更新日/2022年6月7日更新

相続の対象となる相続財産とは、被相続人が残した預貯金や現金、借金などを意味します。プラス・マイナス双方の財産を相続人が承継しますが、相続の中でも評価方法が最難関とさされる財産が「土地」です。

預貯金や現金はお金そのものですから、取り扱いや相続人間での分配も簡単ですが、定価があるわけではない土地をどう評価するのかすぐにはわかりません。

相続税評価における地区区分記事入り地価のイメージ画像

土地が多い場合には、相続人全員で頭を抱えるケースも少なくないのです。

ある日突然「路線価」や「土地の区分」といった専門用語で解説を受けても、それが不動産の評価にどう影響するのかも混乱されるのではないでしょうか。

そこで、この記事では相続時に知っておきたい「土地の評価」について、地区区分を中心に詳しく解説します。

相続時には財産を評価する必要がある

相続はご家族のご逝去後、亡くなったご家族(被相続人)の残した財産を法定相続人が承継します。

遺言書がある場合には、その内容に沿って相続手続きを行います。相続は相続人や相続財産の確定など様々な準備を行った上で進めていき、場合によっては正しく相続税を納付する必要があります。

そこで、額面通りを評価すれば良い現金や預貯金とは異なり、土地はどう評価すべきなのかという問題が浮かび上がります。そこで、「相続税評価額」と呼ばれるものがあります。

相続税評価額とは

相続は財産の種類に合わせて正しい評価を行い、場合によっては相続税を納付する必要があります。しかし、土地や上場株式など評価が難しい財産もあります。そのため適正な財産の評価を行うために、財産ごとに決められた評価方法があります。この評価方法に沿って計算を行い、「相続税評価額」を確定して相続税の納付の有無などを判断します。評価は相続法上では時価主義とされているのもあり、基本的に時価で評価されています。

例えば、土地だけが被相続人の残した相続財産だった場合、土地の評価を行い相続税評価額を確定し、相続税の納付の有無を判断します。被相続人の残した財産をすべて評価してから相続税の納付の有無や納税額を判断するため、評価が難しい財産が膨大にある場合には、相続税の納付スケジュールも踏まえて早急に評価額の確定を進める必要があります。

土地の評価は相続税評価の難解部分?2つの評価方法とは

財産には色んな種類がありますが、被相続人の中にはたくさんの土地を残される方がいます。土地と言っても宅地もあれば田畑もあり、土地にも色んな種類が存在しています。

そこで、国税庁では土地の評価は「地目」ごとに行うと定めています。地目とは土地を用途別に分けている区分の名称で、登記簿にも記されています。

例として、宅地、田、畑、山林や公衆用道路などがあります。田畑に水を共有するための用水路なども土地の地目にカウントされています。土地として一律に評価をするのではなく用途で個別に分けて評価するのです。土地の評価方法は2つに分けられており、路線価方式と倍率方式があります。しかし、土地の評価はその他の財産と比べると評価が難解とされています。

それは複雑な土地の事情も踏まえて評価をする必要があるからです。

路線価方式

毎年ニュースなどで「路線価の下落や上昇」について話題になりますが、路線価とは毎年1月1日を評価時点と定め、毎年7月1日に発表されている宅地の1㎡当たりの評価額です。市街地を形成している地域の路線に面する宅地について定めているものです。宅地を路線価方式で評価する場合には、「宅地に接する道路に定められた路線価」に「宅地の地積」を乗じて評価しています。では、実際に例を挙げてみましょう。


 路線価が1㎡あたり5万円の道路に面している土地が100㎡ある場合

  式 5×100=500 つまり、このケースでは相続税評価額は500万円です。


路線価方式には問題点もあります。具体的な問題点は以下の2つです。

1・急激な土地価格の変動を、路線価が正当に評価できているとは限らない

社会情勢の急激な変化が起きてしまうと、路線価が正しく土地を評価しているとは限りません。路線価は年1度の評価ですが、土地の評価自体は毎日のように変動しているからです。バブルの崩壊や地震などがあれば、実際の土地の評価は大きく下がる可能性があります。

2.私道や土地の形状に問題がある場合、路線価と実態の土地評価の乖離が著しい

全ての宅地が路線価にそぐうわけではありません。私道にあり買い手がつかないような問題の多い土地もあれば、形状に問題が多く路線価どおりの評価はしにくいような土地もあります。

こうした問題点を少しでもリカバリーするために導入されているのが、「補正率」です。補正率にはいくつかの種類がありますが、スタンダードな補正率として「奥行価格補正率」があります。この方法は宅地の奥行距離をもとに利用しやすいかどうかを判断し、評価を最大20%下げています。宅地とされていても、適正な奥行距離ではない宅地なら路線価方式で相続税評価額を算出後に補正を行って額を確定します。

奥行価格補正率を利用する場合には、「宅地を何に使うのか」という目的を明確にする必要があります。そこで、さらに宅地を個別に分析するために、「地区区分」というものがあります。

地区区分とは

相続税評価額を行う際に宅地がどんな目的で使用されるのかを明確にするために、以下の7つの地区区分が導入されています。地区区分は路線価が表示された図に地図記号のように表示されており、どなたでも国税庁の下記リンク先で簡単に調べることができます。

①ビル街地区  大都市の商業地域の地区

②高度商業地区 都心や副都心などの商業地域の地区

③繁華街地区  大都市や地方の中核都市などで小売店舗などが集中している地区

④普通商業・併用住宅地区 商業地域や近隣に商業地域があり、事務所などもある地区

⑤普通住宅地区 住居が多い地区

⑥中小工場地区 敷地規模が9,000㎡以下程度の工場などが多い地区

⑦大工場地区  ⑥の地区を超える工場が多い地区

参考記事はコチラ→国税庁 財産評価基準書路線価図・評価倍率表

※上記サイトは年度別に分けて表示されているのでご注意ください。

倍率方式

路線価方式とは対照的に、倍率方式は路線価が定められていないような地域の評価を行います。その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。

まとめ 適切な相続税評価額を知るためには、まずはご相談を

この記事では相続財産の評価の中でも難解とされている土地の相続税評価額について、土地区分や評価方法を中心に詳しく解説しました。

土地がいろんな場所に点在しているケースや、適正な評価がどの程度なのか判断が難しい場合には、相続税の納付期限も踏まえると早めのご相談がおすすめです。

適切な相続税評価額を知るためにも、お気軽に「ソレイユ相続相談室」へご相談ください。

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この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。