先代から引き継いだ小さな和菓子屋をAさんは妻と長男と一緒に営んできました。高齢になってきたこともあり、長男に店を継がせたものの、5年前に長男が大病を患い店を畳みました。長男は普通に暮らせるようになりましたが、店を畳んでからはずっと家にいます。
最近、Aさんは高齢になったこともあり、自分の相続やこれからの家族の暮らしについて考えるようになりました。
長男に任せた店は手を加えて自宅として使っていますが、この「家」は、受け継がれていってほしいという想いが強くなり、それも一つの心配ごととなっています。
ソレイユ相続相談室の無料相談会で相談されたAさんは、「家族信託の活用」でお悩みを解決することができました。
それでは、相談から解決までのステップをみていきましょう。
1
①長男は独身のため亡くなった場合に「家」を継いでくれる人がいるのか。
②「姓」を残していきたいが何か方法はないものか。
2
③妻は、店を閉めてから足腰が弱ってきている。自分に何かあっても生活が困らないようにしたい。
④夫婦で和菓子屋を営んでいた時は商売が繁盛していたため、妻にも預貯金がある。妻が認知症になった場合に預金の引き出しや定期の解約などができなくなってしまう。
3
⑤長男は病気の治療費が嵩み、貯金もなく収入はわずかな年金しかない。夫婦がいなくなった場合に固定資産税などの負担もあるため生活していけるのか。
4
⑥土地の評価額が高いため相続税がかかる見込み。何か良い相続税対策はないか。
1①②家や姓の跡継ぎ
●もし、長男が亡くなった場合次男夫婦が家を継いでくれれば、次男の代までは家と姓を残るが、次男夫婦にも子どもがいないため次の代に引き継げない。
●もし、長女の子ども(孫)のどちらかが家を継いでくれれば、家を引き継いでいくことはできるが、姓は残せない。
●家を受け継ぐことについて、次男や長女の考えはどうなのか?
2③④・・・・・・老後の生活、財産の管理
●もし、Aさんが認知症や亡くなってしまい、妻が認知症や病気にかかってしまった場合、長男がAさんの財産から施設や病院の支払い等をしてくれれば、夫婦の生活は守れる。
●しかし、上記の場合、Aさんの預貯金は2000万円しかないので、夫婦の生活費の他、施設の費用や治療費などを賄えなくなる可能性がある。その場合、妻の預貯金5,000万円から生活費を工面する必要がある。
3⑤・・・・・・病気をかかえた独身の長男の今後の生活
●Aさん夫婦が亡くなった後、一人暮らしとなる長男の具合が悪くなった場合、次男か長女が面倒を見てくれれば安心できる。
●しかし、兄弟は同じような年なので、長男より先に次男か長女が病気になったり亡くなる可能性もある。長女の子(孫)のうち一方が面倒みてくれれば長男の暮らしは守られる。
4⑥・・・・・・相続税対策
●Aさんの自宅は長男が居住しているので長男が相続して居住した場合は小規模宅地の特例が使えるため、相続税額が大幅に軽減される。
●次男が住む家は次男に相続させるが、Aさんの居住していた建物ではないため、その土地については小規模宅地の特例は使えない。➡次男が建物を相続する場合は納税資金を確保する必要がある。
●遺言がない場合は遺産分割協議で長女と揉める可能性がある。遺言があったとしても、長女に財産を遺さない場合は、遺留分減殺請求をされる可能性がある。
①~⑥の問題点について検討した結果、遺言と家族信託を組み合わせた対策をとることで②以外のお悩みを解決できるとご提案しました。
●Aさんの自宅(旧店舗部分)土地建物と預金
●Bさんの預金の一部
☞ご提案のポイント
Aさんご夫婦はそれぞれ、固有の財産をお持ちです。名義人の異なる信託財産ですので、委託者をAさんとBさんとして二つの信託契約をします。
この信託契約では、ご夫妻が認知症対策として互いの生活を守るために長男に財産管理を預けて(委託)しています。
のちに、その財産は、長男のために、Aさんのお孫さん(32歳)が財産管理を引き継いでくれる設計にします。そのように設計することで、ご夫妻が亡くなったあとも長男の生活は安心です。
●Aさんの次男居住の土地建物
●Bさんの預金の一部
☞ご提案のポイント
次男が住む土地建物は、Aさんが遺言で次男に相続します。
Bさんの財産についても、遺留分を考慮する必要があるので、信託財産に入れない財産について遺言を残すことにします。
Aさんは相続専門の税理士とコーディネーターのサポートを受けながら、家族で話し合いAさんの想いと子や孫の考えをすり合わせ、以下のとおり方針を決めました。
●Aさん夫婦の財産は【家族信託で分ける財産】と【遺言で承継する財産】とに区分すること。
●Bさんの信託財産に入れない財産について遺言を残すことになりました。
●次男が住んでいる土地建物の行く末は次男夫婦に任せることにしました。次男夫婦はいずれ遺言か信託で長女の孫に承継させると話しています。
●お孫さんは、以前留学していた時にAさん夫婦と長男にお世話になったので、ずっと恩返しをしたいと考えていたようです。長女夫婦とも話し合って、長男の養子に入ることも検討することになりました。
後日、Aさんは信託契約の締結と遺言を公証役場で行いました。Aさんの信託契約と遺言の概要は以下のとおりです。
①受託者(財産の管理等をする人)はAさんとBさんが生きている間は長男が行います。
両親の(AさんBさん)が亡くなった時点で長男は受託者を継続できません。長男は受益者となります。受託者は孫に移ります。また両親(AさんBさん)より先に長男が病気や死亡で受託者を続けられなくなった場合も孫(32歳)が受託者になります。
注)受託者と受益者が同一になることは信託法上、好ましくありません。➡信託法第2条第1項
②受益権(信託財産から利益を受ける権利)は、第一受益者が亡くなった時、第二受益者へ移ります。さらに第二受益者が亡くなった場合、受益権は長男に移ります。
③信託終了後の残余財産の帰属先
長男が亡くなったら(受益者全員が亡くなったら)信託が終了し、残った信託財産は32歳の孫に帰属します。
家族信託と遺言を組み合わせることで、祖父母からお孫さんへと財産を継承するAさん家族のためだけの仕組みを設計することができました。
代々受け継がれてきた「姓」を後世に引き継ぐという想いが〝相続″には込められているのではないでしょうか。
私たち、ソレイユ相続相談室は、ご家庭の事情に寄り添い、問題点を一緒に紐解いてまいります。相続専門の税理士とコーディネーターが皆様のご相談をお待ちしております。
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