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遺産分割協議書が必要な場合と書き方

遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった人)の財産について「誰が、何を、どのくらい相続するか」を話し合いで決めることです。この遺産分割協議で相続人全員の意見がまとまり、協議が整ったら、「遺産分割協議書」を作成する必要があります。
今回の記事では、遺産分割協議書が必要な場合やその書き方について詳しくご説明いたします。

 

 (目次)

1. 遺産分割協議書が必要な場合

2. 遺産分割協議はいつ始めるべきか

3. 遺産分割協議書の書き方

4. 遺産分割協議書を作成する際の注意点

5. 遺産分割協議書の完成後にやること

5. 遺産分割協議書がまとまらなかったら

6. 相続手続きを専門家に依頼する場合の費用

 

 

 遺産分割協議書が必要な場合

相続が発生したからといって、必ずしも遺産分割協議書が必要になるわけではありません。

では、どのようなケースで遺産分割協議が必要になるのでしょうか?

 

 

ケース① 遺言がない場合

 

遺言とは、被相続人が遺す最後の手紙のことです。

主に自分の財産を誰に相続させたいかについて記載されており、例えば、遺言に「私の所有する土地を長男に相続させる」と記載があった場合は、その内容通りに財産を相続することになります。

遺言によってすべての財産の分割が指定されていたら、遺産分割協議は必要ありません。

 

ただし、遺言の有効性については十分注意しましょう。見つかった遺言に日付の記載がなかったり押印がなかったりすると、要件不備で遺言が無効になってしまう可能性があります。遺言が無効だった場合は、遺産分割協議が必要になります。

 

 

ケース② 家族信託がない場合

 

家族信託とは、自分の老後や死後に備えて、自分の所有している財産を信頼できる家族に預けることです。

 

家族信託は遺言とは異なり、本人が生きているうちに、その財産の名義を受託者(財産を託された人)に移すことができるのです。また、本人が亡くなった後も引き続き受託者が財産を管理することができますので、遺言よりも柔軟に財産の承継をすることができます。

 

したがって、本人が亡くなったとしても、家族信託により受託者に名義が変更されている財産に関しては、遺産分割協議書を作成する必要はありません。

 

 

ケース③ 遺言や家族信託に指定のない財産がある場合

 

遺言や家族信託の対象になっていない財産を相続する場合は、遺産分割協議書を作成しなければなりません。

 

例えば、預金2000万円と自宅を所有しているAさんの遺言に「長男に預金2000万円を相続させる」とだけ書いてあり、自宅に関する記載は一切ない場合は、自宅の相続に関しての遺産分割協議を行う必要があります。

また、例えば、遺言作成時に記載された自宅を買い替えてしまったような場合や遺言作成後に財産を取得したような場合に、遺言を書き直していなければ記載されていない財産について遺産分割協議を行います。

 

このように、遺言や家族信託がされていたとしても、その中に指定されていない財産がある場合は、遺産分割協議書が必要になります。

 

参考記事 「こんな遺言はどうなるの?」

👉1-3 あげる予定の財産を売ったり使ったりして無くしてしまった場合

 

 

 

 遺産分割協議はいつ始めるべきか

相続が始まると、遺産分割協議だけでなく、相続人の調査や不動産の名義変更などの様々な相続手続きをしなければなりません。

 

正確に手続きが行われなかったり期限に遅れたりすると、スムーズな相続ができず、家族間で争いが発生してしまうこともあります。

 

また、相続手続きをする機関は法務局や税務署、金融機関などばらばらで、1つの手続きに長い時間がかかるものが多いのです。

 

相続手続きの中には、遺産分割協議書がなければできないものがありますので、相続が始まったらできるだけ早く遺産分割協議を行いましょう。

 

 

① 遺産分割協議書が必要な相続手続き

 

相続財産の名義変更を行う際には、遺産分割協議書が必要になることがあります。名義変更が必要な相続財産の例として挙げられるのは、不動産や車、預貯金、株などです。

もし、遺産分割協議書の提出をせずに名義変更の手続きができるとなると、相続人の1人が勝手に名義変更をしてしまい、この後のトラブルにつながる可能性があります。

相続人全員の合意のもと作成された遺産分割協議書を提出することによって、誰が何を相続するかを証明することができ、トラブルの防止につながるのです。

 

 

② 遺産分割協議の準備

 

遺産分割協議の成立には相続人全員の合意が必要になるため、できるだけ一度の話し合いで全ての相続財産の分割を決定しておきたいと考える人が多いでしょう。

そのため、遺産分割協議をスタートする前に、被相続人にどのような財産があるかを調査する必要があります。不動産や預貯金、株式、車など、被相続人の財産を隅々まで調査し、財産目録を作成しましょう。

 

まずは、不動産の調査方法についてご説明します。被相続人が所有している不動産がある市区町村役場で「固定資産税評価証明書」や「名寄台帳」を申請し、登記簿を取得しましょう。登記簿には、当該不動産の正しい所在や地番などが記載されています。

 

次に、預貯金の調査方法です。被相続人が取引していたと思われる金融機関に問い合わせをし、所定の手続きをすることで、口座の残高がいくらあるかを確認することができます。また、相続人が把握していない口座も出てくるおそれがありますので、被相続人の机や棚などに銀行名の入ったものがないかをチェックしておきましょう。

株式などの有価証券の調査は、自宅に届く郵便物で調査することができます。例えば、株式であれば残高通知や取引案内、国債であれば証券なども考えられます。

 

被相続人の所有していた財産を隅々まで調査し、特定できる資料を準備しておくことで、スムーズな遺産分割協議の実現につながります。

 

 

 遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議で相続人全員の合意が得られた場合は、遺産分割協議書を作成します。

ここからは、簡単な事例を挙げて書き方を解説していきます。

 

亡くなったAさんは、現在住んでいる家とその土地、2000万円の預貯金、〇〇株式会社の株式1000株を所有していました。また、Aさんには妻と長男、次男の2人の子供がいます。

遺産分割協議で、妻が家とその土地を、長男が〇〇株式会社の株式1000株、次男が預貯金2000万円を相続することが決まりました。この場合、遺産分割協議書にはどのように記載すればよいでしょうか?

 

一般的に、遺産分割協議書の項目は相続人ごとに書きます。上記の例で遺産分割協議書を書いてみましょう。

 

1.下記の不動産については、妻〇〇が相続する

①土地

所在: 東京都〇〇区〇〇

地番: 〇〇番〇

地目: 宅地

地積: 〇〇.〇〇平方メートル

 

②建物

所在: 東京都〇〇区〇〇

家屋番号: 〇〇番〇

種類: 居宅

構造: 木造瓦葺2階建て

床面積: 1階部分〇〇平方メートル

2階部分〇〇平方メートル

 

2.下記の有価証券については、長男〇〇が相続する

〇〇証券会社〇〇支店

口座番号〇〇〇〇

〇〇株式会社 1000株

 

3.下記の預貯金については、次男〇〇が相続する

〇〇銀行〇〇支店

普通預金 口座番号〇〇〇〇

口座名義人 〇〇〇

 

遺産分割協議書は、相続手続きに必要な書面です。

誰が、何を、どのくらい」相続するかをしっかりと明記することが大切です。

 

 

 遺産分割協議書を作成する際の注意点

遺産分割協議書を作成するとき、具体的にどのような点を注意すればよいでしょうか?

以下では、遺産分割協議書を書く際の注意点をまとめてご紹介します。

 

 

注意点① パソコンで作成することができる

 

遺産分割協議書の様式には特に決まりはありません。そのため、手書きだけでなくパソコンで作成することも可能です。

特に、被相続人に財産が多い場合や相続人が多い場合では、書く内容も膨大になりますので、時間と労力の削減のためにも、遺産分割協議書はパソコンで作成することをおすすめします。

 

ただし、本文をパソコンで作成したとしても、相続人の署名に関しては自署で行いましょう。署名をパソコンで記入してしまうと、後になって相続人から「私は署名していない」と言われる恐れがあるからです。

そうなると、遺産分割協議書の証明力が低くなってしまいますので、相続人の署名は自署で行うことをおすすめします

 

 

注意点② 財産ごとの記載方法

 

実際に財産の相続を受けるためには、遺産分割協議書を使って名義変更などの相続手続きをする必要があります。

そのため、遺産分割協議書には各種相続手続きを行うために必要な情報が記載されていなければなりません。

必要な情報は財産によって違いますので、以下で説明します。

 

【不動産】

不動産を表記するときは、「不動産全部事項証明書」に記載されている表題部の部分を正確に書き写します。

土地なら所在、地番、地目、地積、建物の場合は、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を書きます。

【預貯金】

不動産を表記するときは預貯金について表記するときは、預貯金の口座が特定できるように銀行名、支店名、口座の種類、口座番号、名義人の名前を書きます。

口座の残高は書かないのが一般的です。

【株式】

株式などの有価証券について記載するときは、証券会社名、発行会社名、株式数を証券会社からの通知などを参考にしながら正確に書きます。

財産の情報を正確に記載することで、相続人同士のトラブルを防ぐことができ、相続手続きの円滑化にもつながります。

遺産分割協議書を作成する前に、財産に関する情報が記載されている資料を準備しておきましょう。

 

財産の情報を正確に記載することで、相続人同士のトラブルを防ぐことができ、相続手続きの円滑化にもつながります。

遺産分割協議書を作成する前に、財産に関する情報が記載されている資料を準備しておきましょう。

 

 

注意点③ もめやすい遺産分割

 

みなさんは、相続争いをテーマにしたテレビドラマを見たことがあるでしょうか?

ドラマの中では、資産家の遺した財産をめぐって家族同士で争うことが多いため、一般的には「相続の問題はお金持ちの家しか関係ない」と思っている方が多いと思います。

 

しかし、実は遺産分割協議で争いになるケースは、財産が1000万円以下の場合が3割、財産が5000万円以下の場合が7割となっており、財産が少ない家庭の方が争いになりやすいことが分かっています。

 

最近、日本で多いのは「相続人は妻と子供、遺された財産はマイホームだけ」といったケースです。

しかし、このような財産構成では、子供が2人以上いた場合に公平な分割ができず、相続争いに発展してしまう可能性が高いのです。

 

例えば、長男がマイホームを相続した場合、次男が相続できる財産は無くなってしまいます。

もし、公平な分割にこだわるのであれば、マイホームを売ってそのお金を相続人で分け合うくらいしか解決策はありません。

 

この他にも様々な争いの火種が考えられる中で、遺す側が出来ることは「遺言の作成」です。

 

遺言でマイホームを長男に相続させ、次男が不公平な思いをしないように、死亡保険金をかけるなどの準備をしておく方法もあります。

遺言によって誰に何を相続させたいかを伝えておくことで、相続人同士の争いを防ぐことができるのです。

 

 

 

 遺産分割協議書の完成後にやること

遺産分割協議書を作成するとき、具体的にどのような点を注意すればよいでしょうか?

以下では、遺産分割協議書を書く際の注意点をまとめてご紹介します。

 

 

① 財産ごとの相続手続き

 

遺産分割協議書が必要な相続手続きは、主に不動産や預貯金、株式の名義変更と、預貯金の払い戻しです。

手続きのやり方は以下の通りです。

 

【不動産の名義変更】

不動産の名義変更は法務局で行います。

 

手続きに必要な書類は状況によって違いますが、遺産分割協議書と被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、当該不動産の固定資産税評価証明書などを提出して登記申請をします。

 

不動産の名義変更にはいつまでという期限はありませんが、後回しにしておくと売却できなかったり次の相続が複雑になったりと、様々な問題が発生します。もし、自分で行うのが不安な方は、専門家に依頼することをおすすめします。

 

 

【預貯金の名義変更・払戻し】

預貯金口座は、口座の名義人が亡くなったことが分かった時点で凍結されてしまいます。口座が凍結すると、相続人が預貯金を引き出すことができなくなりますので、各金融機関で名義変更か払戻しの手続きが必要です。

 

手続きに必要な書類は金融機関によって違いますが、一般的には遺産分割協議書、払戻し請求書、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、預金通帳などを提出して行います。

 

 

【株式の名義変更】

株式の名義変更は、取引をしている証券会社で行います。

証券会社によって提出する書類は異なりますが、遺産分割協議書と証券会社が指定する届出書、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書などが必要になります。

相続人が証券会社に口座を持っていない場合は、新しく口座の開設が必要です。

 

 

 

② 遺産分割協議書は誰が持つべきか

 

遺産分割協議書は、1通だけ作成して相続人の中の誰かが保管しても構いません。

しかし、偽造や紛失などのリスクがあり、新たに相続財産が見つかった場合は、また1から作り直す必要があります。

そのようなことを防ぐためにも、各相続人が1通ずつ遺産分割協議書を保管しておくことをおすすめします。

 

 

 遺産分割協議書がまとまらなかったら

もし、遺産分割協議で争いが発生した場合や、話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に対して「遺産分割調停」を申し立てることができます。遺産分割調停は、調停委員が相続人の間に入って話を進めてくれるので、話し合いがまとまりやすくなります。

遺産分割調停でも話し合いがまとまらない場合は「遺産分割審判」の手続きが行われます。遺産分割審判は、これまでの協議や調停とは違い、話し合いではありません。これまでの話し合いや調査の内容をもとに、裁判官が財産を分割します。

裁判所の判断には強制力がありますので、相続人は必ず従わなければなりません。

 

 

 

 相続手続きを専門家に依頼する場合の費用

財産の特定や名義変更など、相続手続きには複雑なものが多いため、個人で行おうとすると手間と時間がかかってしまいます。

円滑な相続のためには、手続きを専門家に任せることも有意義な選択と言えます。

 

では、誰に相続手続きを依頼すればよいでしょうか?ここでは、各専門家に依頼した場合の費用の相場をご紹介します。

 

【弁護士】

弁護士は、相続争いに発展してしまった場合に依頼を検討するべき専門家です。

相続争いが起きていると、手続きが完了するまでに時間がかかることが多いため、他の士業よりも費用が高いことがほとんどです。

遺産額や案件ごとの経済利益の額によって報酬額に幅がありますが、50万円からとなることが多いようです。

 

【司法書士】

司法書士は不動産の名義変更が代行できるため、不動産の名義変更については司法書士へ依頼をすると便利です。

。相続手続きの報酬を10万円以下にしているところもあるようですが、20万円前後からとしているところが多く見受けられます。

もちろん、遺産額等によって違ってきます。これに不動産登記費用が別に必要で、不動産によっても異なりますが、名義変更1件につき5〜10万円ほどと言われています。

 

【税理士】

税理士は、相続税に関する相談ができますので、主に相続税が発生する相続や二次相続が心配な場合に依頼をすると便利です。

報酬額は財産額の0.5~1%とするところが多いようです。なお税理士は登録すると行政書士業務ができるので、税金が発生しない相続手続きも気軽に依頼することができます。

また、遺産分割協議書を作成する際は、税務上問題がないか税理士のチェックがあると安心です。(弁護士も税理士登録ができますが専門にされている先生は多くありません)

 

【行政書士】

行政書士には、相続人調査から遺産分割協議書作成、名義変更(不動産を除く)などの遺産整理業務を依頼することができます。

報酬は司法書士と同等か低い傾向がありますが、10万円前後からとなることが多いようです。

また、行政書士には、自動車の名義変更も依頼することが可能です。

 

【銀行】

銀行は、主に相続コンサルティング業務ができる専門家です。

しかし、銀行に依頼したとしても、実際に手続きを行うのは下請の司法書士や税理士ですので、価格が士業に依頼する場合の最低でも2~3倍とかなり高めに設定されています。

 

 

 

ソレイユ相続相談室では、相続コーディネーター、相続専門の税理士と行政書士が依頼を受けるため、リーズナブルな価格で相続全般の業務を依頼することができます。

 

相続で困ったら、ソレイユ相続相談室にご相談ください。

 

 

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