりますので、印鑑(実印)を忘れずに持っていきましょう。作成した遺言の原本は公証役場で保管されます。
公正証書遺言のメリット・デメリット
ここまで、公正証書遺言の作成手順をご説明してきましたが、公正証書で遺言を作成することにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
・公正証書遺言のメリット
公正証書遺言は、作成に法律のプロである公証人が携わるため、自筆証書遺言や秘密証書遺言と違って、ほぼ確実に有効な遺言を残すことができます。
また、作成した公正証書遺言の原本は公証役場に保管され、全国どこの公証役場でも遺言の有無を調べることができます。
ですから、紛失や改ざんのリスクがなく、発見されないまま相続手続きが進んでしまうといった恐れも低いのです。
さらに、発見した遺言を「検認」してもらう必要がないこともメリットと言えるでしょう。
検認とは、その遺言の存在と内容を相続人に知らせるとともに、遺言の内容を明確にする手続きのことです。
自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所で検認手続きを行わなければならないのですが、公正証書遺言の場合は検認を行う必要がなく、スムーズに遺産分割を実行することができます。
・公正証書遺言のデメリット
一方で、公正証書遺言は作成に証人2人と公証人を用意する必要があります。
作成に他の人を巻き込むことで、その分手数料や報酬などが発生し、多くの費用を支払うことになります。 また、日程の調整や内容のすり合わせにより、時間もかかってしまうのもデメリットの1つでしょう。
「時間や費用の面よりも、安全で確実な遺言を残したい」という方は、公正証書遺言の作成をお勧めします。
遺言の内容や作成方法に不安を感じる方は非常に多いです。自分の意思を確実に次世代へ伝えるためにも、ソレイユ相続相談室の「遺言書作成サポート」と「遺言執行者業務」を利用し、万全な準備をしましょう。