遺言には何が書けるのか(遺言事項)
公開日2021年8月5日
最近「終活」の大切さを理解し、相続に向き合う心の準備と対策を考える人が増えています。
特に、財産の分け方について自分の意思を明らかにできる「遺言」への関心が高まっているようです。
しかし、いざ遺言を書こうと紙を目の前にすると「何を書けば良いか分からない」「何が書けて、何が書けないのかが分からない」と悩んでしまう人も少なくないようです。
基本的には何を書いてもかまわないのですが、実は、遺言できる内容は法律で決められていて、遺言書の内容がすべて有効というわけではありません。
今回は、皆さんに迷いなく遺言を書いていただくために、遺言に記載できる遺言事項について、ご説明していきます。
15項目の遺言事項
遺言に記載することができる遺言事項は
①相続に関すること(遺産の分割にかかわることについて意思を伝える)
②身分に関すること(相続人や相続と関わる人を指定する)
③財産の処分に関すること(財産の処分をどのようにするか意思を伝える)
で、それぞれの事項の合計が15項目あります。
ここでは、1つずつ順番にご説明していきます。
①相続に関すること
・相続人の廃除および廃除の取り消し
相続人の廃除とは、遺言者に対して虐待や重大な侮辱を加えていた人の相続権を剥奪することです。相続人の廃除は生前に家庭裁判所で申立てをするか、遺言に記載するかのどちらかでのみ行うことができます。「生前に廃除の申立てをしているが、気が変わったので廃除を取り消したい」という場合は、遺言で廃除の取り消しをすることができます。
・相続分の指定
相続分の指定とは、「財産を誰に何割相続させたいか」を決めることです。相続分を指定する場合は、どの財産なのかを明確にするために、不動産の登記簿謄本や銀行口座の通帳などを準備し、財産の情報を詳しく記載しましょう。
・遺産分割方法の指定
遺産分割方法の指定とは「預貯金Aは長男に、預貯金Bは次男に相続させる」というように、具体的に財産を指定して相続させることです。この場合も、財産の情報を詳しく記載しておきましょう。
・遺産分割の禁止
また、遺言では遺産分割を禁止することもできます。禁止できる期間は5年までと定められておりますので、5年を超えない範囲で禁止の指定をしてください。
・特別受益の持ち戻し免除
特別受益の持ち戻しとは、亡くなった人から生前に財産をもらっていた場合に、その財産額を相続財産に加えて、各相続人の相続分を計算することです。これは、相続人の中に亡くなった人から多額の贈与を受けていた人がいた場合に、不公平な遺産分割になってしまうのを防ぐためのものです。遺言で何の指定もないと、特別受益は相続財産に持ち戻されることになります。
しかし、遺言では特別受益の持ち戻しを免除した遺産分割を指定することができます。
・共同相続人の担保責任に関する意思表示
これは、相続人が受け取った遺産に欠陥があり、亡くなった人の想像よりも価値が低かった場合に、他の相続人がその差分を補填するべきかどうかを指定することです。遺言では、「誰が、どのくらい補填するのか」を指定することができます。
・遺留分侵害額請求の方法
遺留分とは、一定の相続人にのみ認められている最低限の相続分です。相続できる遺産が遺留分よりも少なかった場合、他の遺贈を受けた人に対して「遺留分侵害額請求」をして、足りない分を金銭でもらうことができるのです。この遺留分を誰に対してするのか、負担する人の順番を遺言によって指定しておくことができます。
ただし、この請求する順番は、遺贈された人に対してとなります。
例えば、生前に贈与された人と相続が起きて遺贈された人がいた場合「遺贈を受けた人より先に贈与を受けた人に対して遺留分を請求するように」という順番は指定できないことになります。
遺留分についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
②身分に関すること
・子の認知
子の認知も遺言ですることができます。認知は子の父親が「この人は自分の子である」と認めることで、認知をすることによって親子関係が発生します。認知をされた子は法定相続人になりますので、遺産分割で親族と争いにならないか、注意が必要です。
・未成年後見人・未成年後見監督者の指定
相続人の中に未成年の人がおり、親権を行う人もいない場合は、その未成年者の後見人、または後見監督者を遺言で指定しておくことができます。
・遺言執行者の指定・委託
遺言執行者とは、亡くなった人の遺言内容を確実に実現するために、遺産の管理や相続手続きを行う人のことです。遺言によって必ず指定しなければならないわけではありませんが、遺言執行者を指定しておくことで円滑で円満な相続を実現することができます。
ソレイユ相続相談では「遺言執行者業務」を行っております。遺言の作成を検討している方は、ぜひ一度ご相談ください。
・祭祀承継者の指定
祭祀承継者とは、お墓や仏壇・仏具などの、いわゆる「祭祀財産」を承継する人のことです。祭祀承継者はその家や地域の慣習によって選ばれますが、遺言で指定があればその内容が優先されます。相続が始まってから誰が承継するのかで争いになるよりは、遺言で決めた方が良いでしょう。
③財産の処分に関すること
・包括遺贈・特定遺贈
遺贈とは、遺言によって相続人以外の人に財産を渡すことです。その中でも、「財産の2分の1を贈与する」などのように割合で遺贈するものを包括遺贈、「土地Aを贈与する」のように財産を指定しているものを特定遺贈といいます。
・信託の設定
信託とは、信頼できる人に自分の財産を移転し、管理や処分などを行わせる制度です。認知症などで不動産の売却などができなくなってしまう前に、財産を他の人に託して適切に管理してもらうことができます。
最近では、財産を家族に託す「家族信託」が注目されていますが、遺言で指定するケースは少ないです。
・生命保険金受取人の変更
遺言では生命保険金の受取人を指定したり、変更したりすることが可能です。生命保険金は、人が亡くなったときに保険会社から支払われるお金のことです。
遺言によって受取人の指定・変更ができるのは亡くなった人自らが保険料の負担をしている場合のみですので、ご注意ください。
生命保険金と相続税の関係について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
・寄付、一般財団法人の設立
生前お世話になった人や団体に財産を寄付することができ、「どこに、何を、どのくらい寄付したいか」を遺言でしていすることができます。また、自分の意思で財団法人を作ることもできます。
遺言には「付言」を書きましょう
付言は、「なぜそのような遺言内容になったのか」や、「家族に伝えたいメッセージ」などを記す項目です。付言には遺言事項のような法的効力はありませんが、書いておくことで残された家族が相続争いに巻き込まれる可能性を低くすることができます。
例えば、「長男には事業を頑張って欲しいから、事業用資産を多く与えたい」や「争いなく円満に遺産分割をしてほしい」など、自分の気持ちを記しましょう。
ソレイユ財産管理では「遺言書作成サポート」と「遺言執行者業務」を行っております。遺言の作成を検討している方は、ぜひ一度ご相談ください。
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