公開日 2021年6月22日
「相続税の配偶者控除」とは、亡くなった人の妻や夫(配偶者)の生活を守るため、配偶者が相続する財産が一定額を超えなければ、配偶者の相続税をゼロにすることができる制度です。
しかし、この制度についてよく知らないまま、なんとなく配偶者に相続財産を集めてしまうと、配偶者からその子どもへと相続するとき(二次相続)、多くの相続税を支払うことになる恐れがあります。
制度をうまく活用して節税を成功させるために、「相続税の配偶者控除」の概要や適用条件について知っておきましょう。
目次
「相続税の配偶者控除」で控除される金額は?
相続税の配偶者控除は、配偶者の相続額から1億6000万円が差し引かれます。
つまり、「配偶者が相続や遺贈により取得した財産額が、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までであれば相続税がかからない」という制度です。
簡単に言うと、
・配偶者の受け取る財産が1億6,000万円以下の場合は、相続税はかからない。
・1億6,000万円を超える場合でも、法定相続分(民法で定められた相続分)までであれば相続税はかかりません。
例えば、被相続人が8,000万円の預貯金を残して亡くなり、妻と長男の2人が相続人となるケースを考えてみましょう。
配偶者と子が相続人となる場合の法定相続分は、それぞれ2分の1ずつですので、妻の法定相続分は4,000万円となります。
しかし、妻と子で話し合った結果、妻が6,000万円、長男が2,000万円の割合で相続することに決まりました。この場合、配偶者控除を適用すると妻の相続税額はいくらになるでしょうか?
この場合の配偶者控除は、妻の取得する財産額が1億6,000万円または妻の法定相続分(4,000万円)のうち、どちらか多い方の金額までは相続税がかかりません。妻の実際の相続分は6,000万円で、1億6,000万円よりも少ないので、配偶者控除により妻の相続税額はゼロとなるのです。
よほど被相続人の財産が多くない限り、配偶者控除によって配偶者の相続税額がゼロとなるケースがほとんどです。このように、大きな額の節税が期待できる制度ですが、いくつかの条件を満たしていなければ制度を使うことができません。配偶者控除の要件は以下の3つです。
要件① 法律上の婚姻関係にあること
配偶者控除を受けるためには、亡くなった人と法律上の婚姻関係にある配偶者でなければなりません。戸籍上の配偶者であれば婚姻期間は関係なく、1ヶ月でも40年でも同じように控除を受けることができます。
ただし、内縁関係の夫や妻は配偶者控除を適用できません。
要件② 相続税申告書を税務署に提出すること
相続税の申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに申告書の提出を済ませていることも要件の1つです。
なお、相続税申告書は相続税がかかる場合に提出する書類ですが、配偶者控除を適用したことで相続税がゼロになった場合でも申告は必要になりますので、忘れずに提出しましょう。
要件③ 申告期限までに遺産分割が決まっていること
そのほかにも、配偶者控除を受けるためには、相続税の申告期限までに「誰が、何を、どのくらい相続するか」を決める必要があります。亡くなった人が遺言書を残していれば良いのですが、遺言書がない場合や遺言書があってもその内容通りに遺産を分割しない場合は、「遺産分割協議」を行なって、誰がどのくらい相続するのかを話し合う必要があるのです。
仮に、申告期限までに話し合いがまとまらない場合は、申告のときに「申告期限後3年以内の分割見込書」を一緒に提出することで、申告期限から3年以内で遺産分割が確定したときに適用を受けることができるようになります。
相続税の配偶者控除を受けるための手続き
要件をすべて満たしたら、実際に税務署で手続きをしましょう。配偶者控除の手続きは、相続税申告のときに申告書と一緒に以下の書類を提出して行います。
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
・印鑑証明書(遺産分割協議書の写しを提出する場合のみ)
・申告期限後3年以内の分割見込書(申告期限までに遺産分割協が確定していない場合のみ)
なお、申告期限後3年以内の分割見込書を提出し、その後遺産分割が確定した場合は、確定した日の翌日から4ヶ月以内に「更正の請求」の手続きをすることで、払い過ぎた相続税を返してもらうことができます。
「相続税の配偶者控除」には非常に大きな節税効果がありますが、配偶者からその子どもへと相続するときの「二次相続」まで配慮した相続対策が必要になります。節税だけでなく争族の対策をするためにも、ソレイユ相続相談室の「無料相談」をご利用ください。