更新日/2022年11月28日
お子さまの成長や同居の開始などによって、リフォームやリノベーション をご経験される方は多いでしょう。快適に暮らすために家屋を改築する場合には、高額の費用を支出する場合があります。では、もしもご家族が改築に高額の支出をした後に亡くなってしまったら、相続手続き上にどんな注意点があるでしょうか。また、リフォームで二世帯同居を行うにあたって親が子にリフォーム資金を提供した場合は贈与になりますが、税制上にどんな注意点があるでしょうか。
今回の記事では「家屋のリフォームと相続・贈与」 をテーマに、詳しく解説を行います。高額の改築後に考えられる相続や贈与問題に触れていきますので、ぜひご一読ください。
目次
高額のリフォームやリノベーションは相続に影響する?
リフォームやリノベーションを実施した場合、数百万単位で支出することも多いでしょう。特に高齢となった両親の介護も見据えて増改築をする場合や、結婚を機会に実家の両親と同居を開始する場合、快適に2つの世帯が暮らせるように水回り設備を増やし、建物も増築するご家庭が多くなっています。この時、リフォームやリノベーションの費用を「誰が支出するのか」という問題があります。
両親と子の世帯が両親の実家にて同居を開始する時、親から子へ改築費用を支出することが多いでしょう。一度に高額の費用を支出するため相続税対策になります。そして、核家族を希望する子も多い現代において、同居をしてくれる子へのお礼の意味もあるでしょう。しかし、もしも改築直後に改築費用を支払ってくれた親が亡くなってしまったら、相続に影響するのでしょうか。結論から言うと、「高額の改築費用が発生している場合、影響します。」 では、どうして相続に影響するのでしょうか。その理由には「固定資産税の評価」が挙げられます。
相続における家屋の評価とは
改築した家屋の所有者(被相続人)が亡くなられた場合、相続財産にはこの家屋も含むことになります。では、相続税を納める必要があった場合には、家屋はどのように評価するのでしょうか。相続上、家屋の評価には「固定資産税評価額(※1)」を使います。厳密に言うと固定資産税評価額×1.0と言う式を使います。例えば、被相続人が所有していた家屋の固定資産税評価額が仮に、2,000万円だったとしましょう。この場合、相続税評価額もそのまま2,000万円です。
(※1)固定資産評価額とは
固定資産評価額とは、固定資産税を算出する際に使われる評価のことです。固定資産税は毎年1月1日時点において所有している土地や建物に対して通知されます。相続時に固定資産評価額を把握したい場合には、毎年送られてくる「固定資産税納税通知書」や「固定資産評価証明書」を自治体にて取得することで把握できます。固定資産評価額は市町村区長が「3年ごと」に定めています。
大規模なリフォーム・リノベーションをした家屋はどう評価する?
固定資産評価額は3年ごとに評価が定められています。では、大規模なリフォーム等の改築後に建物の所有者であり改築資金の出資者が亡くなられてしまったらどうすれば良いのでしょうか。この場合考えられるのは以下の2つです。下記の事例を用いて説明しましょう。
【例・家屋所有者だった父が同居のために大規模なリフォームしてくれたが、
その直後に亡くなってしまった】
①リフォーム後に固定資産評価額が反映されている場合
改築内容が固定資産評価額に反映されている場合は、そのまま相続税評価額を使えばOKです。増改築などの評価がきちんとなされているので、問題ありません。
②リフォーム後に固定資産評価額が反映されていない場合
改築内容が固定資産評価額に反映されていない場合、国税庁は以下のように定めています。
・元々の家屋の固定資産評価額 + 「(支払ったリフォーム代-減価償却費用相当分)×70%」 |
つまり、固定資産評価額の改定を待たずしてリフォームが完了し、父が亡くなってしまったこのケースでは、亡父の相続財産に相続税が発生した場合に適切な評価額を計算する必要があるのです。元々の固定資産評価額のままで相続税を計算すると誤りとなるため、注意が必要です。
参考記事はコチラ→ 国税庁 「増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価」
小規模のリフォームでも相続税時に固定資産の再評価は必要?
では、同居のために簡単なリフォームしか行っていない場合には、相続税の納付時にはどうすれば良いのでしょうか。もしも亡父の資金で行ったリフォームが家屋の資産価値を大幅に上げるようなものではないなら、相続税時に固定資産評価をやり直す必要はありません。では、資産価値が上がらないリフォームとはどのようなものでしょうか。
■「建物を使用するにあたって必要な維持・補修の程度」は資産価値が上がらない |
同居を開始するために大規模なリフォーム・リノベーションを行う場合は多いですが、今ある家屋を修繕する程度に留めるリフォームも多いでしょう。例として挙げると壁紙の交換や古くなった床の修繕などが考えられます。外壁の修繕や再塗装程度も、資産価値の大幅なアップとは考えにくいでしょう。しかし、床の増築や店舗から住宅への変更など、明らかに変更点がある場合には資産価値は上がると考えられます。
リフォーム・リノベーションの資金を贈与するとどうなる?
同居開始などの事情にともない、親が子にリフォームやリノベーションの改築資金を「贈与」することも考えられます。この場合には、知っておくべき注意点はあるでしょうか。
贈与税には非課税措置がある!賢く活用しよう
高額になりやすいリフォームやリノベーション時には、親から援助を受けることが考えられます。本来なら110万円を超える贈与は贈与税がかかりますが、リフォームで高額の費用を贈与した場合には贈与税はどのように扱うのでしょうか。実は、住宅購入時に良く使われている「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例」は改築時にも活用できるのです。非課税特例の適用を受ける場合、贈与者が亡くなった後の相続税の課税対象にもなりません。非課税特例を使うためには以下の要件をクリアしましょう。
1.増改築後の床面積は40平方メートル以上、240平方メートル以下
2分の1以上は住居であること
2.リフォームする家は自己所有であること
※贈与を受ける方本人名義の家である必要があり、親名義のままなら子の贈与の非課税は認められません。受けるためには家の所有者を子に変更しましょう。
3.リフォームを行った業者が発行する「確認済み証の写し」等が必要であること
その他、家屋の要件などに関する内容は下記記事をご参考ください。
参考記事はコチラ→国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
この方法なら、もしもリフォーム後に資金を贈与してくれた親が亡くなっても、すでに家屋の所有者は子であるためややこしい固定資産評価額の再評価も不要です。また、直系尊属からの贈与が適用となるため、祖父母→孫への贈与も対象となります。さらに、民法の改正によって成人年齢が引き下がったため、従来の受贈者の対象年齢であった20歳から18歳に変更されています。以前よりも若いご家族もこの特例を受けられるようになりました(令和4年3月31日以前は20歳以上)
※この特例は適用期間が現在のところ「令和5年12月31日まで」とされています。
子が親の家屋をリフォーム・リノベーションするとどうなる?
親の老後を心配し、子が実家に戻って親の家をリフォーム・リノベーションすることも考えられます。すでに高齢化した親には手元に資金が無く、子が用意することも考えられるでしょう。しかし、子が親の家を改築する、という場合も贈与であり贈与税が発生します。加えて、親所有の家屋のままですと、相続時には家屋も含めて相続財産を計算する必要があります。親孝行のつもりが、思わぬ課税に苦しむ可能性があるのです。
まとめ
親子が一緒に住まうためのリフォーム・リノベーションについては、さまざまな視点から税金を分析し、協力し合って乗り越える必要があります。節税のつもり、親孝行のつもりが思わぬ落とし穴に…というケースも多いのです。特に高額のリフォームを行う前には、将来の相続も見据えておくことがおすすめです。まずはお気軽に、ソレイユ相続相談室にご相談ください。