緊急時の遺言「危急時遺言」とは
公開日2021年8月5日
遺言には、法的に大きく分けて「普通方式」と「特別方式」があります。
通常は「普通方式」の遺言で、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類のいずれかで作成します。
「特別方式」による遺言とは、遺言者が死に瀕しているときなど「普通方式」で遺言書作成が困難なときに認められる遺言の形式で、「危急時遺言」などがあります。
なかなか利用される事例が少ない方法ではありますが、万が一のことを考えて、知識として頭に入れておくと良いでしょう。
今回は、危急時遺言の作成方法について解説していきます。
危急時遺言の要件と作成方法
普通、自筆証書遺言を作成する際は、あらかじめ財産の調査をし、遺言の全文を自分で手書きする必要があります。また、公正証書遺言の場合は、公証人と打ち合わせをし、作成日の予約をしなければなりません。
しかし、遺言者が危険な状態にあり、一般的な方法で遺言を作成している時間がないケースがあります。
そのような場合に利用できるのが「危急時遺言」です。
危急時遺言が認められるのは、以下の要件に当てはまっている人です。
【危急時遺言が認められる要件】
①病気などの理由によって、死亡の危急が迫っていること
②証人が3人以上立ち会うこと
③遺言者が遺言内容を口述し、証人の1人がそれを筆記すること
④証人が筆記した遺言内容が正確なことを確認し、署名捺印すること
要件について1つずつご説明していきます。
要件①病気などの理由によって、死亡の危急が迫っていること
大前提として、危急時遺言が認められるためには、遺言者に死亡の危急が迫っていることが要件となります。例えば、重大な病気や怪我で余命がわずかになってしまい、一般的な遺言方法では遺言をすることができないケースなどです。
ちなみに、「死亡の危急があるかどうか」は、必ずしも医師の判断を受ける必要はなく、遺言者やその関係者が判断しても構いません。
要件②証人が3人以上立ち会うこと
遺言を残す際は、3人以上の証人の立合う必要があります。
ただし、誰でも証人になれるわけではなく、未成年者・相続人になり得る人とその配偶者および直系尊属(父母・祖父母)など、遺言者の利害関係人は証人になることができません。
これは、利害関係人が立ち合いをすると、自分に有利な遺言にするように、遺言者の発言を誘導する恐れがあるからです。このような場合には、遺言の効力が無効になってしまいますので、なるべく利害関係人は遺言の場に居ないようにしましょう。
要件③遺言者が遺言内容を口述し、証人の1人がそれを筆記すること
遺言者は証人の1人に対して遺言の内容を口述します。話せない場合は、通訳者が遺言者の意向を通訳しても構いません。
証人が遺言内容を聞き取ったら、1人の証人がそれを書面に書き記します。
要件④証人が筆記した遺言内容が正確なことを確認し、署名捺印すること
証人の記した遺言内容が正確であることを確認するために、遺言を書いた証人から他の証人に対して、閲覧または読み聞かせを行います。そこで遺言内容に間違いがないことを確認できたら、証人全員がその遺言に署名捺印をして完成です。ただし、遺言者の署名捺印は必要ありません。
危急時遺言を作成したら
先ほどご説明した方法により危急時遺言を作成した場合、遺言の日から20日以内に家庭裁判所で「遺言の確認」をしてもらう必要があります。
確認の申立てができるのは、遺言に立ち会った証人または遺言者の利害関係人のみです。
申立てをされた家庭裁判所は、その遺言が遺言者本人の真意に基づいて作成されたものであるかを調査し、遺言の有効性を判断することになります。
もし、20日以内に家庭裁判所への申立てをしなかった場合や、遺言者の真意であると判断されない場合には、遺言が無効となってしまいますのでご注意ください。
ちなみに、危急時遺言をした人が、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言を作成することができるようになった日から6ヶ月間生きている場合には、危急時遺言は効力を失います。
危急時遺言を作成することになる前に、普通の方式で遺言を残しておくことをお勧めします。
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