公開日2021年8月5日


「遺言を書いたけど、気が変わった」「若いときに遺言を書いたけど、財産構成が変わった」などの理由から、前に書いた遺言を書き直したいと思うこともあるかもしれません。

 

遺言の書き直しは民法で認められており、これを「遺言の撤回」といいます。

 

しかし、遺言の撤回は正しい方法で行わなければ無効になってしまう可能性があります。

 

今回は、法的に正しい方法で撤回を行うために、撤回の方法についてご説明していきます。


 

遺言を撤回する方法

 

遺言を撤回するときは、遺言で行うことになります。

 

そのため、「遺言を撤回する」と家族に話したり、メモを残したりするだけでは、撤回したと認められませんので注意しましょう。

 

また、公正証書遺言で作成した場合は公正証書遺言でしか撤回することができないと思われがちですが、実はそうではありません。最初に公正証書遺言を作成した場合であっても、自筆証書遺言や秘密証書遺言で撤回をすることができます。

 

とにかく、撤回は遺言で行うということが重要なのです。

 

しかし、撤回にはいくつかの方法があります。ここでは、撤回の方法を1つずつご紹介していきます。

 

①遺言の全部を撤回したい場合

 

前に作成した遺言を全て撤回したい場合は、新しく作成する遺言の内容を前の遺言内容と矛盾するように書きます。

 

例えば、前の遺言では「A土地を長男に相続させる」という内容だったが、後の遺言で「A土地を次男に相続させる」と書くと、前の遺言と後の遺言に矛盾が生じることになるため、後の遺言の方が優先されます。

 

遺言の全てを撤回したい場合は、すべての項目で前の遺言と矛盾する内容を書けば良いのです。

 

また、後の遺言で「前の遺言内容を全て撤回する」と書いておくことで、確実に全ての内容を撤回することができます。

 

②遺言の一部を撤回したい場合

 

相続人が多い場合や相続財産が複雑な場合は、もう一度遺言を全て書き直すとなると、非常に大変な作業になってしまいます。そのような人のために、撤回したい部分のみの遺言を作成して、他の部分については前の遺言に効力を残すことができます。

 

例えば、「A土地とB建物を長男に相続させる」という内容の遺言を作成したが、気が変わったためA土地のみを相続させることにしたい場合は、後の遺言に「先の遺言のうち、B建物を長男に相続させるとした部分を撤回する」と書くことで、部分的な撤回が可能になります。

 

 

遺言を撤回したとみなされる行為

 

先ほどご説明したように、「先の遺言を撤回する」と記載していなくても、遺言者が一定の行為をした場合には遺言を撤回したとみなされるケースがあります。

 

遺言をって介したとみなされる行為には、以下のものがあります。

 

①遺言の作成後、遺言と矛盾する行為をした場合

 

例えば、遺言に「A土地を長男に相続させる」と書いたが、気が変わって遺言者が亡くなる前にA土地を売却してしまいました。このような場合は、遺言者が亡くなる前にA土地は遺言者のものではなくなってしまっています。このような場合には、「A土地を長男に相続させる」という部分のみ、遺言が撤回されたことになります。

 

また、遺言者がわざと目的物を破棄した場合も同様です。

 

②遺言者が遺言を破棄した場合

 

遺言者がわざと遺言を破棄した場合は、破棄した部分を撤回したとみなされます。

 

例えば、自筆証書遺言は自分で作成した遺言を自分で保管することになります。そのため、自筆証書遺言を撤回したい場合は、その遺言を自分で破棄してしまえば良いのです。

 

ただし、公正証書遺言の場合は、遺言の原本が公証役場に保管されているため、手元に保管している製本や謄本を破棄したとしても、撤回したことにはなりません。公正証書遺言を撤回したいときは、新たに遺言を作成する方法しかありません。

 

 

ソレイユ財産管理では「遺言書作成サポート」と「遺言執行者業務」を行っております。遺言の作成、または遺言の撤回をご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。