更新日/2022年6月3日

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相続を放棄した配偶者が受け取った死亡保険金に税金はかかる?の記事入り手を重ねる人たち

「亡くなった夫には借金が多かったので相続放棄をしたいけれど、相続放棄をすると死亡保険金は受け取れなくなるの?」

このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

相続放棄とは、亡くなった人の財産を一切受け取らない相続方法です。ですから、相続放棄をすると、自分が受取人になっている死亡保険金までも受け取ることができなくなると思っている方も多いようです。

そこで、この記事では、相続放棄をしても死亡保険金は受け取ることができるのかについてお答えします。さらに、死亡保険金にかかる税金や、亡くなった人の配偶者が使える特例についてもご説明していきます。

【この記事を読んでわかること】

・相続放棄をしても死亡保険金を受け取ることができるのか

・相続放棄をしても死亡保険金の非課税枠が使えるのか

・受け取った死亡保険金にかかる相続税の計算方法

・死亡保険金にかかる税金を抑える「配偶者の税額軽減」

相続放棄をしても死亡保険金は受け取れる?

結論から言うと、亡くなった人の相続を放棄したとしても、自分が受取人に指定されている死亡保険金であれば受け取ることができます

これは、死亡保険金が通常の相続財産ではなく、保険金受取人の固有財産となるからです。通常の財産とは、亡くなった人が持っていた預金や不動産などの財産のことをいいます。

ただし、死亡保険金は民法上、通常の相続財産には含まれませんが、税法上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となる財産です。つまり、受け取った死亡保険金にも相続税はかかるということです。

・死亡保険金に課税される税金には種類がある?

ところで、死亡保険金には保険の契約形態によって、課税される税金が異なることはご存知でしょうか? 死亡保険金に課税される税金には、相続税のほかにも贈与税や所得税があります。それぞれ、どのような契約形態の場合に課税されるのでしょうか。

(画像)相続を放棄した配偶者が受け取った死亡保険金に税金はかかる記事入り保険料と受取人に関するイラスト図

受け取った死亡保険金に相続税がかかるのは、「保険料の負担者=被保険者」となるケースです。例えば、被保険者である夫が保険料の支払いも行なっていた場合で、夫が亡くなった時の死亡保険金の受取人が妻に指定されていたとすると、死亡保険金は「相続税」の課税対象となります。また、保険料の負担者=保険金の受取人となる場合では、死亡保険金に「所得税」が課税されます。

この記事で問題となるのは、死亡保険金に「相続税」が課税されるケースです。自分が受け取る死亡保険金はどの税金の対象となるのか、今一度ご確認ください。

・【事例】夫の相続放棄をしたAさん

相続放棄をした場合としない場合では、受け取った死亡保険金にかかる相続税の計算方法が異なります。ここでは、相続放棄をして死亡保険金を受け取ったAさんの事例をご紹介します。

Aさん(60歳)は、2ヶ月前に病気がちだった夫を亡くし、長男と一緒に夫の遺品整理をしています。Aさんの夫は個人事業をしていましたが、ここ数年で売り上げが落ちているようだったので、借金があるかもしれないと、Aさんは夫の財産を細かく調べることにしました。案の定、夫には十分な預金財産がなく、借金を多く抱えていることがわかり、Aさんは「相続放棄」を選択しようかと悩んでいました。

しかし、夫は生前にAさんを受取人にした死亡保険をかけており、Aさんは5,000万円の死亡保険金を受け取ることができたのです。Aさんは相続放棄をしても死亡保険金を受け取ることができるのか、さらに受け取った死亡保険金に相続税がかかるのかが心配になり、相続税に詳しい税理士に相談することにしました。

※事例を簡略化するために、「相続税の基礎控除」については考慮していません。

(画像)相続を放棄した配偶者が受け取った死亡保険金に税金はかかる記事入り保険料と受取人の関係イラスト図

税理士「相続放棄をしても、死亡保険金を受け取ることができます。ただし、相続放棄をした人が受け取る死亡保険金には、通常よりも多くの相続税がかかる場合があるので注意が必要です。」

Aさん「相続税が多くかかる、ってどういうことですか?」

税理士「通常、死亡保険金には500万円×法定相続人の数で計算できる相続税の非課税額があります。Aさんの場合は、法定相続人がAさんと長男の2人なので、500万円×2人=1,000万円ですね。受け取った死亡保険金からこの非課税額を差し引いた金額(5,000万円−1,000万円=4,000万円)に対して相続税がかかるようになっているのです。」

Aさん「法定相続人が多いほど、相続税が安くなるんですね。」

税理士「はい。しかし、Aさんの場合は相続放棄をしているため、初めから相続人ではなかったことになります。そのため、相続税の非課税枠を使うことができないのです。」

Aさん「ということは…私が受け取った死亡保険金5,000万円の全額に対して相続税がかかることになる、ということですか?」

税理士「そうなります。」

Aさん「この死亡保険金にかかる税金をなんとか安くする方法はないのでしょうか?」

税理士「それについては、後ほどご説明しますね。」

死亡保険金にかかる相続税を安く抑える特例

相続放棄をしたAさんが受け取った死亡保険金には、相続税の非課税枠を使うことができませんでした。しかし、亡くなった人の配偶者であるAさんであれば、相続税を安く抑える「配偶者の税額軽減」を利用することができるのです。

・「配偶者の税額軽減」ってなに?

配偶者の税額軽減とは、簡単にいうと、亡くなった人の配偶者が相続や遺贈により取得した財産額のうち、1億6,000万円または配偶者の法定相続分のどちらか多い方までであれば、相続税がかからないという制度です。

例えば、合計で8,000万円の財産を持った夫が、妻と2人の子を残して亡くなったとします。この場合、妻の法定相続分は2分の1(4000万円)です。

配偶者の税額軽減では、1億6,000万円もしくは妻の法定相続分(4000万円)のいずれか多い方までは相続税がかかりません。つまり、実際の妻の相続分に関わらず、1億6,000万円までは非課税で相続することができるのです。

仮に、妻が夫の財産8,000万円を全て相続したとしても、1億6,000万円を超えないため、相続税はゼロとなります。

・相続放棄をしても配偶者の税額軽減を利用できるのか?

相続放棄をした配偶者でも、受け取った死亡保険金に「配偶者の税額軽減」を利用することができます。税法上、相続人でない人が死亡保険金を受け取った場合には、遺贈によって取得したものとみなされます。遺贈とは、遺言によって相続人以外の特定の人や団体に財産を贈ることをいいます。相続放棄をした配偶者が受け取る死亡保険金は、配偶者の税額軽減の適用を受ける「配偶者が相続または遺贈により取得した財産」に当たるため、相続放棄をしたとしても配偶者の税額軽減を利用することができるのです。

つまり、先ほどのAさんの事例でも、受け取った死亡保険金5,000万円に配偶者の税額軽減を利用することができます。

5,000万円は1億6,000万円よりも少ないため、配偶者の税額軽減を利用することで、相続税ゼロで死亡保険金を受け取ることができるのです。

死亡保険金に配偶者の税額軽減を利用する場合の手続き

配偶者の税額軽減を利用する場合、たとえ相続税がゼロになったとしても、必ず相続税申告が必要になります。相続税申告には、相続があったことを知ってから10ヶ月以内という期限があります。この期限を過ぎてしまうと、配偶者の税額軽減を利用することができなくなってしまいますので、余裕を持った相続税申告が大切です。

相続放棄をして受け取った死亡保険金に配偶者の税額軽減を利用する場合は、税務署へ主に以下の書類を提出します。

  ・税額軽減の明細を記載した相続税申告書

  ・亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本

  ・遺言書の写しや遺産分割協議書の写し(ある場合のみ)

  ・死亡保険金を受け取ったことを証明する書類

  ・相続人全員の印鑑証明書

相続する財産や相続人によって、必要となる書類が異なるケースがありますので、詳しくはお近くの税務署か相続税申告に詳しい専門家にご相談ください。

また、配偶者の税額軽減を利用する場合は、適用要件や注意するポイントがあります。詳しくはこちらの記事でご説明していますので、ぜひご覧ください。

→ソレイユ通信Vol.8 配偶者の税額軽減って本当に有利?

まとめ

今回は、相続放棄をしても死亡保険金を受け取ることができるのか、受け取った死亡保険金にかかる税金の計算方法などをご説明しました。

相続放棄をしたとしても死亡保険金は受け取ることができるほか、配偶者であれば「配偶者の税額軽減」を利用して税金を安く抑えることも可能です。そのため、節税対策として配偶者に財産を多く渡す方法を取る方も増えてきました。しかし、この節税対策はデメリットも多くあります。

節税を見越した生前対策を行う場合は、相続税に詳しい税理士に相談することをお勧めします。

「 ソレイユ相続相談室」では、実務経験の豊富な税理士があなたに合った節税対策の提案を行なっております。節税対策をご検討のお客様は、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。