夫婦が離婚した場合、元妻・元夫やその子どもは被相続者(亡くなった人)の財産を相続する権利はあるのでしょうか。

長年苦楽を共にしてきた夫婦であっても、離婚によって夫婦の縁が切れてしまえば、法定相続人である「配偶者」にあたらなくなるので、被相続者の財産を相続することはできません。相続人となれるのはあくまで現在の法律上の妻・夫(配偶者)のみです。

では、別れた妻(夫)との間にできた子どもはどうでしょう?

離婚によって夫婦の縁が切れても、子どもとの親子関係は切れることがなく、その子どもは法定相続人として財産を相続することができます。

仮に離婚後に父親と母親・子どもが音信不通の状態にあったとしても、「子ども」は法定相続人です。

しかし、被相続人が何らかの理由で「別れた妻(夫)の子どもには遺産を絶対に渡したくない」と思っている場合は、遺言書を作成しておきましょう。

遺言書を準備し「元妻(夫)との間の子どもには財産分与をしない」と記載しておけば、元妻(夫)との間の子どもが、被相続人の財産を相続することはできません。

法定相続人には「遺留分」が保証される

しかし、遺言書に「元妻(夫)との間の子どもに相続させない」と書いたとしても、子どもが遺産を請求した場合、法定相続人であるその子どもに遺留分は渡さなければなりません。

民法で定められた遺留分とは、遺言書の内容にかかわらず「法定相続人に保証された最低限度相続することのできる割合」です。

子どもは、本来の法定相続割合の半分である4分の1の財産を遺留分として請求できることになっています。

遺言書は、自分で作成(自筆証書遺言書)したものを法務局に預けることができるようになりましたが、元妻(夫)との子どもの遺留分も考慮した遺言書作成は、相続の専門税理士に相談して作成する方がいいでしょう。

再婚相手の連れ子の相続

被相続人と血のつながりのない「再婚相手の連れ子」は、法定相続人ではないので、遺産を受け取る権利がありません。

連れ子が実子と同等の相続人になるには、「養子縁組」をして戸籍にその旨を記載しておくことが必要です。

養子には、15歳未満の子どもだけに認められる「特別養子縁組」と「普通養子縁組」の2通りがあります。

「特別養子縁組」の場合、再婚先の戸籍謄本に「長男」「長女」と記載され、元妻(夫)との縁は切れますので、実親が亡くなった時には相続権は発生しません。

一方、「普通養子縁組」の場合は、再婚先の養子となったとしても実親の相続権を失うことはなく、実親と養子縁組した親の両方の財産を相続することができます。

離婚後の相続は早めに準備を

再婚相手の連れ子と養子縁組をしていない場合でも、遺言書に「再婚相手が連れてきた子どもにも遺産を相続させる」と明記しておけば、遺産を受けとることができます。

また、遺言書で、法定相続人に保証された遺留分が侵害された場合の精算方法が「対象財産が不動産でも金銭の支払いが請求できる」ように法改正されました。

遺言書の作成とともに、元妻(夫)の子どもに渡せる預貯金の確保など、早めに相続専門の税理士に相談して準備しておくことが大切です。

この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。