公開日/2022年3月20日

相続税申告を頼むといくらかかる?記事用のイメージイラスト

相続税申告を依頼する時、目下心配なのは税理士報酬ではないでしょうか。後悔しないよう、料金内でやってもらえる業務や、追加料金がかかるケースも知っておきたいところです。

以降の解説では、料金システムや見積りが適正かどうか見極めるためのヒントになります。税理士に仕事を任せるのが今回初めてとなる場合は、選び方のポイントとして、信頼できる依頼先の特徴も押さえておきましょう。

❏相続税申告でかかる税理士報酬の相場

相続税の申告業務にかかる税理士報酬は、遺産の価額に応じて見積もられます。以降で紹介するのは、専門分野として相続を掲げる税理士法人につき、筆者が独自に調査した報酬相場です。

税理士報酬の適正値は遺産の0.5%~1%

申告書の作成・提出までの一連の税務を任せる場合だと、相続税分野の報酬相場は遺産総額の0.5%から1%程度です。割合は変動制とする法人が多く、遺産が多くなるほど報酬比率は相対的に下がるのが普通です。

相談報酬は1回あたり5千円~1万円が目安

節税や申告書の書き方について相談のみ希望する場合は、1回あたり1時間以内で5千円から1万円程度が報酬相場です。

実際に相続税について有料で質問する場合、セカンドオピニオンの形を取るのが一般的でしょう。依頼するかどうか決める時の初回相談は無料になることが多く、以降の質問があった時は、依頼報酬に含む形で対応してもらえるのが普通です。

報酬の一例【ソレイユ相続相談室の場合】

予算のイメージを固められるよう、ここでソレイユ相続相談室の報酬例を紹介します。弊社では、サポート内容に応じて割引も行っています。

【例A】遺産総額が3千万円(土地1件含む)の場合

基本報酬22万円(書面添付込)
加算報酬5万5千円(土地分)
その他の報酬戸籍謄本の交付手数料等(実費)
合計27万5千円+実費

【例B】遺産総額が7千万円(土地2件含む)で、複雑な事情がないケース

基本報酬44万円(書面添付込)
加算報酬11万円(土地分)
その他の報酬戸籍謄本の交付手数料等(実費)
特別割引10万円
合計45万円+実費

※弊社の料金体系はこちらのページでご覧いただけます。

❏税理士の基本業務│報酬内で出来る仕事は?

税理士が担う業務は、申告書作成の代行に留まりません。事前調査と添付書類の収集から、仕上げに行う申告書の提出まで、全体をワンストップで任せられます。

なお、相続を専門分野として扱う税理士法人は、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・不動産鑑定士等の他業種との連携を深めています。税理士の取扱分野とは必ずしも言えない業務に関しても、それほど複雑でないものに限り、報酬内で進めてもらえるのが一般的です。

各種調査【相続財産+相続人】

相続税申告では、最低限必要な準備として、相続人構成と資産状況の調査があります。自力で対応する場合は以下のように大変煩雑ですが、税理士なら職権で効率よく進められます。

▼相続人調査について

まずは亡くなった人の出生以降の戸籍謄本を収集し、関係する親族全員分の現在の戸籍も辿ります。最後に家族関係を整理し、氏名・住所を併記した「相続関係説明図」を作成しなければなりません。

▼資産状況の調査について

一般に、亡くなった時点の保有資産(=相続財産)のみ調査すれば良いと考えられていますが、これは誤解です。実際には、晩年の所得や相続開始後に至るまでの入出金記録も調べ上げ、準確定申告の要否・生前贈与の有無等を確認する作業があります。

遺産分割協議書の作成

遺言書がないケースでの相続税申告では、各人の取得した財産を示す「遺産分割協議書」の提出が不可欠です。書面に決まった様式はなく、本来は相続人で協力し合って作成しなければなりません。本書面がないと「配偶者の税額の軽減」や「小規模宅地等の特例」等の計算が出来ず、重要性は高いと言えます。

税理士に依頼した場合、遺産分割協議書の作成も一元的に任せられます。必要な場合は弁護士とも連携し、課税のエビデンス(=証拠)として万全なものを作れます。

▼税理士でも遺産分割協議を作れるのか 遺産分割協議書の作成業務=弁護士の分野と考えられがちだが、申告書に添付する予定がある場合は税理士でも作成できます(税理士法施行規則第1条)。当てはまるのは、配偶者の税額の軽減等、特定の財産や相続人にかかる取得状況が課税額に影響する時です(相続税法施行規則第1条の6・相続税法第19条の2)。

相続税の計算+申告書作成

相続税の計算および申告書の作成は、税理士の業務の中心になるものです。

上記業務は「自力だと不可能」とまでは言えませんが、初めてだと油断は出来ません。配られた様式の説明に沿って書いたつもりでも、書き込む欄を間違えていたり、計算結果に間違いが出たりするケースが頻繁に見られます。

税理士であれば、事前準備で集めた資料を元に、正確性が担保された書面を作れます。

▼自分で申告業務を行うリスク

万一ミスがあれば、後々税務署からの問い合わせに対応しなければならず、面倒かつ緊張を強いられる場面は避けられません。それどころか、実際に過少申告や無申告だと指摘されてしまう恐れもあります。

二次相続や資産売却に向けたフォロー

遺産をもらい受ける時に考えたいのは、課税が今回だけでは済まない点です。将来において、売却し対価を受け取れば譲渡所得税がかかり、子どもや孫に承継するのであれば再び相続税がかかります。

特に自社株や不動産等といった重要性の高い資産では、節税のための中長期的な計画が必要です。税の仕組みをただ学んだだけでなく、実際に多数の事例を扱う税理士だからこそ、上記の問題にも良い案が出せます。

税務調査の対応

税理士の有無で大きく変わるのは、後に申告内容について「税務調査」が入った時です。適正申告か否か確認するための調査であり、税務署から説明を求められた時は、普通なら申告者が自分で対応しなければなりません。

相続税の申告書に施される税理士の署名は、計算の責任がその税理士自身にあることの証明です。調査では税理士に対応の主体が移る他、調査選定の段階で「正確性が担保されている」として対象から外してもらいやすくなる効果があります。

❏税理士報酬が高くなる相続事例

相続の状況によっては、紹介した基本報酬の他に、複雑な状況に対応するためのコストである「加算報酬」がかかることがあります。加算の有無と金額はケースバイケースですが、下記の事情は気を付けておくと良いでしょう。

調査が難航するケース

申告業務の前に行う調査の中には、プロですら一筋縄では行かないものもあります。当てはまるケースでの加算報酬は、事情に応じて2万円から5万円程度と幅があります。

▼相続人調査が難航する場合(一例)
・共同相続人と連絡が取れない
・相続人の構成が複雑化している(結婚・離婚を繰り返している場合等)

▼相続財産調査が難航する場合(一例)
・国外に複数もしくは多額の財産がある
・相続開始前後の入出金頻度が高い(計算が複雑になる)

土地や非上場株式が含まれるケース

取得した財産に土地や非上場株式が含まれる場合、1件ごとに5万円程度の加算報酬がかかるのが一般的です。その理由になるのは、以下で説明する事情です。

▼土地について

土地評価は立地と面積に基づいて行いますが、個別のケースではより複雑な計算が必要です。形状と高低差・権利関係・利用状況・防災区域指定の状況等に基づき、一定の評価補正が認められているためです。

▼非上場株式について

非上場株式の評価は、会社規模・株主構成・決算情報の3つの観点に基づき、複数の評価方式を使い分けます。評価方法のパターンは多彩であり、認められた方法の中で株価を最小化できるものを採用しなくてはなりません。

申告期限が迫っているケース【目安は3か月未満】

相続税の申告業務にかかる期間は、状況がいかにシンプルであっても3か月程度に及びます。申告期限が迫った状態で対応するとなると、加算報酬として基本報酬の10%~50%程度上乗せされるのが一般的です。

申告期限が亡くなった日の翌日から10か月後である点を考慮し、余裕を持って相続開始後3か月以内を目安に相談を始めると良いでしょう。

❏相続税申告を安心して任せられる税理士の特徴

これから税理士に相談する人にとって、何より大切なのは「安心して任せられること」ではないでしょうか。税理士報酬が高いからと言って、必ずしも良い仕事をしてもらえるとは限りません。むやみに安すぎる依頼先だと、必要な支援と専門分野との間にミスマッチが生じ、結果に不満が残る可能性があります。

ここで紹介するポイントに注目すると、十分な対応スキルと親切さを兼ね備えた税理士に出会えるはずです。

申告実績や対応範囲等が分かる

相続の支援に自信のある税理士は、申告実績や対応できる範囲につき、積極的に発信しています。税について不安を持つ利用者の目線になり、経験に基づいて役に立つ情報を提供しようとする傾向も見られます。

税の学習を兼ねて、まずは税理士法人の公式ウェブサイトやガイドブックを確認してみましょう。

節税策を積極的に提案してくれる

専門性がはっきりと表れるのは、節税策に関する提案力です。気になる税理士法人にはいったん問い合わせをかけ、どんなアドバイスがもらえるか確認してみましょう。

個別に相続税額を最安にする方法を考えるとなると、現在ある制度から経験に基づいて判断しなければなりません。異分野、または会計業務に特化している安い税理士法人だと、期待できない対応です。

書面添付制度に対応している【税務調査対策になる】

税理士法第33条の2で定められる「書面添付制度」は、税の分野別に経験豊富な税理士のみ導入しています。その趣旨は、税理士が一定の書面を申告書に添付した場合に限り、税務調査の際に当局から意見聴取の機会が与えられるというものです。申告書に不備の疑いが生じた際に、その説明を最初に行う「権利と責任」が税理士に生じるのです。

本制度を導入する税理士法人なら、申告業務の正確性についてより信頼できるだけでなく、アフターフォローも期待できます。

親切で説明が分かりやすい

税理士選びでは、相談時の印象も大切にしましょう。質問に対して非専門家向けにかみ砕いた説明をしてくれるか、面倒がらずに親切な対応をしてくれるのか、しっかり確認したいところです。

初めから信頼関係を結べる相手だと、その経験と知識も最大限発揮されます。

❏まとめ│税理士選びのポイント

税理士報酬は遺産総額の0.5%から1%までの範囲に収まり、これに一定の事情に応じて加算報酬がかかるのが普通です。肝心の依頼満足度に関しては、金額の細かな違いによる差の影響を受けません。見積りが相場通りであれば、実績・提案力・アフターフォローの3つの要素を重視して依頼先を選ぶと良いでしょう。

▼税理士選びのポイント
・申告実績や対応範囲が掴めるか?
・書面添付制度を導入しているか?
・節税策に関する積極的な案内があるか?

依頼先に迷って申告期限間近になってしまうと、その後かかる費用が高額化してしまいます。気になる窓口があれば、ひとまず初回相談を利用するのがベストです。

相続税申告のご相談は、事例豊富なソレイユ相続相談室をご利用ください。

休日夜間相談バナーの画像
休日夜間相談バナーの画像mb版

この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。