公開日2021年8月31日


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 (目次)

1、不動産を売却した場合の税金

2、相続した不動産の売却計算の注意点

3、相続した不動産で使える特例

4、まとめ


 

1、不動産を売却した場合の税金

個人が自分で持っている不動産を売却した場合には所得税がかかります。

不動産の売却は所得税の分類では、譲渡所得に該当します。

譲渡所得は所有期間によって次の短期譲渡所得と長期譲渡所得に分かれて計算が行われます。

短期譲渡所得
短期譲渡所得は不動産の所有期間が5年以下の場合の計算です。
収入金額取得費譲渡費用=短期譲渡所得金額
短期譲渡所得金額×39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
=譲渡所得税額
長期譲渡所得
収入金額取得費譲渡費用=長期譲渡所得金額
長期譲渡所得金額×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
=譲渡所得税額

 

譲渡所得の申告は、他の所得とは分離して計算しますが、申告は他の所得と合わせて譲渡があった翌年の2月14日から3月15日の間に確定申告することによって納付します。

ただし、住民税は市町村から納税通知書が送られてくる翌年の5~6月の納税になります。

譲渡所得の計算上控除できる取得費や譲渡費用は次のような項目です。

■取得費■

取得費とは、売却した土地や建物の購入代金や、購入手数料などの不動産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額をいいます。

なお、建物の場合には、取得費から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。

土地や建物の取得費が分からない場合や実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。

■譲渡費用■

譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用をいいます。

仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。

 

2、相続した不動産の売却計算の注意点

相続した不動産を売却した場合も原則とすると譲渡所得の計算は上記で説明した通りになります。

収入金額 - 取得費 - 譲渡費用 = 譲渡所得金額

 

ただし、所有期間と取得費の考え方が相続の場合には特殊になります。

親から相続した不動産の場合は、短期譲渡所得、長期譲渡所得の所有年数の計算が変わってきます。所有期間は親がその不動産を持っていた所有期間を相続した人が引き継ぐことになるのです。

例えば、

三年前に相続した土地を売却したとしても、譲渡所得の所有期間は相続開始後の3年間ではなく、親がこの売却した土地を相続してからの所有期間になるのです。

親が20年前に買った土地であればそこからの年数が所有期間になるのです。

 

また、取得費の計算も同じように、相続した不動産を親が買った時の取得費を相続して引き継ぐことになるのです。

例えば、

三年前に相続した土地を売却したとしても、譲渡所得の取得費は相続した時の価格ではなく、親がこの売却した土地を相続したときに購入した価格になります。

親が20年前に買った土地であれば、その時の価格が取得費になるのです。

建物であれば、

親が購入した時からの減価償却費相当額を控除していくことになります。

 

親が購入した日は、登記簿(全部事項証明書)を見ればわかりますが、取得費は親が遺してくれた書類がなければ確認できません。

遺品整理の際に、昔の売買契約書が見つかったら、捨てたりせずに保管しておいてください。

そこに書いてある金額の20%くらいは税金が安くなる可能性があるので価値ある書類になります。

購入した時の価格を証明する書類が見つからない場合は、譲渡収入の5%が取得費とみなされます。

3、相続した不動産でも使える特例

①相続税が控除できる

相続が発生して、課税される相続財産が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると原則として相続税の支払いが必要になります。

相続税の支払いがあった場合に、その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していれば、払った相続税の内、その譲渡した不動産の評価額の割合の相続税は取得費として控除できる可能性があります。

②空き家の売却特例が使える

相続又は遺贈により取得した、被相続人の居住用家屋又は被相続人の居住用家屋の敷地等を、平成2841日から令和51231日までの間に売却して、その売却が一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで特別に控除することができます。

③居住用財産の特別控除が使える

親と同居していた子が、親から相続した自宅を売却した場合には、マイホームの売却特例を使える可能性があります。

マイホーム特例が使えると、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで特別に控除することができます。

この特例は、家を取り壊したり、住まなくなってから3年以内に売却しないと使えなくなるので注意が必要です。
 
4、まとめ

相続による不動産の売却は、一般の不動産の売却とは違う考え方があり、また使える特例もあります。

これらは不動産を相続する前から検討していく必要があります。

相続手続きの書類探しから特例適用の証拠書類探しが始まっているのです。

また、

相続する不動産を全員で売却して全員が譲渡所得の申告をすることにするのか?

一人が不動産を取得して他に代償金を支払って不動産所得の申告は一人で済ませるのか

特例の検討と合わせて遺産分割でも検討すべき税金上の課題はたくさんあります

相続財産に不動産がある場合には、

相続税や譲渡所得の税金に強い税理士法人に相談する事が大切です。

この記事の監修者

斉木 政則

斉木 政則(税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 社員税理士 長野事務所所長

長野県出身。個人のお客様の税務申告から法人のお客様の税務申告さらに税務調査立ち合いまで、「税務判断」を行う日々を送り、税務リスクからお客様を守ることが使命と考えています。経験も豊富で、千差万別の皆様のお悩みを解決するために親身に相談に乗っています。長野市内公民館の相続関連の講座や事業者向けの相続税対策セミナーの講師としても活躍中で、分かりやすいお話が好評を得ています。