遺言には、主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの種類があり、それぞれ特徴や作成方法が異なります。このページでは、遺言の種類ごとに特徴をご紹介するとともに、死因贈与との違いについても解説しています。
遺言の種類は3つ
普通方式
① 自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者が本文を手書きで作成する遺言です。遺言者が1人で作成で
き、費用もかかりません。また、意思能力があれば何度でも書き直しができるので、最
も気軽に作成することができます。
しかし、自筆証書遺言には様々な要件が定められており、要件を満たしていないと遺言
が無効になってしまう恐れがあるため、注意が必要です。
自筆証書遺言を作成する際は専門家へ相談し、要件を備えた遺言を作成しましょう。
●自筆証書遺言保管制度について
遺言者が作成した自筆証書遺言を法務局で保管できる制度です。
これまで自筆証書遺言は遺言者の判断で保管しなければならなかったため、相続人に発見されなかったり、一部の相続人に改ざんされる恐れがありました。
しかし、「自筆証書遺言の法務局保管制度」を利用することで、自筆証書遺言のメリットは損なわずに、遺言者が望む遺産分割を実現できる可能性が高まりました。
2020年7月10日から始まった制度ですが、利用される方は着々と増えているようです。
自筆証書遺言保管制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
② 公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証人が作成する、法的に有効な内容と証明された遺言です。公正証書遺言は、基本的に公証役場で公証人の面前で作成します。
作成に関与する公証人は、法務大臣より任命された法律の専門家ですので、要件不備により無効となることがほとんどありません。最も確実な遺言方法として、多くの方に利用されています。
また、作成した遺言の原本は公証役場に保管され、全国の公証役場で亡くなった方の公正証書遺言があるかを調べることができます。
③ 秘密証書遺言とは
秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも知られることなく作成することができる遺言で
す。
自分で作成した後に公証役場に持っていくことで、遺言の内容を秘密にしつつ、遺言の
存在のみを証明してもらうことができます。
ただし、自筆証書遺言と同様、作成に専門家が関与しないため、要件不備により無効と
なる恐れがある点は注意する必要があります。
特別方式
自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言のほかにも、「特別方式」で作成する遺言があります。
これは、命の危機が迫っている場合など、普通の方法で遺言を作成できない場合に利用できる遺言方法です。
特別方式の中でも「危急時遺言」と「隔絶地遺言」の2種類に分けられ、それぞれ遺言者の状況によって利用するべき方法が異なります。万が一の時に備え、特別方式の遺言についても知っておくと良いでしょう。
遺言の種類について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
遺言と死因贈与の違い
遺言は遺言者が亡くなってからその効力が発生しますが、似ているものに「死因贈与」があります。
遺言と死因贈与にはそれぞれどのような特徴があるのでしょうか?
① 遺言
遺言は、専門的にいうと「1個の意思表示によって成立する法律行為(単独行為)」です。
遺言者が1人で行うことができる法律行為ですので、財産を承継させたい相手の承諾は必要ありません。
② 死因贈与
死因贈与は、売買契約と同じ「契約」という法律行為の一つです。遺言と違い、2つ以上の意思表示が合致することで成立する法律行為(双方行為)です。
例えば、財産を持っている人(贈与者)が「私が死んだら100万円をあげるよ。」と相手に意思表示をして、相手(受贈者)がそれを承諾すると死因贈与契約が成立したことになります。
相手がいなければ成立しない法律行為ですので、遺言のように一方的な撤回はできず、撤回する場合には当事者の合意が必要となります。