老犬ホームオレンジライフ湘南 取材レポート
「老犬ホームオレンジライフ湘南」では、動物関連の事業者と学生を対象に、定期的に「老犬ホーム」に関する見学会を行っています。
見学会のテーマはオレンジライフの運営理念でもある「人も愛犬も最後まで幸せな毎日を」です。
この言葉は、パンフレットの1ページ目にも登場します。
多くの動物の専門家とつながりをもって、老犬介護に悩む方々の選択肢を増やし、多方面からサポートしていくことが見学会の目的の一つでもあります。
代表の堀内理恵さんと愛犬くろたちゃん
飼い主様もわんちゃんも幸せな状態が最後まで続くようにお手伝いをしています。
人気のイベントでいつもすぐに定員に達してしまうのですが、今回は「取材」の名目で、事前に開催情報をキャッチ、堂々と潜入取材させていただきました。
今回の取材レポートでは、「老犬ホームオレンジライフ湘南」さんのことのみならず、見学会の内容も踏まえた、気になる「老犬ホーム」の現状や特徴、選び方などの話題にも触れることができました。
大の愛犬家でもあり、(人の)歯科医師でもある代表の堀内理恵さんの、想いとこだわりのつまった老犬ホーム、老犬介護ステーション「オレンジライフ湘南」(以下、オレンジライフ)をご紹介します。
「老犬ホーム」とは
まず「老犬ホーム」の定義についてですが、「老犬ホーム」という言葉は法律には記載がありません。平成24年に動物取扱業の条例が一部改正になり、その中で第一種動物取扱業の業種に「譲受飼養業」が追加になりました。
譲受飼養業とは、「老犬ホームのように有償で動物を預かって所有権を譲り渡すようなお仕事」と一部の行政のホームページに記載されています。
「譲受飼養」といったらだいたい老犬(老猫)ホームと思って大丈夫です。
逆に「老犬ホーム」というと必ずしも「譲受飼養」なのかというとそうではありません。
所有権を譲り渡されてしまうと『お家に帰る』という選択肢が無くなってしまいます。
私たちは、老犬を取り巻く状況が改善していつかはお家に帰れるようになれるのがベストと考えています。
多くの老犬ホームを謳っている施設は、「保管」の業種の登録は必ず行っていてそこに加えて「譲受飼養」を登録するかどうかでスタンスを決めています。
「老犬ホーム」の現状
ペットに関わっている皆さんは凄く実感されていると思うのですが、1990年以降急激な犬猫の高齢化がすすんでいます。
日本は、人間の高齢化が世界では類を見ないくらい急速に進んでいるのですが、それを上回るスピードで犬猫の寿命は一気に伸びました。
理由として医療の発展やフードの良質化が挙げられます。
あとは飼育する環境が昔は外飼いが多かったが室内で飼育する事が増えたためと考えられます。
家族として迎えたペットと長く暮らせるのは素晴らしい事ですが、急激に高齢化が進んでしまった影響があり、飼育環境が追いつかない人が増えたのも事実です。
オレンジライフでもよくありますが、何代にも渡りわんちゃんと暮らしてきたベテランの飼い主さんほど、今まで飼っていたわんちゃんの寿命を遥かに上回る年齢まで来てしまうと戸惑ってしまう方が多かったように思います。
ただ、ここ最近では「高齢化が進んでいる」という認識が広がっており、以前ほど戸惑う方は減ったように感じています。
2005年あたりは高齢犬の介護自体レアケースであり、この頃に『訪問介護』を行っていたシッターさん自体もかなり少なかったです。
これが数年後には訪問介護の必要性が高くなり、訪問介護を行うペットシッターさんが増えました。2011年頃からは全国に老犬ホームが開設され、その数も急激に増加しました。
更に、ここ最近では人間のサービスに近い老犬の『デイケア』などのサービスも増えてきています。
飼い主にとって”選択肢”が増えたのは喜ばしいことです。
全国の老犬ホームの件数ですが、「老犬ホーム」の定義が難しく、ペットホテルで老犬も受け入れている施設も数に入れるのか、また、老犬ホーム自体も一時期ものすごく数が増えたので、既に廃業しているが検索に出てくるところもあり、あくまでも参考程度に聞いていただきたいのですが…。
当社調べだと、2015年には全国の老犬専門の施設は30数件、翌年には60件以上とおおよそ倍の数が一気に増えました。
そのあと、昨年(2019年)調べた限りでは、だいたい頭打ちになってきた印象です。
高齢のわんちゃん自体は増えているのですが、やはり飼育頭数自体は減少しています。
今後、ビジネス展開として老犬ホームを開業するとなると色々考える事が出てきてしまい、難しいのかなと思います。業界全体で「老犬ホームにはさまざまな使い方があること」を全国の飼い主様に周知していく必要があるでしょう。
老犬ホームは一時期物珍しいという理由で、テレビや雑誌でも取り上げていました。
老犬ホームを利用しようと考えるのは、高齢の飼い主さんが比較的多い印象です。
インターネット等でご自身で調べることや検索するのは困難な方は、テレビや雑誌などの媒体を通して老犬ホームの施設の存在を知ることができるようになり、世間の老犬ホームへの認知度がだいぶ上がったような気がします。
ただ、その事で飼い主様の選択肢が増えたのはとても良い事ですが、まだまだ“姥捨山”のイメージも強いのが事実です。
歯科医として老人ホームでの診療に従事することもありますが、『老犬介護』に関しては人間社会で例えると、だいたい20年程前の感覚が強く残っている印象を受けます。
昔は“育ててくれた親を老人ホームに入れるなんて酷い”と誰しもが思っていました。
でも、今は設備なども充分に整った老人施設を探してくれるお子様に対し、“偉い”という印象に変わってきています。
もちろん、犬を家族として迎え入れる時に「無責任」なのは問題外ですが、専門サービスを上手く利用して無理なく介護を続けているという認識で老犬ホームなどを活用して頂けたらと思っています。
オレンジライフの利用者の中にも「預けていることを伏せておきたい」という方もいます。
「老犬ホーム」を利用することへの印象がもっと向上することを願っています。
「老犬ホーム」に望むこと
以前ニュースでも取り上げられましたが、2009年栃木県のとあるNPO法人が、「死ぬまで面倒を見ます」と謳い、有償で犬猫等の譲り受けをして、ネグレクト(飼育放棄)やそのまま保健所に運んでいたという悲しい事件がありました。施設内は本当に酷い状況で、餌も水も与えずゲージに入れっぱなしという決して許されない事件でした。
今ここまで酷い施設は存在しないと思いたいですが、『老犬ホーム』には様々な特徴があります。
自然の環境下で伸び伸びさせたいといったことや、マッサージやリハビリ等も充実しているところなど飼い主さんの要望が多岐にわたるので、どこが絶対良いというわけではありません。
ただ、施設を利用する上で必ず確認してほしいのは、「いつでも面会が出来る」ということです。これは施設利用を考える皆様にお伝えしています。
「老犬ホームの分類」について
老犬ホームは立地条件で2つのパターンに分かれています。
1つは郊外型。比較的に数としては多く、山の方や自然が多く、鳴き声が気にならない所で開業している施設です。広いドッグラン設備を備えているところが多くとても魅力的です。
また郊外型は都会より場所代がかからないため、低価格を実現出来るのもアピールポイントです。
もう1つは都市型の施設です。
お仕事帰りなども、会いに行けるような街の都市部にあります。
外観や内観も綺麗ですが、ネックポイントはやはり価格は高くなってしまうところです。
ひと月に10万円以上する所もあり、経済的に難しい飼い主さんも多いです。
オレンジライフは、「郊外型」と「都市型」の中間の位置づけですね。
犬の幸せには人とのつながりが欠かせませんので、場所を探す過程でわりとこだわったところは、犬と人がいつでも触れ合える環境にあるという事です。
実際、お預かりしているシニア犬の子達はご近所の人にも可愛がられていて、たとえ飼い主さんと離れて暮らすことになっても、人との触れ合い、社会との繋がりをもてたらというのが、私共のこだわっている部分でもあります。
人間の介護施設の形態に例えると大きく分類して、3種類となります。
まず初めに、介護老人福祉施設いわゆる「老人ホーム」は、介護が必要な方に対し日常のお世話をする場所です。
2番目に「介護老人保健施設」です。
ここは介護が必要プラスリハビリが加わる所で、作業療法士さんや獣医師さんなどが入りリハビリも追加していくような施設です。
3番目は「介護療養型の医療施設」です。簡単にいえば介護が必要な方のための病院です。
これを「老犬」にあてはめてみると、施設の数では1番の形「老犬ホーム」が多いです。
医療は入れず、必要がある場合、近隣の動物病院へかかり、施設内では日々のお世話のみを行うと言った施設になります。
私共も最初はそこからのスタートでしたが、老犬はなんらかの疾患、老化症状を持っている子が大半なので、やっぱり獣医師の先生がいないと決められない事が多く、数年前に施設内に診療施設を開設して、現在は獣医師の先生にも入って頂き、2番の形で運営しています。慢性的な疾患も多く、完全に治癒することが難しい症例も多いですが、日々痛みや苦しみがなく楽しく過ごせるように獣医師の先生にはご尽力いただいています。
オレンジライフを開業したきっかけを教えてください
私共は元々ペット業界にいた訳では無いので、「なぜ老犬ホームを開業」したのかというのはよく聞かれます。
5年前に開設したのですが、その前までは「自分家の子は自分で最後まで面倒を見る」のが当たり前だと思っていました。
それが実際、近所に住んでいる愛犬家の友人の老犬介護を手伝ったことをきっかけに、大きく意識が変わりました。
その愛犬家の友人は、とても“犬との時間”を大切にしていて、ある意味憧れと尊敬を抱いていました。
飼っていたわんちゃんは大型犬でした。高齢が進むにつれ認知症を発症し、夜鳴きが出てきました。
友人はすごく真面目な人だったので、近所からの苦情に耐えられなくなってしまったのです。大型犬の介護ゆえの肉体的な疲労もかなりのものだったでしょう。
途中までは、私自身も手伝っていたのですが、次第に友人は介護うつのような状態になってしまい、手伝う事を拒否されてしまい、全く連絡も取れなくなってしまいました。
そういった出来事を目の当たりにした時に、老犬介護は「全然甘いものではない」、そして「他人事ではない」と感じるようになりました。自分も同じようになってしまう可能性が充分にあるんだと思いました。
やはり今でも想像するだけですごく悲しくなってしまうのですが、それまでに築いてきた愛犬との幸せな時間、素敵な時間が最後の最後でそういう風になるのは、絶対に間違っている、そう思いました。
まだ当時の事を思うと悔しいし、なぜあの時に「もっとこうしてあげられなかったのか」とさまざまなことを考えます。
その出来事が、思い切って「老犬ホーム」を始めようと思いたったきっかけになりました。
オレンジライフ独自の取り組みとは?
オレンジライフ湘南の基本コンセプトは2つ。
まず一つ目は「老犬介護」に関する“エビデンス” (根拠)を積み重ねていくかです。
老犬介護の世界はまだまだ初期段階で、”エビデンス”が確立されていないことがほとんどです。しかしこれだけ多くの老犬のお世話ができる場所は他にはあまりありませんので、多くの経験を根拠につなげ、それをまた新たにお預かりする子たちにフィードバックしていきたいと考えています。
そして二つ目は、犬は歴史の中で人と一緒に暮らすようになって進化が分かれたと言われています。ただお世話をするだけではなく、人とのふれあいを毎日の中に必ず取り入れていくこと、これを日々実践しています。
また長期のお預りだけでなく、在宅介護のサポートに力を入れている点も、オレンジライフ独自の取り組みです。
オレンジライフの施設をご紹介してください
一階と二階に分かれています。
一階にも今回セミナーを開催している場所と同じようにフリースペースがあります。
元々、二階を休憩室のように犬たちがリラックス出来るお部屋にして、一階のフリースペースで運動やリハビリを行う運用を考えていましたが、外のウッドチップスペースと繋がる一階で皆で過ごす事が多くなっています。
場所分けが必要な場合には、外飼いをしていた子やお外で過ごすのが好きな柴犬の子達は一階、大きい子が居るとドキドキしてしまうような小型の子は二階という形で設定をしています。
施設の窓枠を見ると防音材の厚みが分かると思いますが、防音対策はしっかりと行っています。
オレンジライフは、立地的に目の前の道路の交通量が夜中でも多くあるという事と、同じ建物に以前入っていたのが印刷会社ということで、周辺の方々が割と騒音に慣れていらっしゃったのも幸いでした。入口脇にあるウッドチップスペースは歩道に面しており、日中は皆で日向ぼっこをしたりゴロゴロしたりしています。
ご近所の顔馴染みの方は、お預かりしている子たちを気にかけてくれていて、「この間は歩けていなかったけど今日はちゃんと歩けていますね!」と声をかけてくれたりします。
あとは、親子連れのお父さんが子供に「わんちゃんも歳をとるとこういう風になるんだよ」と教えている様子も見かけました。
そういった人や社会との繋がりをもてる場所としても、ウッドチップスペースはとても役に立っています。
感染症対策に関しては、厚労省の介護施設のガイドラインを元に、施設内の獣医師の先生に修正・監修して頂いて、徹底して行っています。
また寝たきりの子が寝たままの状態でも入れるバリアフリーシャワーも自慢の設備の一つです。
オレンジライフでのサービス内容は?
パンフレット等にはモデルケースとして、一日の過ごし方の時間割を記載していますが、シニアの子達はそれぞれのペースがあるので、そんなに時間割通りというわけにはいきません。
例えば食事に関してですが、シニアの子達はどうしても筋力が落ちてきてしまうので、基本はタンパク質が多いフードを与えるようにしています。
食欲が落ちた時は温めやトッピングをしてあげるようにしています。
あとは、人の介護でも利用するシリコンスプーンや、獣医師の先生の管理の下に、高栄養食なども使用しています。
一方で、美味しいものを食べることはとても大事なので、施設内獣医師の先生や飼い主様にご相談しつつ、体調を崩さない程度にその子が好きなものを量やタイミングをみながらあげています。
以前、ホームにいた「ろくちゃん」。
最後の一週間はまともに食事も出来なかったのですが、犬用ケーキだけはお別れの数日前に綺麗に食べてくれました。ろくちゃんの嬉しそうな顔、一生懸命クリームをなめる仕草は私たちの大切な宝物です。
楽しい事を健康を害さない程度に積み重ねていくというのが、私たちのお世話をする上でのこだわりでもあります。
またオレンジライフでは車いすを良く利用します。
歩けなくなった子でも、姿勢の保持や排泄の介助、体幹を整えなど、車いすで立位を取ることにはさまざまな効果があります。
特に寝たきりの状態がずっと続くと身体はどんどん曲がってしまい、内臓に対する悪影響や褥瘡の発生にもつながりますので、在宅介護に取り組んでいるお家にも車いすは積極的におすすめしています。
運動も主に車いすを活用しています。
シニアの子達は姿勢を作るだけでも身体が鍛えられます。なるべく歪みのない体を保てるように、日々快適な生活が出来るように工夫をしています。
寝たきりの子は関節の拘縮が生じないようにマッサージも行っています。
グルーミングは、身体を清潔にするだけでなく集団生活の中で 一対一で甘えられる時間として活用しています。
~ホームの一日の様子を教えてください~
朝はまず排泄のチェックからスタートです。排泄に異常があった場合はすぐに施設内獣医師に報告をして、その後の食事などについて指示を受け、対応します。
排泄チェックが終わったら、朝ごはん。それぞれの基礎疾患にあわせた食事内容とします。
午前中は、褥瘡ケアなどがメインになりますが、その間にフリースペースでの遊びやウッドチップスペースの散策などを入れていきます。
午後になると、それぞれの子のプラスメニューを行います。ウッドチップスペースでの日向ぼっこや車いすを使った立位の保持、カート散歩やマッサージなど、その子の現在の状況にあわせてメニューを実施しています。
夕方ごろから食事タイム。一日の状況を見ながら、食事量や内容を調整し、ご飯を食べてもらいます。
深夜に一度、異常が無いか、スタッフが全頭の見回りを行います。
~(ホームに入居している子は)自分で食べられる子だけですか?~
いえ自分で食べられない子も多くいます。そういった子は誤った方法を取ると誤嚥のリスクがあるので、与えるタイミングを工夫したり、口のどこに乗せるか検討したり、食形態の変更を行うようにしています。
また市販の流動食は種類が限られていますので、ミキサーを使い療法食やドライフードを流動食に加工する場合もあります。
日々試行錯誤の連続ですので、それぞれの子の健康上の制限の中で、さまざまな工夫をスタッフ一人ひとりが行っています。
医療連携に関して
湘南地域は動物を家族にしている方が多く、動物病院が沢山あります。
エックス線撮影などが必要な場合に施設外診療をお願いしている動物病院は、施設から徒歩5分位のところにあります。
動物病院が多いこと、獣医師会か運営している夜間の救急医療センターが平塚市内にあることが、開業場所をここにした理由の一つでもあります。
ただ、夜間急変する子は今まではいなかったため、救急医療センターを利用したことはありません。
また高齢犬ゆえに、どこまで積極的な治療を行うか、全身麻酔が必要な検査などを行うべきかという難しい問題もあります。
そのため日々の健康管理を重視すべく、2016年に施設内医療施設を開設し、獣医師の先生による週1回の基本健診を取り入れるようにしました。
何か病気を治すと言うよりは、QOL(生活の質)を高めるためです。
それまでは「念のためにやめておこう」というのが多かったんです。
例えば「美味しいものを食べさせたいけど身体に悪いならやめておこう」とか、「もう少しお散歩行きたそうだけど疲れそうだからやめておこう」とかですね。
それが獣医師の先生に継続的に状況をみていただき随時相談しながら、わりとギリギリまでやってあげられるようになりました。それぞれの子の楽しみもそこで大きく広がったのかなと感じています。
利用の多い犬種と年齢を教えてください
柴犬が圧倒的多く29%を占めています。
柴犬も含めて、日本犬が半分以上です。
原因は明確になっていませんが、日本犬の子は野生の血が強いので身体は元気だが神経が先に衰えてしまう場合が多いのかもしれません。
もう一つ、一概に言えないのですが、一般的に洋犬の子は幼犬の時にトレーニングが入っている事が多く、気持ちの切り替えがとても上手です。自分の状態が変わった時に、別の楽しみを受け入れてくれるかどうかというのはシニア期を楽しく過ごすためには本当に重要で、若い頃にトレーニング経験をもたせてあげたり、常にアドバイスを受けられるトレーナーさんとも長く繋がっているのが理想的です。
利用開始の平均年齢は14.4歳です。犬種にもよりますが、おおよそ平均寿命と同じくらいの年齢で利用を開始するケースが多いです。
~今はオレンジライフにだいたいどの位の頭数が入居していて、スタッフさんはどの位いますか?~
2020年8月現在20頭ほどです。だいたい20~25頭くらいで落ち着いています。比較的平日の方がデイケアで利用する方が多く、土日は少し少なめになっています。スタッフは、動物管理責任者が、施設の3階に居住しており、24時間管理しています。
時間帯ごとに2名~3名のスタッフが勤務しており、全部で20名ほどのスタッフがオレンジライフを支えてくれています。
預ける理由は?犬側、人間側の理由を教えてください
オレンジライフのご利用を開始するにあたって、犬の病気の発症による介護困難が理由と思われがちですが、意外な事に「犬側の預ける理由」第1位は「(元々の疾患)無し」なんです。
犬の状態というより、飼い主さん側の状況で施設を利用するケースですね。
第2位は認知症で27%、第4位の”脳障害疑い”は認知症に非常に近いです。
第3位は歩行困難です。ただ歩けなくなっただけではなく、犬の方が事実が受け入れられず鳴いてしまい、ご近所に迷惑をかけてしまうとか、困ってご相談される方が多いです。
人間側の預ける理由としては、第1位は飼い主様の入院で31%です。ご高齢の方が多く、老犬なので普通のペットホテルでは難しい場合に利用される方が多いです。
第2位はレスパイトケア(※1)です。
基本的には在宅介護で行っているけど、たまには息抜きが必要になるので、そういった場合にレスパイトで利用して頂いています。人の介護も同じですね。
第3位は重度の介護負担で、私たちからみても一般のご家庭では到底無理でしょうというケースが挙げられます。
パンフレットにも載っているチャチャちゃんは、夜中にハーネスで釣り上げた状態で、夜中に3時間グルグルしないと鳴き止まないという状態でした。チャチャちゃんのために、詳細な介護記録を毎日つけるほど優しいご家庭でしたが、オレンジライフを訪れたときには飼い主様が倒れる一歩寸前でした。
そういったケースも4分の1程度あります。第4位は家族都合です。
子供が受験を控えていたり、遠方の身内の看病といったご家族のご都合で数ヶ月だけ預かって欲しいというケースです。
全体的な傾向としては、日本犬の外飼いだった子が認知症を発症すると、だいたい在宅介護の限界になります。
外飼い自体が悪いわけではなく、お家で暮らすための在宅介護プランの立案や、在宅介護を無理なく続けていくためのサポートで、飼い主様と愛犬、両方の幸せをお手伝いできればと考えています。
シニアになる前から室内でも屋外でも、落ち着けるように慣らして頂くことをおすすめします。
※1 日常的に介護をしているご家族などが一時的に介護から解放され、ゆっくりと休息をとれるように支援すること。いわゆる介護疲れの解消
気になる料金形態を教えてください
ホームページにもパンフレットにも明確な料金一覧を載せています。
一般的な老犬ホームは年単位での割引や、生涯預かりといった形で受けているところが多いようですが、オレンジライフでは「状況が変わったらお家に帰れるように」、最も長い長期プランでもひと月単位で設定し、それ以上使う場合はその都度更新していただいています。
それ以外には短期プランで1週間や、ホテルで1泊だったり、日帰りでデイケアなどそれぞれのご家庭に合わせて、選んで頂けるようにしています。
老犬ホームが最後の選択肢ではなく最終的には、「お家に帰れるように」と思いプランを立てていますし、もっと理想なのは、在宅介護をしながら、時々施設を気軽に使って頂けるような状態が良いと思っています。
終生(生涯)預かりもお願いできますか?
前述のような理由から基本的には生涯預かりは基本的にはお受けしておりません。
ただし一人暮らしで、愛犬と暮らしていて自分に万一があったらどうしようとか、そういったご相談をたまに頂くので、生涯預かりプランの設定だけは行っています。
こちらの料金の算出ですが、14歳の中型犬の料金と、年齢ごとの「生涯医療費(アニコム調べ)」を足し合わせると、230万円となります。7歳だと854万円程になります。
~この結果だけ見るとどうですか?~
「本当にそんなに必要なのか?」と感じる方もいらっしゃると思います。
犬のサイズにもよりますが、長期プランは一日あたり約2,000円。きちんとお世話をしようと思ったらギリギリの価格です。一方、費用を出す側からしたら、月あたり7万円以上の出費を継続していくこともかなりの経済的負担となります。
犬を迎え入れる前に知っておいてほしい現実ですね。
また生涯預かりとなると上記の料金以外にも契約に伴う費用や信託に伴う管理費用など必要となってきますので、基本的にはオススメはしておりません。
稀に問い合わせを頂いても、料金を伝えると考え直す方がほとんどです。
今後の目標を教えてください
まずは「一人で悩まず相談」していただける場所になりたいと思っています。
老犬介護は時に過酷です。責任感があり、愛情深い飼い主様ほど、一人で抱え込んでしまいがちですが、飼い主様が無理をしすぎて倒れてしまった時に一番困るのは愛犬の子です。
コンセプトである「人も愛犬も最後まで幸せな毎日」を皆様に送っていただけるよう寄り添える施設になる事が目標です。
最後の思い出を「辛い思い出」で終わらせないようお手伝いを出来たらと思っています。
長期預かりが老犬ホームの印象だと思うのですが、それに限らず在宅介護も含めて二人三脚でお手伝いをしていきたいと思っています。
すでに長期プランでご利用中の飼い主様も週末はお家に連れて帰ったり、頻繁に施設で面会されたりと、さまざまな形でオレンジライフを活用してくださっています。
人間と同じように老犬介護の世界にも、デイケアなど多彩なサービスがあることを広く周知していくことが今後の目標です。
「ペット安心相談室」にメッセージをお願いします
田代先生と出会った頃、動物に関わる士業の方が増えてきた時期だったこともあり、単に田代先生もその一人、ビジネスとして動物関連のことを扱っている方だと思っていました。
その後いろいろな士業の方にお会いしましたが、田代先生は職務のベースに「動物好き」があり、そこから動物たちへの配慮や、動物を愛する動物関連業者の気持ち、そして飼い主様への共感がご担当いただく業務のすべてに行き届いているように感じます。
契約書を作る時もこちらの要望に出来る限り応えてくれました。「動物好き」なだけでなく、「ビジネス」だけでもなく、非常にバランス良く対応してくださるので、本当に助かります。
ただ、「ペット安心相談室」は大きく範囲がある名称なので、多岐に渡る相談が来てしまうのではないかと心配しています。無理のないようにお仕事頑張って下さい。
最後に一言お願いします
老犬介護は簡単なものではありません。愛情の深さとは関係なく、自宅での限界を感じている飼い主様はまだまだたくさんいるでしょう。
また、人間と違い法的な援助は存在しません。ですので、犬に関わる業界の方が皆で「人と愛犬が最後まで幸せな毎日を」おくれるようなセーフティネットを作っていけると一番良いのではと思います。
トリミングサロンで日々の健康管理を行ったり、トレーナーさんがトレーニングする事で老後の安定に繋がったりしています。かかりつけの動物病院で、日々の健康管理をしっかりと行っていただくことも、愛犬の幸せには欠かせないものでしょう。
また最近では老犬のケアもできるペットシッターさんも増えてきました。シニア犬専門サービスも、老犬ホームやシニア犬専門のペットシッターさんなど、さらに選択肢が多くなることは、飼い主様の幸せにつながっていくことでしょう。
私はこうしたセミナーを開催し、参加者の皆さまとお会いするたびに “味方が増えた”と感じています。動物業界には悲しいニュースも多いですが、これだけ犬のことを大切に思い、飼い主様の苦しみに寄り添うことができる人たちがいるなら、きっと大丈夫と、私自身も勇気をいただいております。
専門家の皆様と連携を取りながら、わんちゃんと飼い主様を支えて行けたらと思います。
インタビューを終えて
代表の堀内さんを始め、スタッフのみなさんは、常に、老犬一頭一頭に対して何が必要で、飼い主さんと最後まで一緒にいられるためにはどんなお手伝いが出来るかを真摯に考え、向き合ってくれています。
こんな施設、こんな方々が近くにいてくれたら、「安心」して我が子と楽しい生活が送れると感じました。
堀内さんの目標とするように“飼い主様に寄り添って、二人三脚”で介護のお手伝いをしてくれる施設が増えることを「ペット安心相談室」も心から願っております。
平塚市にある老犬ホームオレンジライフ湘南の取材記事です。代表の堀内さんは、老犬の介護で追い詰められて、愛犬との幸せな日々を否定するような事態にしないために、専門的な老犬介護技術と人の手の優しさを提供しています。
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