更新日/2022年6月6日

名義預金とはどんな預金?相続税調査を安全に乗り越えるコツとは?記事入りイメージ画像、通帳、電卓、印鑑が置かれている

家族のご逝去にともない、残された家族はさまざまな手続きを行う必要があります。

医療機関への支払いや葬儀を終えた後に待ち構えているのは「相続」です。故人(被相続人)が残された大切な財産を相続する際にはいろんな注意点がありますが、その中の1つに「名義預金」の問題が挙げられます。

名義預金とは、「被相続人が相続人名義で残した預金」のことを指します。多い事例としては、亡くなった親が子の名義で預金を残しているケースです。

では一体、相続手続きにおいて名義預金にはどのような問題が起きているのでしょうか?この記事では名義預金や相続時調査(税務調査)について詳しく解説します。

名義預金とはどんな預金?故人の思いが思わぬトラブルに!

ご家族がご逝去し、相続手続きを行う際には早急に相続対象となる被相続人所有の財産を調査する必要があります。葬儀を終えたばかりなのに財産調査を急がねばならないケースもあるためです。

被相続人名義の高額の負債がある場合は、相続放棄や限定承認を視野に入れる必要があり、これらの手続きは相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ手続きをする必要があります。

限定承認とは…残された財産を超える債務に関しては放棄をすることができる

財産調査を行い、被相続人の預貯金や有価証券、不動産などを特定し相続税の申告に臨みます。相続税の申告の期限は「被相続人が亡くなったことを知った日から10か月以内」ですので、よほど疎遠の相続人でなければ葬儀直後から相続税の申告準備を進めることが一般的です。

財産調査は亡くなった方の名義の財産を特定していく作業のため、つい見落とされる預金があります。

それが「名義預金」なのです。

名義預金とは

名義預金とは被相続人以外のご家族の名義で作られた預貯金口座です。特に多いのは親が子の名義の預貯金口座を作ってお金を残しているケースです。子を思う親心が名義預金という形で残されていることがあります。また、夫が妻の老後を思って預貯金を妻名義にして残している場合もあります。

名義預金はなぜ注意が必要なのか

名義預金は良かれと思って被相続人が生前からコツコツと預貯金を残していることが多いですが、相続時には一体どのような問題があるのでしょうか。名義預金を親から子へのケースで解説しましょう。

亡くなった母(被相続人)が子2名(相続人)のために、毎年贈与のつもりで子の誕生日に預貯金に110万円以内の範囲でお金を入れていた。

母は子が使い込んだり浪費したりしないように名義預金の存在は知らせないまま亡くなった。

上記の例では母が子の名義で一生懸命お金を残していたケースで、実際に相続の現場ではよく見かけます。子のためにあえて親は預貯金の存在を知らせていないことがあるのです。親は贈与のつもりでも、子は預貯金口座の存在も知らないため贈与を受けたつもりはありません。

すると、相続税に税務調査が行われると相続人である子は何も知らないため、突然の「追徴課税」に驚くことがあるのです。ご自身による財産調査ではわからなかった名義預金の存在を突然知るケースもあります。

また、名義預金の存在を知っていてもご自身名義の預金のつもりで相続税の申告はあえて行わなかったため、申告漏れを指摘されるケースもあるのです。

相続税の調査とは?税務調査について詳しく解説

相続税の申告を行う際には税務署が正しい申告かどうか「相続税調査(税務調査)」を行います。この調査はどの相続にも行われるものではありません。相続税の調査が行われると高確率で追徴課税が発生すると言われています。そうなる前に、できる限り正しい相続税申告を行うことが大切です。

では、税務署は名義預金をどのような観点から判断しているのでしょうか。

税務署は名義預金をどう見つけている?

名義預金と相続人本人が貯金してきた預貯金は、通帳の表紙を見れば同じ名義であるため差異があるようには見えません。そこで税務署は、名義預金は事実上被相続人の残した相続財産だとみなす際に、以下のような観点から調査を行っています。

1、 その預金の原資はどこからきたのか

相続人の収入とあまりにかけ離れた預貯金額や、毎年定期的に決められた額が入金されている場合は、原資は被相続人からである可能性が高いため名義預金とみなされやすいのです。

2、 預金の管理・運用は誰が行っていたのか

相続人自信が預貯金口座を全く把握していなかった場合は事実上の相続財産とみなされやすくなります。

3、 その財産から生ずる利益の帰属者は誰か

親から子名義の口座への定期的な送金が判明する場合、子の相続財産とみなされます。

4、 名義人と管理・運用する者との関係

例として、子の名義でありながら、遠方の親が利用している地方銀行の口座に開設されている場合は親が名義預金を作り管理していたと疑われやすくなります。

5、 その名義を有することとなった経緯

疑われた口座についてはどのように開設され運用されてきたか質問されやすいのです。特に開設の経緯が分からず預貯金の使用の痕跡もなく、貯蓄だけがなされている場合は疑われやすくなります。

安心の相続税申告を!相続税調査を乗り越えるコツとは?

相続税調査で疑われないように、追徴課税を求められないようにするためには、「名義預金」とみなされないように預貯金を早くから管理していくことが大切です。相続税の申告後に名義預金が発覚してしまうと再支払や延滞税を請求されるリスクがあります。そこで、以下の2つのポイントを確認してみましょう。

正しい贈与で財産を移動しよう

親から子へ、夫から妻へ…大切な財産を上手に残したい場合は「贈与」を選択肢に入れましょう。名義人が素知らぬ預金にならないように、贈与契約書を作成して正しく贈与をすることで相続時に無用な疑いを税務署から受ける心配が減ります。また、贈与を受けたらご自身で使える状態にしておくこともポイントです。自ら引き出せる状態にあることで名義預金とみなされにくくなります。

口座の開設・管理は名義人本人が行うこと

名義預金とみなされるケースの多くは、被相続人が預貯金口座を開設し、そのまま被相続人自身で運用してきた点が問題とされています。名義預金とみなされないためには、口座は本人が自分の意志で開設し、ご自身でしっかりと管理、運用を行うことが大切です。通帳作成時の筆跡もチェックされているので注意しましょう。また、印鑑を親子や夫婦であってもしっかりと分けることも大切です。

まとめ

今回の記事では、名義預金や相続税調査に焦点を当てて詳しく解説しました。本記事をきっかけに親子や夫婦などで名義預金の危険性について話し合ってみてはいかがでしょうか。

来るべき相続に備えて、贈与をもっと深く知りたい、お持ちの名義預金の対処にお悩みの場合は気軽に「ソレイユ相続相談室」にお問い合わせください。

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この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。