更新日/2022年4月4日

相続が始まってから何ヶ月か経過すると、税務署から「お尋ね」という文書が届くことがあります。税務署からの文書となると、初めての方は不安になってしまうかもしれません。この文書は、簡単にいうと「相続税の申告が必要であれば、忘れず申告してくださいね。」という内容が書かれています。

今回は、税務署からのお尋ねが届いても慌てないように、お尋ねの目的や対処方法についてご説明します。

税務署から届くお尋ねの意味

「相続税についてのお尋ね」は、税務署から亡くなった人の相続人に対して送られる文書です。お尋ねには「相続税申告が必要であれば、忘れずに申告してくださいね。」という意味があり、相続税申告を促す目的があります。

しかし、税務署からのお尋ねが届いたからといって、必ず相続税申告が必要になるとは限りません。相続税の計算をして、相続税が発生しないことがわかれば、申告・納税をする必要はないのです。

税務署から届くお尋ねの画像

このお尋ねは、相続税申告の期限前に届くもので、税務調査とは異なります。相続税申告の期限は「相続の開始を知った日から10ヶ月以内」と定められており、税務調査は申告書の提出後か、期限が過ぎた後でなければ行うことができません。

そのため、申告期限までに届くお尋ねは、納税者に自分で申告が必要かどうかをチェックしてもらうための文書なのです。ただ、お尋ねの内容は相続税申告書に書かれている内容とほとんど一緒です。税務署にとっては、申告情報の事前収集と言える内容ですから、慎重に取り扱いましょう。

「お尋ね」以外に税務署から届く文書

「相続についてのお尋ね」だけでなく、相続税に関して税務署から届く文書にはいくつかの種類があります。それぞれ相続税が発生する可能性の高さによって届く文書が異なりますので、確認しておきましょう。

相続税についてのお知らせの画像

【税務署から届く文書の種類】

・相続税申告の簡易判定シート

(相続についてのお尋ね)

・相続税についてのお知らせ

・相続税の申告等についてのご案内

「相続税についてのお知らせ」は、相続税申告が必要である可能性が高い相続人へ送られる文書です。この文書が届いた場合には、できるだけ早く相続手続きや相続税の計算を済ませる必要があります。

また、「相続税申告等についてのご案内」は、「相続税についてのお知らせ」よりも相続税申告の必要性が高い相続人に送られる文書です。正確な相続税の申告・納税が求められますので、早い段階から相続に強い専門家に相談したほうが良いでしょう。

「相続税についてのお知らせ」、「・相続税申告等についてのご案内」についてさらに詳しく知りたい人は、こちらの記事→「税務署からの文書が届いたら」をご覧ください。

税務署は財産情報を知っている

税務署は相続税申告が必要である可能性が高い相続人を選んで、お尋ねなどの文書を送ります。ここで、「なぜ税務署は相続の開始や財産について知っているのか?」と疑問に思う方も多いかと思います。

実は、税務署は法律上や職務上、相続税の課税に関するさまざまな情報を入手しているのです。例えば、税務署が入手できる情報には以下のようなものが挙げられます。

・被相続人の死亡

・不動産(固定資産税)の情報

・預金

・株式

・債務

・相続した財産

・譲渡所得税

例えば、不動産については、死亡情報と同時に固定資産税の情報も市町村から入手しています。 亡くなった人に関して上記の情報が税務署にあれば、そこからおおよその財産額を推定し、税務署の判断でお尋ね等が送られてくる可能性があるのです。

税務署からお尋ねが届いたら

税務署から「相続税についてのお尋ね」が届いたら、できる限り税務署へ回答を提出しましょう。相続税についてのお尋ねは、相続税申告が必要かを判断する簡易シートになっています。そのシートに、財産額などの情報を書き込んでいくことで、相続税の計算をすることができるのです。

ただし、相続税についてのお尋ねは提出の義務はありません。お尋ねはあくまでも相続税申告を促すためのものであり、記載して提出する必要はないのです。

それでも、お尋ねが届いたら回答を提出する方が良いでしょう。お尋ねを無視すると、税務署に目をつけられてしまう可能性があります。また、相続税がかからない場合でも、念のためその旨を伝えるためにも回答を提出することをお勧めします。

お尋ねを提出しないとどうなるのか

お尋ねを提出しなくてもペナルティはありません。しかし、税務署は相続税がかかる可能性があると判断してお尋ねを送ってくるわけです。そのため、お尋ねを無視すると、税務署から「何か隠しているかもしれない。」と、税務調査の対象にされてしまう可能性があります。

税務調査では、税務署の職員が相続人の自宅などを訪問し、どこにどのような財産を持っているかを調査します。税務調査当日はできる限り相続人全員の立ち会いが求められ、細かく調査されるため、心身ともに負担の大きい作業となります。

また、国税庁の発表によると、税務調査を行った場合の8割以上で申告漏れが発覚しています。税務調査が入ると、ほとんどの場合で追加課税がされているということです。

税務署から怪しまれないためにも、お尋ねが届いたら正確に回答して提出することをお勧めします。

お尋ねにいい加減な数字を書いたらどうなるのか

税務署も、独自の情報から判断してお尋ねを送って要るはずですから、回答と大きな食い違いがあると税務調査の対象になる可能性があります。そのため、お尋ねには正確な情報を記載する必要があります。

記入方法がわからない場合には、税務署に問い合わせて記入方法を教えてもらうか、相続税に詳しい税理士に相談するのが良いでしょう。特に、名義預金や財産の所有者がわからない状態の財産がある場合には、税理士へ相談することをお勧めします。税務署では教えてくれない節税方法などのアドバイスをもらうこともできます。

また、相続税申告期限後にお尋ねが届いたり、お尋ねと一緒に申告書が届けられた場合があります。この場合には、税務署がかなりの確度で申告が必要であると判断していると考えられます。

正確でスムーズな申告が求められますので、早いうちに税理士へ相談しましょう。

相続税申告の期限は守りましょう

お尋ねを提出したからと言って、相続税申告の必要がなくなったり、期限が延長されたりすることはありません。お尋ねを提出してもしなくても、相続税申告の期限は「相続の発生を知ってから10ヶ月以内」です。

お尋ねの提出は義務ではないため、提出しなかったり提出が遅れたりしてもペナルティが発生することはありません。しかし、相続税申告書の提出が必要であるにもかかわらず提出を怠ったり、期限内に提出が間に合わなかったりすると、ペナルティが課される可能性があるため注意が必要です。

例えば、正当な理由なく相続税申告を期限内に行わなかった場合のペナルティとして、「無申告加算税」があります。期限後に自分で申告した場合には納税額の5%、税務調査により申告していないことが明らかになった後に申告した場合には納税額の15%が課税されます。なお、税額が50万円を超える場合、超える部分については20%となります。

そのほかにも、納税が遅れた場合に課税される「延滞税」や、申告が相続税額が少なかった場合に課税される「過少申告加算税」、財産の隠蔽など意図的に申告しなかった場合に課税される「重加算税」などもあります。 相続税申告を期限内に正確に行うためには、スピーディな税額計算や申告書の作成が求められます。相続に関して不安がある方は、早いうちに相続税に詳しい税理士に相談することをお勧めします。

まとめ

今回は、税務署からお尋ねが届いた場合の対処法についてご説明しました。お尋ねは税務署が何らかの理由があって送ってきた文書ですから、早めに対処した方が良いでしょう。

お尋ねが届いたら、税務署へ提出する前にまずは相続に詳しい税理士に相談することをお勧めします。

ソレイユ相続相談室では、豊富な実務経験のある税理士があなたに合った節税対策や相続税申告を行っております。

相続税申告にお困りのお客様は、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。