遺言は自分の死後に望む遺産分割を実現できるだけでなく、残された家族が円満で円滑に相続を進めていくために重要な役割を持っています。遺言を書く目的は人それぞれですので、目的別にどのようなメリットがあるのかを確認しておきましょう。

1、 遺言を書く目的

①「誰に、何を、どのくらい相続させるか」を決めるため

遺言では、自分が亡くなった後に自分の財産について「誰に、何を、どのくらい相続させるか」を決めることができます。
相続人同士で話し合って相続する財産を決めるよりも、遺言者の意見を尊重してもらうことができるため、遺言者の望む遺産分割を実現することができるのです。

② 高齢の配偶者や障害のある家族の生活を守るため

自分が亡くなった後、高齢の妻(夫)や障害のある家族の生活が心配になります。
遺言がないと、遺産分割の話し合いが長引き、配偶者や障害のある家族が遺産を確保するまでに時間がかかってしまうことがあります。
さらに、「高齢の妻が介護施設に入居する資金を残したい…」「障害を持った子のために自宅を残したい…」などと考えていても、相続人で話し合った結果、亡くなった方の望み通りにはならない可能性もあるのです。
生前に遺言を書いておくことで、残された家族が安心してスムーズに相続手続きを行うことができ、その後も不便なく生活を送ることができます。

③ 法定相続人以外にも遺贈や寄付をするため

遺言では法定相続人(法律で決められた相続人)以外の人に財産をあげたり、寄付したりすることができます。
「生前お世話になった人に財産を残したい」「自分が望む形で財産を使ってほしい」などの理由から遺贈や寄付を希望する方は多くいらっしゃいます。
生前お世話になった人や団体に贈与・寄付をしたい場合は、専門家に相談のもと遺言を作成しましょう。

【関連情報】遺言で寄付をする場合の注意点は

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④ 遺言の内容を確実に実行する遺言執行者を決めるため

遺言では自分の死後、遺言が正確に実行されるために「遺言執行者」を決めることができます。遺言執行者になった人は、遺言に書かれた内容のとおりに遺産分割の手続きなどを行います。
遺言によって子を認知する場合や、相続人の廃除・廃除の取り消しをする場合には遺言執行者が必要になりますので、あらかじめ遺言で指定しておくとスムーズに相続手続きを進めることができます。

⑤ 家族への感謝や思いを「付言事項」で残すため

遺産分割の方法や寄付などについてはもちろん、遺言には残される家族への最後のメッセージとして「付言事項」を記載することができます。
例えば、「日頃の感謝」や「なぜこのような遺産分割にしたのか」を記載しておくことで、相続トラブルの防止につながります。
付言事項に法的な効力はありませんが、書き記しておくことで残された家族が笑顔で相続を終えることができる可能性が高まります。

2、 なぜ遺言を書いておいた方がよいの︖

このようなお悩みはありませんか?

・主な財産が不動産なので、遺産分割でトラブルが起こりそうだ
・仲の悪い親戚がいる

など…

遺言のない相続では、亡くなった人の財産について「誰が、何を、どのくらい相続するか」を相続人同士で話し合って決めなければなりません。

ですから、不動産などの分けにくい財産がある場合や、相続人同士の仲が悪い場合には話し合いがなかなか進まず、最終的には争いに発展してしまうケースが非常に多いのです。


しっかりとした遺言を残しておくことで、相続人同士で話し合うことなくスムーズに遺産分割を進めることができるため、相続争いを未然に防ぐことができます。


また、財産を持っていた遺言者の意思を最大限に尊重した遺産分割ができるわけですから、遺言者だけでなく相続人も納得した遺産分割ができるのです。

3、こんな人は、遺言を必ず残しておきたい

「相続はお金持ちの家にしか関係ない」と誤解をされる方も多いのですが、実は相続トラブルはどのような家庭でも起こる可能性があります。

たった1通の遺言があることにより、残された家族の相続トラブルを防いだ事例も多くありますので、遺言を残すことは遺言者だけでなく、残された家族の安心にもつながります。

下記の項目に1つでも当てはまる方は、遺言の作成をご検討ください。

● 独身で、親か兄弟姉妹がいる人
● 夫婦間に子供がいない人
● 相続人いない人
● 再婚した人や認知した子どもがいる人
● 介護や家業に従事してくれた相続人がいる人
● 援助が必要な相続人がいる人
● 財産を与えたくない相続人がいる人
● 海外在住や行方不明の相続人がいる人
● 仲の悪い相続人がいる人
● 特定の財産を与えたい・与えたくない相続人がいる人
● 不動産など分けにくい財産がある人
● 相続権のない孫や第三者に遺産を与えたい人
● 内縁の妻(夫)がいる人
● 事業を行なっている人
● 公共団体等に財産を寄付したい人

など

ケースによっては「遺留分」を考慮が必要な遺言や「遺言執行者」の指定が必要な遺言もあります。

円満相続を実現する遺言を残すためには、相続に詳しい専門家にご相談ください。