自分の相続が発生した時に、相続争いにならないように遺言書を作成した方も多いでしょう。

一度遺言を書いたからと言って、ずっとそのままにしておくことは要注意です。

何故なら、遺言を書いた時の周りの状況がその先ずっと同じとは限らないからです。

過去に遺言を書いた人は内容の見直しをすることも必要です。

もし、遺言を書いたその時は、相続人の1人がそんなに財産を必要としていなかったとしても、数年後に生活に困ってしまうことも考えられます。

また、病気で治療に多額のお金が必要な場合や自分や家族が施設に入るためにお金が必要な場合のように、少しでも財産を多くもらいたい事情も出てくる場合があります。

遺言は何度も書き直すことができます。

前に書いたものと後に書いたもので内容に違いがあると、前に書いた内容を「撤回した」ことになります。

後に書いたものが優先されます。

例えば、前の遺言では「不動産をAに相続させる」と記載していたのに、後の遺言で「不動産をBに相続させる」としていれば、「不動産をAに相続させる」とした部分は撤回されたものとされます。

これは、遺言書の方式には関係ありません。公正証書遺言が自筆証書遺言に優先することもありません。

つまり、それを見越して前に書いた内容の中で変えたい部分を新しい内容を書き足すことで、遺言の変更がなされたことになります。

ただし、その場合は、明確に「(前の遺言の」この内容はこのように変更する」と書き加えるほうが無難と言えますね。

例えば、自筆証書遺言を作ったAさんが遺言の全部を撤回する場合は「Aは、平成○年○月○日付で作成した遺言を撤回する」という内容の遺言を作ります。一部を変更する場合は「Aは、○年○月○日付で作成した遺言の一部を次のように変更する」という内容の遺言を作成します。

また、公正証書遺言の場合はできませんが、変更の内容が軽微な場合は、遺言内容の一部を訂正することができます。

遺言書の訂正方法については、変造や偽造などによる問題を避けるため厳格な規定に従って行う必要があります。

自筆証書遺言の訂正方法(加入、削除、訂正)は、下記をご参照ください。

●自筆証書遺言の訂正方法

①追加(加入)する場合(法律上は「加入」と表現)

②削除する場合

③訂正する場合

部分的に修正したいような場合には、上の①~③の方法で訂正をすることができます。

この規定に従った訂正でない場合は、その効力を生じないと法律で定められています。

「効力が生じない」という意味は、遺言書自体が無効になるというわけではなく、訂正がされなかったこととなるため、訂正前の内容が有効となります。

また、修正箇所が多くなる場合は、遺言書が複雑になってくるため書き直したほうが無難です。

自筆証書遺言訂正 サンプル図

 

この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。