公開日2021年8月23日
認知症などによって判断能力が低下すると、持っている不動産の売却や財産の管理などができなくなってしまいます。
このような状態では、成年後見制度を利用するか相続が発生するまでは、その財産に手をつけることができず、あらゆるトラブルのもとになってしまうのです。
また、子どもが複数人いる家庭では、公平な遺産分割を巡って争いになることを防ぐため、生前のうちに争族対策をしておくことが大切になります。認知症等は生前の相続対策ができなくなる要因となります。
ここで、最近注目されているのが「家族信託」です。
家族信託とは、簡単にいうと、生前のうちに自分の財産を信頼できる家族に託しておく制度のことです。
この記事では、家族信託を活用して親の財産を生前に兄弟で分ける場合の方法について、詳しくご説明していきます。
事例:親の不動産を家族信託で生前に分ける
今年75歳になる父には、妻と2人の子ども(長男と次男)がいます。
父は、2棟のアパートA、Bを持っていますが、そろそろ年齢的に管理が難しくなってきました。また、これから介護も必要になることを考えると、夫婦ともに老後の資金の管理が心配です。
認知症などにより完全に判断能力がなくなると、持っている財産の管理や遺言の作成ができなくなってしまうため、そうなる前に財産を子どもたちに託し、老後の資金を安心して管理できる方法はないかと探しています。
【解決策】
判断能力が低下すると、不動産の管理などが難しくなってきます。
しかし、持ち主の判断能力が低下したとしても、不動産の管理はなくなるわけではありません。
このような場合には、早いうちに「家族信託」を用いて、財産の管理を信頼できる家族に任せましょう。
今回の例では、父がアパート2棟をそれぞれ長男と次男に1棟ずつ信託して、管理を任せることとします。
例えば、長男にA棟を、次男にB棟をいずれ相続させたいし管理してもらいたい場合は、
①長男を受託者としたA棟の信託契約と、
②次男を受託者としたB棟の信託契約の
2つを締結することになります。
受託者とは、委託者(父)から財産を預かって管理する人のことをいいます。
信託契約によって預けた財産は、預かった人の名義に変更されます。
ここで問題となるのが「アパートの収益は誰のものになるか」です。
信託財産から発生した収益を受け取る人のことを受益者といい、受益者は信託契約で自由に決めることができます。
この場合、信託契約により、アパートの名義は受託者(長男と次男)に変わってしまい、家賃収入も受託者の口座に振り込まれてしまいますが、信託契約上、受託者は信託財産を預かっているだけなので、アパートの収益は受益者のものになります。
普通、信託契約を結ぶときには、委託者(父)=受益者(父)となるように契約を結びます。
※これは、贈与税の課税を避ける節税対策として効果があります。
●詳しく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
また、信託契約では、初めに受益者となる人を第1受益者、第1受益者が亡くなる等の理由で受益者ではなくなった場合、次に受益者となる人のことを第2受益者といいます。
今回の例では、夫婦ともに老後の資金が心配ということですので、どちらの信託契約も第1受益者を父に設定すると良いでしょう。
第1受益者である父が亡くなった場合、次は母が第2受益者になる契約を設定しておきます。
こうしておけば、父が亡くなった後のアパート収益は母の手に渡ることになります。
このように、第1受益者、第2受益者、第3受益者等の指定をしておくことで、遺言にできない世代を超えた財産承継をすることができるのです。
家族信託での財産承継は元気なうちに!
家族信託は、相続した後の財産の分割に基づいて、生前の財産管理を決めることもできます。
今回の例で言うと、アパートA、Bはそれぞれの財産承継が決まっているわけですから、家族信託を遺言のように使って生前にそれぞれの財産の承継先を決めておくことができるのです。
それと同時に、認知症対策と老親の生活費の管理をどうするかについても、生前にそれぞれの兄弟の負担を決めて信託契約を定めておくこともできます。
また、アパート経営についても親が亡くなってからそれに携わるより、親が元気なうちから引き継いでおいた方が色々なメリットがあります。
例えば、家族信託を利用することによって、自分が生きているうちに子どもたちにアパート運用や事業などを経験させることができます。
相続によって急に承継することが難しい財産は、家族信託によって徐々に世代交代をすることも有効な手段です。
※アパートの大規模修繕費用について、詳しく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
家族信託の活用方法は人それぞれです。
自分の財産についての不安がある方は、家族信託によって解決できる可能性がありますので、
ぜひ相続専門の「税理士」への相談をご検討ください。
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