更新日/2022年6月6日
亡くなられた家族が財産を残していた場合には、財産を民法上で定められたご家族が相続人として財産を引き継ぐことができます。
亡くなられた方を被相続人、財産を引き継ぐ方を相続人と呼び、相続人は相続した財産にかかる「相続税」を納める義務があります。
相続税は必ず発生するものではなく、被相続人の残した財産から借金や葬祭に関する費用を引き、基礎控除額を上回る金額に対して課税が行われます。
では、相続税の納付後に行われる「税務調査」とはどんな調査でしょうか。
目次
❏税務調査の実態を知ろう!調査の内容とは?
財務省発表の統計によると相続税の対象となる方は現在亡くなられた方の8%と言われており、平成25年度の税制改正時よりも増加しています。
では、相続税に関する調査は相続税を納める方全てに行われているのでしょうか。結論から言うと「NO」です。相続税を収めた方全てに税務署が調査を行っているわけではありません。
参考記事はコチラ→財務省 相続について教えてください
税務調査の対象になる方とは
税務調査はある日突然行われるものです。税務署側が「本当に正しい相続税の納付だったのか」を確認したい時に行われています。つまり、申告漏れが疑われている際に調査が行われるのです。相続税調査が行われると高い確率で申告漏れが指摘されてしまいます。
次に国税庁発表の「令和元年事務年度における相続税の調査事項」を引用してみましょう。相続税調査後には実地調査平均1件当たりの追徴税額(641 万円)が発生しています。対前事務年度比 112.8% と増加しており、600万円を超える高額の追徴税を支払っている方々がいるのです。
参考記事はコチラ→国税庁 令和元事務年度における相続税の実地調査の状況
申告漏れの自覚があっても無くても行われるの?
ちょっとした出来心で不適切な相続税申告を行ってしまったことが税務署側に気づかれた場合には、突然の電話にも思い当たるふしがあるかもしれません。
では、申告漏れの自覚が無くても調査は行われるのでしょうか。答えはもちろん「YES」です。相続手続きを行わずに無申告でいた場合や、相続発生より3年以内に贈与があったが必要性を知らずに申告をしなかった場合、存在を知らない名義預金があったなども調査対象になります。
申告漏れの自覚があっても無くても行われるので、まずは相続発生時に最大限の注意を払うことが大切です。
❏ある日突然の調査!税務調査では何が質問されるの?
ある日突然の税務調査、という事態はなるべく避けたいところですが相続税申告にミスがあった場合や意図して財産を隠してしまった場合には税務調査が実施される可能性が高いでしょう。
では、調査が行われると実際にどのような質問がされるのでしょうか?この項では質問内容に焦点を当てていきます。
税務調査でよく聞かれること:被相続人の生前の病気や入院状況
相続税調査では、被相続人が亡くなる直前の様子を質問してきます。病気の内容や認知能力に関して、入院期間の長さなどについて聞かれるのです。ではどうして税務署は亡くなる直前の様子をヒアリングするのでしょうか。長期間の入院を経てご逝去された場合には、その間被相続人の財産を誰が管理していたのか把握するためと考えられます。
税務調査でよく聞かれること:被相続人の基本情報
調査の中では被相続人の職業や生前のご様子、財産形成の方法や転勤経歴の有無などがヒアリングされます。つまり、被相続人の生前における基本情報のようなものです。被相続人の基本情報をしっかりと税務署が把握することで、転勤先での口座の有無や被相続人が生前に相続した財産の有無などを把握していきます。
被相続人の人となりを知ることで申告漏れの有無を把握したいためです。代々受け継がれている会社や田畑などについても被相続人がどのように携わっていたか質問されます。また、趣味や渡航履歴などについても質問が行われます。その理由は以下のとおりです。
・趣味が聞かれる理由…被相続人が希少な骨とう品などの収集の趣味をお持ちだった場合、申告漏れを懸念されている可能性があります。絵画や刀剣はもちろんのこと、資産価値が高まる要素のある趣味は調査対象となりやすいのです。
・渡航履歴の確認…近年は日本の税制度を逃れるために海外に資産を移す方も増加しています。相続人の財産が多く、渡航履歴も多い場合には調査対象となりやすいでしょう。海外送金履歴(海外に送金すると税務署に支払調書が送られます)などを基に詳しく調査が行われています。
税務調査でよく聞かれること:財産の管理状況
税務調査では、任意調査と称して被相続人が住んでいた住まいに税務署職員が来訪します。自宅では生前の財産の保管場所や印鑑の管理、印影や財産の事実上の管理者等についてヒアリングが行われます。骨とう品や絵画などが飾られている場合も詳しく調べられることもあります。
自宅内で被相続人の財産管理がどのような状態で行われていたのか細かく調査を受けると認識しておきましょう。名義預金が疑われることも多いため、預貯金の通帳の管理状況なども良く聞かれる質問です。
税務調査でよく聞かれること:通帳の取引履歴
被相続人の使っていた過去の通帳はお金の動きを知る上で重要な資料です。そのため税務署職員は生前の通帳をチェックすることがあります。高額の引き出し履歴がある場合は、生前贈与ではないかと疑われることもあります。
また、名義預金の可能性があるもの(被相続人の名義ではないもの)についても質問がおこなわれ、通帳の取引履歴について質問を受ける場合はあります。相続人名義の通帳にも関わらず取引履歴を把握していない場合は名義預金だと疑われる可能性があります。
❏答えにくい質問も?こんな相続税調査にはしっかりと備えを
上記では税務調査でよく聞かれる質問に関して解説しましたが、調査を受ける相続人側が答えにくい質問があると感じませんか?
下記2つの質問は残された家族からすると全く把握していないことも多いので注意が必要です。
過去の勤務先や先代の相続について
亡くなった人の財産がどう作られてきたのかを税務署としては明確に把握したいと考えています。そのため、生前の仕事の状況や財形、退職金などの有無、さらには先代に当たる被相続人の親からの相続に関しても質問を受けることがあります。
被相続人が事業を営んでいた場合はその会社の過去の経営に関することも確認されます。被相続人と疎遠な関係になっていたり、年に数回会う程度の遠方に住んでいた相続人の場合はこうした過去の経緯は一切知らないケースもあります。相続を行う際にはできる限り家族みんなで正しい知識を共有し、生前から備える必要があるのです。
生前贈与について
相続税の計算では過去三年以内の贈与を加算して(なかったものとして相続時の財産に加えて)計算します。贈与だから申告しなくていい、と誤った認識で申告してしまうと調査に入られる可能性があります。また、贈与の意識が無かった名義預金に関しても詳しく聞かれる可能性があります。
生前贈与は受ける側も贈与の意志があって受けること、隠匿しないことが大切です。
❏相続税調査はいやなら拒否できる?
税務調査は文中に触れたとおり、ある日突然連絡が来るところから始まります。
正しく申告したはずなのに、と憤る方もいるでしょう。税務調査は「任意調査」とも呼ばれており拒否できるように感じます。
しかし、基本的には拒否できません。罰則があるため事実上強制調査なのです。まずは任意と呼ばれていても調査にならないように備えることが大切なのです。
❏まとめ
相続税調査の調査内容や質問について詳しく解説しました。まずは相続税の申告を適切に乗り越えることが重要であり、さらには生前の段階から来るべき相続に備えて家族が協力しあうことも大切です。
税金に関してはエキスパートである「ソレイユ相続相談室」へいつでもご相談ください。