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婚姻期間20年以上……、夫婦間贈与の特例を使うメリット・デメリット 

作成日2021年8月17日


 

ひまわりと家のイメージ画像

 

相続税の節税対策として「生前贈与」という方法があります。
その生前贈与の中で、婚姻期間20年以上の夫婦の間での贈与に関して、課税の特例があります。
今回は、この特例をうまく活用しての節税対策について、詳しくご説明いたします。

 

 (目次)

1.婚姻期間20年以上の贈与特例の概要

2.この特例を使った場合の税金上のメリット・デメリット

3.他の法律との関係でも検討しておいた方が良いこと

① 民法で配偶者の居住用財産の持ち戻しが免除されることとの関係

② 配偶者の居住権との関係

③ 家族信託を利用した場合の関係

④ 相続税の配偶者の税額軽減との関係

⑤ 居住用の小規模宅地の特例との関係

4.まとめ

 

 婚姻期間20年以上の贈与特例の概要

 

生前贈与は相続対策を考える時に多くの人が検討する方法です。

 

財産を贈与するともらった人に贈与税がかかります。贈与税の計算は、もらった人の財産額が毎年110万円以内であれば課税されず、110万円を超えると下記の税率で贈与税が課税されます。

 

【一般贈与財産用】(一般税率)

この税率表は、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。

基礎控除後の課税価格の表

 

生前贈与には課税上様々な特例があり、その中でも節税効果が大きいものに「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」があります。

 

この特例は、通称オシドリ贈与と呼ばれたりする特例で、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合に、贈与税の基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除ができる特例です。

 

活用事例

自宅土地建物 所有者 夫 相続税評価額 2100万円 

この自宅を婚姻期間が21年の妻に贈与した場合。

 

妻の贈与税の計算

 

2100万円(1年間の贈与合計)–{110万円+2000万円 (基礎控除+特別控除) = △10万円→0円 

 

従って、この贈与は申告をすれば基礎控除以下なので贈与税はかかりません。

 

 

 この特例を使った場合の税金上のメリット・デメリット

 

  メリット

①贈与税の基礎控除が2000万円増えるので、配偶者への居住用財産の移転を生前に行いたい場合により早く行えるメリットがあります。

 

②また、相続税の計算上、相続開始前3年以内の贈与加算という規定があります。(相続で財産を取得した人が、被相続人から相続開始前3年以内に生前贈与を受けていた場合には、その3年以内の贈与金額を相続財産に加えて相続税を計算しなければならない)

しかし、この婚姻期間20年以上の贈与の特例を使った場合に、その贈与金額はこの3年以内の贈与として相続財産に加える必要はありません。

 

つまり、相続税の対象とはならないというメリットがあります。

 

  デメリット

③居住用財産を相続で取得するより贈与で取得した方が、取得時の下記の税金が高くなるのがデメリットです。

 

    例 居住用の土地建物の取得時の税金と税率

 

登録免許税 登記時に支払う税金

贈与の税率の表1

 

不動産取得税 不動産取得により支払う税金

贈与の税率の表2

 

※上記の税率は現在の税率で特例もあります。

 

 他の法律との関係でも検討しておいた方が良いこと

 

①民法で配偶者の居住用財産の持ち戻しが免除されることとの関係

 

民法には「特別受益」と「持ち戻し」という考え方があります。

 

簡単に言うと、亡くなった人が生前に贈与した財産(特別受益)を、相続時にもし贈与していなかったとすると、その贈与した分も含めていくら財産が残っていたのか再計算して(持ち戻して)財産を配分するという考え方です。

 

ただし、法律が改正され令和元年7月1日以後、婚姻期間が20年以上の夫婦間の居住用財産は持ち戻しの対象とする必要が無くなったので、相続時に再計算する財産から外れた財産とすることが可能です。

 

②配偶者の居住権との関係

 

配偶者居住権とは、令和2年 4月1日以降に発生した相続から新たに認められた権利です。

夫婦の一方が亡くなった場合に,残された配偶者が 亡くなった人が所有していた建物に,亡くなるまで又は一定の期間,無償で 居住することができる権利です。

参考記事はこちら→

 

③家族信託を利用した場合の関係

 

家族信託を利用すると、例えば、夫が妻の老後の生活を、生活の場である住居と生活費と合わせて家族間で信託して管理し守ることができます。

家族信託を使えば、配偶者に適用される下記の税制上の特例も適用できる制度です。

参考記事はこちら→

 

④相続税の配偶者の税額軽減との関係

 

相続税法では、配偶者が相続で取得した財産については、16千万円(又は配偶者の法定相続分)まで相続税がかからないことになっています。

 

財産の全体額によっては節税目的の生前贈与は不要になる可能性もあります。

参考記事はこちら→

 

⑤居住用の小規模宅地の特例との関係

 

相続税法では、相続で配偶者が居住用の宅地を取得した場合に、その宅地の評価額を80%OFFにする小規模宅地の特例があります。

 

つまり、小規模宅地の適用が可能であれば、相続で1億円の評価額の自宅土地も2000万円で相続できる可能性があるということです。

 

生前贈与にこの特例はありません。

参考記事はこちら→

 

 他の法律との関係でも検討しておいた方が良いこと

 

 婚姻期間が20年以上の夫婦間の居住用財産の贈与については、税制上も民法上も配偶者に有利な取扱いがあります。

 

また、税金に限らず、遺された配偶者の余生の心配に対しては、遺言、家族信託等の対策も考えられます。

 

相続と相続税に精通した専門家に相談し、選択できる方法を列挙してもらって自分たち夫婦に一番合った方法を選択することをお勧めします。

 

 

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