更新日/2022年1月20日
相続財産から控除される債務の具体例
相続税の計算上、借入金や事業上の未払金といった債務の金額は亡くなった人(被相続人)の遺産総額から控除され、その控除された後の「正味の財産」にのみ相続税が課されます。
しかし、借入金や事業上の未払金がない場合でも、実務上、債務控除となるものはいくつかあります。債務控除の対象となる債務は、「確実な債務」及び「死亡後に確定する被相続人に係る公租公課」です。
以下、具体例を挙げて解説します。
債務となる主な「確実な債務」
債務控除の対象となる債務のうち「確実な債務」は次のようなものがあげられます。「確実な債務」には、借入金のような明らかな債務の他、相続開始時点でまだ支払が行われていない又は支払期日が到来していない費用も含まれます。
①クレジットカードの未払金被相続人が使った費用で、決済の済んでいないもの
②医療費や生活費の未払金被相続人の死亡後に相続人が病院に支払った被相続人にかかった医療費や老人ホーム、 介護施設等使用料その他の費用
③公共料金などの未払金利用後に支払いの住んでいない水道・ガス・光熱費、電話代など
④被相続人の公租公課(税金)の未払金固定資産税、住民税、個人事業税の未納分(死亡した年分で支払期日未到来 のものを含む)、国民健康保険や国民年金等の社会保険料など
⑤賃貸物件を貸していた場合の賃借人から預かっている敷金や保証金、家賃の前受金
債務となる「死亡後に確定する被相続人に係る公租公課」
被相続人の死亡後、相続人などが納付又は徴収されることになった税金については、被相続人が死亡したときに確定していないものであっても、債務として計上できます。具体的に言うと「準確定申告の所得税・消費税・個人事業税の税額」がこれにあたります。
準確定申告とは、被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得に係る確定申告のことを言います。準確定申告は、当然、被相続人が亡くなった後に計算され確定しますから、被相続人の死亡の時には存在しない債務です。
しかし、被相続人の所得を基に計算され、その納税義務は相続人が引き継ぎますから、被相続人の遺産総額から債務として控除することができます。但し、これらに係る延滞税、過少申告加算税等の付帯税は、相続人の事情により発生したものなので、債務控除の対象とはなりません。
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