配偶者は相続税がかからない?

相続税を計算する上で「配偶者に対する相続税額の軽減」という特例があります。
被相続人(亡くなった人を言います。)の配偶者は、相続により財産を取得しても税金がかからないと言われることがあります。
実際には配偶者であっても相続税は課税されるのですが、この「配偶者に対する相続税額の軽減」の特例の適用を受けると、その配偶者の相続税の納税額が0円になるか、極端に少額になる場合が多いので、相続税がかからない、と言われることが多いのでしょう。
 
 

配偶者に特例がある理由と条件・手続き

≪理由≫
被相続人の配偶者は、被相続人と共同して生活し被相続人の財産を作るために大きな役割を果たしています。
また被相続人亡き後の配偶者の生活保障や、被相続人と年齢が近いことが多いため、短期間のうちに相続が2回発生し、もう一度同じ財産に相続税がかかってしまうことなどを考慮し、この「配偶者に対する相続税額の軽減」の特例が設けられました。
≪条件・手続き≫
この特例は、婚姻の届出さえしていれば、婚姻期間の長さに関係なく適用されますので、1日であっても正式な婚姻関係にあれば、控除を受けることができます。
逆に内縁の関係であった場合には、何十年夫婦のように生活していたとしても適用を受けられません。
 
また、配偶者が実際に相続した財産に係る相続税にしか適用を受けられませんので、遺産分割協議が整わず取得者が定まっていない財産や、隠ぺいして申告書に記載しなかった財産などは適用対象外となり通常の相続税が課税されます。
さらに、相続税の申告書に所定の明細書、相続により取得した財産がわかる書類、被相続人の配偶者であることを証する書類などを添付し、管轄の税務署に提出しなければなりません。
仮にこの特例により相続税の納税額が0円になったとしても必ず提出が必要です。
 
 

配偶者控除の内容

被相続人の配偶者は、相続や遺贈により実際にもらった正味の遺産額が、法定相続分(1億6千万円に満たない場合は1億6千万円)以内であれば税金がかかりません。
相続税の軽減額を算式にすると次のようになります。
≪算式≫
配偶者控除額=相続税の税額 ×(次のABのいずれか少ない金額÷課税価格の合計)
A:配偶者の法定相続分(法定相続分が1億6000万円未満なら1億6000万円)
B:配偶者の課税価格(配偶者が相続する財産分)
 
 

分割協議が整わないまま申告期限を迎えた場合

前述のとおり、相続人間で取得先が決まっていない未分割の財産にはこの特例は適用できませんが、一旦、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告し、その後、申告期限から3年以内に分割協議が整った場合は、その分割協議が整ったときから4か月以内に管轄の税務署に「更正の請求」をすることで、この特例を受けることができます。
その際、納めすぎていた相続税は還付されることになります。

この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。