更新日2022年1月17日

古いタンスの画像

お金を手元においておくと安心ですが、いいことばかりではないようです。

どのように管理するのがいいのでしょうか?
 
 

目次

1.税務署は関係者の預金も含めて復元できる

2.収入と大きな支出は税務署が把握している

3. 税務署が探しに来るとき

  任意調査

  強制調査

4. ほんとにわからなくなった事例

5. まとめ

 税務署は関係者の預金も含めて復元できる

タンス預金は、法律に触れる悪いことではなく一般に行われていることです。

ただ「タンス預金が税務署にバレないだろうから、相続税の申告書に載せないでおこう・・・」

と、考えると脱税になってしまいます。

よくある相談で、「自分もいつ亡くなるかわからないから、銀行預金は引き出してタンス預金にしておきたい」という方がいらっしゃいます。

私はやめるようにお話しています。

理由は、盗難と紛失(後で述べます)のリスクがあることと、

税務署は通帳を復元できるので、遺族に迷惑がかかる可能性があるためです。

例えば、高齢になった父が1憶円の預金を解約して、タンス預金にして亡くなったとします。

税務署が相続税調査に入ると、亡父の預金は通帳や証書が無くても、税務署の職務権限で少なくても10年間は、復元できるのです。

ちなみに、あまり知られていないようですが、亡くなった方の通帳はその相続人であれば、銀行に復元を請求して、見ることができます。

よく、相続争いでは、同居していた親族が、亡くなった人のお金を勝手に引き出しているのではないかと疑われて、別居の親族と争いになることがあります。

そんな時、疑う方の側は亡くなった人の通帳を持っていなくても復元することができます。

ただし、この場合に怪しいと思われている同居の親族の通帳の中身までは調べられませんので、亡くなった人の口座から出金があってもその入金先が同居親族であったとしても、確認することはできません。

ところが、税務署は違います。

職務権限で亡くなった人の通帳だけでなく、その相続人、同居の家族、別居の家族の通帳まで復元して調べることができます。

亡くなった人が1億円をおろして、各々5人の子や孫に渡したとします。

税務署が5人の子や孫の通帳にそれぞれ2000万円の入金を見つければ、その5人の子や孫に2000万円の出どころを調査に行くことになります。

 
お金を貯めて亡くなった人はともかく、遺族にタンス預金と税務調査の悩みは残したくないものです。

  収入と大きな支出は税務署が把握している

これもよく質問になるのですが、

いつ、だれが亡くなったかの個人情報をどうして税務署が知っているのか? 

亡くなった人の財産がどうして税務署にわかるのか?

そもそも亡くなったことが税務署にわからなければ相続税の申告の調査もないわけです・・・。

しかし、遺族が市区町村に提出した死亡届は、税務署に通知されることになっています。

ここで、相続の発生を税務署は把握します。

次は、なぜ亡くなった人の財産がわかるかです・・・・。

税務署は国税総合管理システム(KSK)という税務署と国税庁を結ぶネットワークシステムを持っています。

ここに国民の給与の源泉徴収、不動産の売買等の収入に関する詳細な情報が蓄積されていて、税務調査に活用されているのです。

例えば、

不動産を売った時に、税務署から購入代金の出どころを確認する「お尋ね」をもらったことがある方もいらっしゃると思います。

不動産の登記情報も税務署に通知されるのですが、そのお金の出どころの情報も税務署は収集しているのです。

同様に、不動産を売却した時も、税務署は申告がなされているかは把握しています。

さらに、海外に送金した情報も税務署はしっかりと収集しています。

KSKで給与収入がいくらあって、不動産をいつ買って、いつ売却して、家賃収入があればいくら入っているのかなどの情報に基づいて、相続税が必要な人かどうかは絞り込めます。

その絞り込んだ情報に基づいて、税務署は相続税申告の催促文ともとれる通知を発送します。

それが、「相続税申告についてのご案内」という書類で、相続が発生してから6ケ月くらい経ってから届くことがあります

ご案内が届いたということは、 国税総合管理システム(KSK) により、相続税の発生しそうな人としてマークされているという事の証なのです。

それに答えず申告期限が過ぎると調査の対象となる可能性が高くなります。

また、相続税の申告書を提出した場合でも、申告内容が税務署の予測より少ない場合には、調査の対象となる可能性が高くなります。

タンス預金の有無の可能性は、調査によって預金通帳が復元されるとわかりやすくなります。

例えば、通帳から収入のほとんどが現金で引き出されて、クレジットカードやpaypayのような記録に残る使い方をしていない家は、現金払い、あるいはタンス預金として残している可能性が高いと税務署が考える一因となります。

また、通常の生活費を超えた現金支出(例 100万円以上)があれば、その一つ一つが調査対象になる可能性が高いのです。 

 税務署が探しに来るとき

任意調査

強制調査と違って、原則として事前にアポを取って、納税者の同意を得て質問検査権に基づいて行われる調査です。

亡くなった人が重要書類を管理していた場所や金庫の中も調査の対象として見せてくれと言われますが任意の調査なので、見せたくなければ拒否できます。

ただ、税務署が納得する答えを得るまで調査は続きます。

例えば、亡くなった人のタンス預金が亡くなった後で相続人の預金通帳に入った場合や、何か高額なものを相続人が購入した場合には、相続人がそれは自分の財産だと証明しなければならなくなります。

強制調査

国税犯則取締法に基づくいわゆる捜査令状を持って強制調査が行われるので、拒否できない捜査になります。

①税務調査によるペナルティ

税務調査による追徴課税(ペナルティ)は高額なものになります。

②無申告加算税

無申告加算税は申告期限までに申告をしなかったときに科されるペナルティーで、

税率は、納付すべき税額のうち50万円までは15%、50万円超の部分については20%です。

③過少申告加算税

申告した税金が少なかった場合と、還付額が多すぎた場合に発生します。

税率は追納する税金のうち50万円までは10%、50万円超の部分は15%です。
ただし、税務調査の通知前に修正申告をすれば科されません。

④重加算税

悪質なごまかしや隠ぺいがあると、無申告加算税や過少申告加算税に代えて重加算税が科されます。35%から40%の重い税率です。

⑤延滞税

延滞税は、法定納期限までに納税されないときの利息に相当するペナルティーです。納期限の翌日から完納されるまでの日数に応じ、該当する部分を納付すべき税額に乗じて計算します。

令和3年分の税率は、次の通りです。

納期限の翌日から2か月以内の部分……年2.5%
納期限の翌日から2か月を超えた部分……年8.8%

ちなみに、相続税の時効は悪質な場合は、亡くなった日から7年10ケ月後です。

 ほんとにわからなくなった事例

タンス預金のリスクは、特殊詐欺や認知症によるものを現実に見てきています。

高齢者が金融機関から高額なお金を引き出すときには、ある程度のチェック機能がかかりますが、

タンス預金からの出金は、誰もチェックをしないことが普通です。

・タンス預金からシロアリ詐欺で数百万を支払ってしまった・・・。

・タンス預金から一千万円を超える未上場株式を交わされてしまった・・・。

・同居の家族と仲が悪くて、ほとんど口を聞かなったお爺さんが、お金を隠そう(渡すまい)と思って、千万単位で銀行の本店から現金を下ろして、その後認知症になってしまった。通帳の記録でそれがわかったが、現金のありかを親族も聞き出せず、後に税務署も探しきれなかった・・・。

など、タンス預金の弊害は様々です。 

 まとめ

タンス預金は本人のみならず遺族にも相続が発生後、相続税申告・相続手続き等で困らせてしまうリスクを負わせることがあります。

タンス預金でお悩みの方は、相続専門の税理士にご相談することをお勧め致します。

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この記事の監修者

釘宮 貴美子

釘宮 貴美子(公認会計士・税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 社員税理士 首都圏事務所所長
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士 小杉事務所所長

福岡県出身。「円満な相続」には、税法の知識だけでなく民法その他関連法規と豊富な経験に基づくノウハウが必要です。税務調査率は1%に満たない精度の高いプロ中のプロ。税務を絡めて遺言や契約書等に法的不備がないか厳しい目でチェックし、お客様を税務リスクから守る、真の税務法律家です。