最終更新日/2022年3月9日

相続時精算課税の受贈者が亡くなった場合の記事イメージ画像

相続時精算課税は贈与税制度のうちの1つで、贈与税の節税にはなりますが、贈与者が亡くなった時に相続税が課税される仕組みになっています。

この相続時精算課税を使って贈与をしたケースで、贈与者よりも先に受贈者が亡くなってしまった場合には、課税される税金はどのようになるのでしょうか。

今回は、相続時精算課税の受贈者が先に亡くなった場合の対処についてご説明します。贈与と税金の関係を理解し、有効な生前対策を行いましょう。

相続時精算課税とは

相続時精算課税とは、60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の子や孫に対する贈与に適用できる生前贈与の制度です。最大2,500万円までの財産を非課税で贈与できるため、事業承継や不動産の贈与で活用されるケースが多くあります。

大きなお金を非課税で贈与できるため、贈与税・相続税ともに節税対策として活用できると思われがちなのですが、実は相続時精算課税はそこまで節税効果が大きくありません。その理由は、相続時精算課税が贈与税の代わりに相続税の課税対象となる制度だからです。

例えば、80歳のAさんが20歳になった孫Bさんに対し、相続時精算課税を利用して2,000万円の贈与をしたとします。この場合、非課税額の範囲内のため、贈与税が課税されません。しかし、Aさんがなくなった時に贈与された2,000万円はAさんの相続財産に加えられ、合計した金額で相続税を計算することになるのです。したがって、BさんはAさんから受け取った2,000万円の財産について相続税が課されることになります。

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受贈者が先に亡くなった場合の納付義務

では、相続時精算課税の受贈者が贈与者よりも先に亡くなった場合には、課税されるはずの相続税はどうなってしまうのでしょうか。

税法上、相続時精算課税で贈与された財産に課税される相続税の納付は義務として承継されることになります。

相続時精算課税を利用して財産を受け取った受贈者が贈与者よりも先に亡くなると、受贈者の相続人が受贈者が支払うはずだった相続税の納付義務を引き継ぎます。したがって、その後に贈与者が亡くなった場合には、本来受贈者が相続税を支払うべきであったところを、受贈者の相続人が支払うことになります。

例えば、80歳のAさんが20歳になった孫Bさんに対し、相続時精算課税を利用して2,000万円の贈与をしたとします。贈与から10年後、受贈者であるBさんは配偶者Cさんと結婚しましたが、それからすぐに急な事故により亡くなってしまいました。このとき、Aさんはまだ存命です。

このような場合、Bさんが相続時精算課税で受け取った2,000万円にかかる相続税は本人が支払うことができません。そのため、支払いの納付義務はBさんの相続人であるCさんが承継します。

CさんはAさんが亡くなった時に、Bさんの代わりに贈与財産2,000万円に対する相続税を支払うことになるのです。

また、相続人が複数人いる場合には、各相続人が承継する権利義務の割合は、法定相続分または代襲相続分によります。亡くなった人の遺言で相続分が指定されている場合は、指定相続分で承継することになります。

なお、CさんがAさんの死亡に伴って財産を受遺している場合には、これとは別にAさんの死亡に関する相続税が課税されます。

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【注意点】債務控除ができなくなる

通常、相続税を計算する際、亡くなった人に借金や未払金などの債務があった場合には、その債務の金額は相続税の計算上亡くなった人の財産から控除されます。これを「債務控除」といいます。したがって、相続税が課税される財産額は、以下の算式で求められます。

課税対象額=預金・不動産などのプラスの財産−借金などの債務

例えば、亡くなったAさんには預金1,500万円と相続税評価額1,000万円の土地の他に、800万円の借金があったとします。また、Aさんは相続時精算課税で Bさんに2,000万円を贈与していました。

この場合、Dさんの相続における課税対象額は、預金1,500万円+土地1,000万円+贈与財産2,000−債務800万円=2,900万円となります。

(※基礎控除については考慮していません。)

相続時精算課税の適用を受けた場合でも同じく、亡くなった贈与者Aさんに債務があった場合は、債務控除をすることができます。

ただし、贈与者Aさんよりも先に受贈者Bさんが亡くなってしまっている場合には、受贈者の相続人Cさんが受贈者Bさんの代わりに支払う相続税は債務として控除することができません。

例えば、受贈者BさんがDさんの相続で支払うはずだった相続税が300万円だったとします。Bさんが預金4,000万円を残して亡くなった場合、預金4,000万円がそのまま相続税の課税対象になってしまうのです。

(※基礎控除については考慮していません。)

そのため、Cさんは「Bさんの代わりに支払う相続税額300万円+Bさんの相続でかかる相続税」を負担することになります。

相続時精算課税を利用して贈与をする場合には、十分な注意が必要です。

❏まとめ

今回は、相続時精算課税の受贈者が先に亡くなった場合の相続税の納付義務についてご説明しました。受贈者が先に亡くなると、受贈者の相続人が贈与財産にかかる相続税の申告や納付を行うことになります。自分だけでなく、親や配偶者が相続時精算課税を利用して贈与を受けていないかを確認しておきましょう。

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この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。