公開日/2022年7月4日

専門家の徹底比較記事 スーツの男性が相談にのっている

遺言書の作成は専門家へ依頼することができます。この場合の専門家とは、弁護士のほか、行政書士、司法書士、税理士を指します。遺言書を専門家へ依頼するとき、誰に頼めばいいの?何か判断材料がないことには、依頼先を選ぶことができません。そこで、本記事では、各専門家の特徴や相違点、料金相場などをお伝えしていきたいと思います。

❏遺言書の種類を知ろう

遺言書の種類について簡単に解説します。

遺言書の種類は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類です。

ですが、秘密証書遺言は、実務では、ほとんど使われていないため、実質的には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類と考えていただいていいと思います。

遺言書として有効なものにするためには、遺言書の形式的要件をすべて満たす必要があります。要件を満たし有効な遺言書であれば、自筆証書遺言であっても公正証書遺言であっても、遺言の効力は同じです。

遺言書の作成を専門家へ依頼する場合は、公正証書遺言での作成が一般的です。

遺言書は、書き方に間違いがあると無効になりますが、公正証書遺言であれば、証人2人の立ち合いのもと、公証人が作成するため不備が起こりにくいためです。

専門家に依頼したときの「公正証書遺言」作成の流れ

1.専門家へ相談
2.財産、相続人の確認
3.遺言の原案を作る
4.公証役場に連絡
5.必要書類の準備
6.遺言書の作成日の予約
7.公証役場で遺言書作成

基本的に、どの専門家へ依頼してもこの流れは一緒です。そして、当たり前ですが、完成した遺言書の内容が同じであれば、どの専門家へ依頼しても、遺言の効力は同じです。

ただ、どの専門家に相談するかによって、得られるアドバイスが異なることは考えられますので、遺言書の原案に影響を及ぼすことはあるかもしれません。

例えば、税理士であれば節税効果が高い遺産分割方法であるとか、弁護士であれば、複雑な家族関係に対する遺産分割の留意点などを、専門的見地からアドバイスすることができます。そのことは、遺言者本人に新たな気付きをもたらし、遺言書の内容に影響が及ぶ可能性もあるでしょう。

❏依頼先の選び方と料金相場

同じ内容の遺言書であれば、その効力は同じ、それならば料金の安いところへ頼みたい。

確かに、遺言書の作成だけを専門家へ依頼するのであれば、そういう判断もあるでしょう。

しかし、遺言書の作成だけでなく、相続開始後も引き続き、相続関連手続きを専門家へ依頼する予定があれば、依頼先は慎重に検討したほうが良さそうです。

文字どおり、専門家ですから、専門、得意分野がそれぞれあり、できること、できないことがあるからです。

各専門家の料金相場と専門分野についてみていきましょう。

おおまかな料金の相場

気になる料金相場についてです。

料金の相場といっても、遺言書作成の料金設定に法的な制約はありませんので、各専門家事務所は自由に料金設定をすることができます。

したがって、一概にどの専門家が高いとか、低めの料金設定であるとか、言い切ることができませんが、あくまで一般論として言うと、料金設定が高めなのは弁護士、低めの設定としているのは行政書士のようです。

ただし、どこへ依頼した場合でも、依頼案件の内容により料金が上乗せされる可能性があるため、あくまで参考程度と考えるのが良さそうです。

●行政書士に依頼した場合

料金相場:5万円~20万円

行政書士の専門分野は、許認可関係と書類作成です。

したがって、相続による不動産の登記変更や、相続税の納税手続きはできません。

また、弁護士のように法律相談もできませんし、代理権もないため紛争解決もできません。

ですので、相続発生後に、これらの手続きが予想されるのであれば、最初からそれらに対応可能な専門家へ依頼したほうが良いでしょう。

一方で、行政書士は、他の専門家と比較すると、リーズナブルな料金設定となっているようですので、相談しやすい環境ではあります。

●司法書士に依頼した場合

料金相場:7万円~30万円

司法書士は民法の知識を有する登記の専門家です。

例えば、相続財産に不動産がある場合は、相続登記が必要になります。

遺言書作成を司法書士に依頼すれば、相続発生後のそれらの手続きを一つの事務所で完結できます。

●税理士に依頼した場合

料金相場:10万円~50万円

税理士は、税金のスペシャリストです。

税理士に遺言書の作成を依頼すれば、その後の相続税の申告、事業承継まで一貫した対応が可能です。

また、遺産分割割合において、節税対策を考慮した適切なアドバイスも可能でしょう。

相続税などの税金の心配が大きい人に向いています。

●弁護士に依頼した場合

料金相場:20万円~300万円

弁護士の専門分野は、裁判による紛争解決です。

相続開始後に発生する、諸手続きや諸問題について包括的な対応が可能であるため、費用は他の専門家より高めの設定となっています。

例えば、遺言の内容によっては家族間で紛争になることが予想されるケースでは、最初から弁護士へ依頼したほうが二度手間にならずに済むことが考えられます。

だれに依頼するか迷うときには、料金設定と合わせて、遺言書に記載したい内容や、相続人同士の関係などを専門家選びの判断材料とすることもできそうです。

ただし、注意したいのは、どの専門家も必ずしも遺言作成に精通しているとは限らないことです。

遺言書作成は、多くの業務の中のひとつにすぎないため、実際、遺言書作成に携わったことがない専門家もいます。

依頼の際には、事務所のホームページなどを活用し、遺言書作成の実績のある専門家(事務所)に依頼したほうがスムーズでしょう。

公証人手数料も忘れずに

なお、公正証書遺言を作成する場合には、専門家へ支払う料金のほかに、次の費用がかかりますので留意してください。

遺産額に応じて公証人手数料が次のように定められています。

遺言書誰に依頼するの記事入り公証人手数料料金表

(出典:日本公証人連合会)1 遺言 | 日本公証人連合会 (koshonin.gr.jp)

❏遺言書の確実な執行のために

遺言書は、形式的要件さえ満たしていれば有効なものとして成立しますが、自分で書く「自筆証書遺言」では、遺言の内容が曖昧であるために、遺言者本人の意思とはかけ離れた相続になってしまうことがあります。

例えば、遺言者は、自宅の土地、建物を長男に相続させたいと考え、下記のような遺言を書いたとします。

(遺言書 文例)

私が所有している神奈川県横浜市青葉区二丁目〇番〇の土地は、長男山田一郎に相続させる。

この書き方ですと、長男が相続できるのは自宅の土地のみとなってしまい、建物は遺産分割協議の対象となってしまうのです。

土地と建物は別の不動産ですので、建物も一緒に相続させたい場合は、遺言書にそれぞれ記載する必要があるのです。

このように、素人では内容に不備があることに気づかないことがありますが、専門家へ依頼することで、遺言書の形式的な不備だけでなく、中身についても漏れがないようなアドバイスを得ることができます。

❏まとめ

遺言書は自分で作成することも可能ですが、遺言書としての要件を全て満たしていないと無効とされてしまいます。また、たとえ有効な遺言書であっても、中身が曖昧な記述であると相続が遺言者の意思どおりにならないケースもあり得ます。

専門家へ遺言書の作成を依頼すれば、費用はかかりますが、遺言書の形式的な要件も満たせますし、内容の不備の修正もできます。

どの専門家も、遺言書作成のための基本的な手順は同じですので、遺言書の作成のみの依頼であれば、どこへ依頼しても、かかる費用に大差はないかもしれません。

しかし、相続により不動産の登記変更が必要な場合、相続税の申告、納税を専門家に依頼したい場合、この他、個別事情により、相続発生後も引き続き専門家の手を借りたい場合は、最初から個別事情に対応した専門家へ作成を依頼しておいたほうがスムーズに相続が進みます。

初回相談無料で相談にのってくれるケースもあるようですので、料金や依頼できる内容を比較して、自分にあった依頼先を見つけてください。

遺言の作成は、事例豊富な「ソレイユ相続相談室」にご相談ください。

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この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。