特別受益があった場合の未分割の申告について
申告期限までに遺産分割協議が完了せず 未分割のまま申告することになりそう
父の相続が平成2×年1月に発生しました.
遺産分割で相続人A、B、Cの3人の間(配偶者は既に他界し相続人は子供のみ)の意見が合わず、
申告期限の平成2×年11月の申告期限までに遺産分割協議が完了せず未分割のまま申告することになりそうです。
未分割の場合、法定相続割合にて分割したという前提だと思いますが、
相続人の中で生前に父から現金贈与を受け取った者がいます。
この贈与分についてはどのようになりますか?
遺産額は10,000万円
相続人Aへの生前贈与額は1000万円(相続開始の5年前に贈与)
相続人Bへの生前贈与は700万円(相続開始の3年前に贈与)です。
相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立しない場合
相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立しない場合には、「未分割」として申告し、
各相続人が法定相続分どおりに取得したとして計算した相続税額を申告期限までに納付します。
ただ、この場合の分割は民法900条から903条に規定する相続分を指します。
この民法の規定は以下の通りです。
民法900条:法定相続分の規定
民法901条:代襲相続人の規定
民法902条:被相続人による相続分の指定に関する規定
民法903条:被相続人から生前贈与や遺贈を受けたものがいる場合の特別受益者の相続分に関する規定
今回の場合は・・・
ご質問の被相人からその子供である相続人への生前贈与は、民法903条の特別受益に当たりますので、
法定相続分の算定に当たっては考慮することになります。
具体的には未分割の遺産額10,000万円に生前贈与額を持ち戻します。
民法の規定による特別受益は贈与時期がいつであったかを問いません。
また贈与財産の価額は相続開始時における時価となります。
今回のケースでは現金贈与ですので贈与時の時価=相続開始時の時価と考えています、
その結果みなす相続財産額は10,000万円+1000万円+700万円=11,700万円となります。
各相続人の具体的は相続分の価額は下記の通りとなります。
(相続人)(みなす相続財産額)(法定相続分) (特別受益) (具体的な相続分の価額)
A 11,700万円 * 1/3 - 1,000万円 =2,900万円
B 11,700万円 * 1/3 - 700万円 =3,200万円
C 11,700万円 * 1/3 =3,900万円
ただし、相続税上は相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算されますので下記の通りとなります。
相続税の算定の基礎となる相続税の課税価格は以下の通りとなります。
(相続人)(具体的な相続分の価額) 3年以内贈与)(相続税の課税価格)
A 2,900万円 +0 =2,900万円
B 3,200万円 +700万円 =3,900万円
C 3,900万円 +0 =3,900万円
※当記事の内容の一部に誤りがあり平成30年8月18日に訂正させていただきました。
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