公開日2021年9月16日


遺産を相続した後、相続税だけではなくて、
ほかにも払わなければいけないお金があるのでしょうか?

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(目次)

1、相続税は他の税金と連動しない

2、相続によって増える相続税以外の税金

 ①生命保険関係

 ②不動産等売却関係

 ③不動産賃貸関係

 ④事業を引き継がれた方

3、まとめ

 

 相続税は他の税金と連動しない

相続税の申告を承っていると、税金の額をお伝えする時や納税の時に
「これで全部ですね?   後でかかってくる税金は無いですね
というようなご質問を受けることがあります。

おそらく多くの方は、前の年の収入が多くなって、その翌年に住民税が多くなってしまった経験や、国民健康保険とか保育料が増えてしまった経験からご心配になっておられるのだと思います。

相続税に関して言うと、相続税の支払いが発生したことによって住民税や国民健康保険等が増えるということはありません。

ちなみに、贈与税も同じで、連動して住民税も国民健康保険等も増えません。

相続税は相続による財産の取得に対して課税される税金で、毎年の所得に対して課税される税金とは根本的に考え方が違うのです。

毎年の所得の増減に連動して金額が変わるのが住民税や国民健康保険等なのです。

ただし、相続によって発生する税金は相続税だけではありません。

言い換えると相続によって増える税金は相続税だけではないので、それらについてご説明しておきます。

 

 相続によって増える相続税以外の税金

①生命保険関係

【相続税になる場合】
契約者=被保険者  死亡保険金受取人  ⇒ 相続税の対象

<例>親が契約して、親が保険料を支払って、親にかけていた保険が、親が亡くなったことによって、その死亡保険金を子が受け取った場合には相続税の対象となります。

※親が支払っていた掛け金が、死亡により入ってきたのは、相続と同じことになるため。

ところが

【所得税になる場合】
契約者 ≠ 被保険者  死亡保険金受取人=契約者 ⇒ 所得税の対象

<例>子が自分で契約して保険料を支払って、親にかけていた保険が、親の死亡により、その死亡保険金を契約者の子が受け取った場合には所得税の対象となります。

※自分で掛け金を支払って、自分で保険金をもらったから自分の所得(一時所得)になります。

所得税になるので翌年の住民税等に影響が出ます。

さらに

【贈与税になる場合】
契約者 ≠ 被保険者(親) 保険金受取人 ≠ 契約者 ⇒ 贈与税の対象

<例>子が自分で契約して、自分で保険料を支払っていて、親にかけていた保険が、親の死亡により、その死亡保険金を契約者とは違う別の子が受け取った場合には贈与税の対象となります。
※自分で掛け金支払って、自分で保険金をもらったから自分の所得(一時所得)となります。
所得税になるので翌年の住民税等に影響が出ます。

②不動産等売却関係

亡くなった人の不動産を売却して、相続人が売却代金を分け合うと、売却代金をもらった相続人に所得税譲渡所得がかかります。

所得税がかかるので翌年の住民税等に影響が出ます。

ただし、相続人のうち不動産を相続した人が、不動産を相続した代償として他の相続人にお金を支払った場合には、そのお金代償金は売却代金に似ていますが所得税はかかりません。

有価証券も同じように譲渡所得の対象になり所得税がかかります。

不動産を寄付した場合にも原則として所得税の対象となりますので注意が必要です。

相続に絡む不動産の売買には次のような特例が使える可能性があります。
・売却した不動産にかかる相続税相当額を譲渡所得の計算で控除できる特例
・居住用の不動産を売却した場合に譲渡所得の計算から3000万円を控除できる特例
・空き家を譲渡した場合に譲渡所得の計算から3000万円を控除できる特例

※詳しくはこちらの記事をご覧ください→相続した不動産を売却するとかかる税金

③不動産賃貸関係

亡くなった方の賃貸不動産を相続された方は、所得税(不動産所得)の確定申告が必要になります。

遺産が分割されるまでは、不動産は相続人全員の共有財産として全員が所得を法定相続分で按分して申告し、遺産分割が終わった後からは、その賃貸不動産を相続した相続人の所得として申告するのが原則になります。

※賃貸不動産を相続した方で不動産所得を始めて申告される方は、税務署に節税になる青色申告の承認申請等の提出をご検討ください。

④事業を引き継がれた方

亡くなった方の個人事業を引き継がれた方は、所得税(事業所得)の確定申告が必要になります。

個人事業を引き継ぐ場合には、その個人事業にかかわる現金預金、売掛金、商品、什器備品、車両、不動産さらに事業にかかる買掛金等の債務を相続で引き継ぐことになります。

日々継続している事業を決まった後継者が引き継ぐ場合には、一般的には不動産賃貸とは違って、相続人全員で事業を共有して引き継ぐことは困難なので、共有となる申告は行わずに事業の承継者が相続開始から引き継ぎ申告します。

※事業の後継者は、節税になる青色申告の承認申請書等を税務署に提出することをご検討ください。

 

 まとめ

相続税には連動して増加する他の税金はありませんが、相続によって資産が移転することにより、贈与税、一時所得、譲渡所得、不動産所得、事業所得が発生することがあります。

相続が発生したら、相続全般の相談に精通した、税理士等に相談して、早めの知識、早めの相談、早めの手続きをすることが大切です。

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この記事の監修者

斉木 政則

斉木 政則(税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 社員税理士 長野事務所所長

長野県出身。個人のお客様の税務申告から法人のお客様の税務申告さらに税務調査立ち合いまで、「税務判断」を行う日々を送り、税務リスクからお客様を守ることが使命と考えています。経験も豊富で、千差万別の皆様のお悩みを解決するために親身に相談に乗っています。長野市内公民館の相続関連の講座や事業者向けの相続税対策セミナーの講師としても活躍中で、分かりやすいお話が好評を得ています。