【コラム】民法改正で相続が変わります~配偶者居住権について~
40年ぶりの相続法改正となる民法改正が、平成30年7月6日に参議院で可決され、成立しました。7月13日に公布されています。
現行法では、相続人は、相続開始の時から、原則として被相続人(亡くなった人)の一切の財産を引き継ぎます(民法896条)。したがって、居住用の土地・建物は遺産分割の対象になります。そのため、自宅以外にめぼしい財産がなければ、死亡した夫が所有していた建物に同居していた妻が、遺産分割のために自宅の売却や退去を迫られて住み続けることができなくなるケースがありました。
今回の改正で、「遺産分割における配偶者保護」としてこうした事態を避けるため、相続開始時点で被相続人と同居していた建物に配偶者が引き続き居住できる権利が新設されます。
これは、被相続人の配偶者を保護する視点で設けられた制度であり、「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の2種類があります。
1.配偶者短期居住権
「配偶者短期居住権」は、遺産分割が終了するまでの期間についての居住権を保護する目的の権利です。
相続開始とともに当然に発生し、次のいずれか遅い日までの間、配偶者はそのまま無償で建物に住むことができます。
①分割により建物の取得者が確定した日
②相続開始から6箇月を経過する日
2.配偶者居住権
一方「配偶者居住権」は、長期の居住権で、建物を終身無償で使用・収益できる権利です。
相続開始とともに発生する「配偶者短期居住権」とは異なり、次のいずれかに該当する場合に取得することができます。
①遺産分割において、配偶者が、配偶者居住権を取得したとき。
②配偶者に、配偶者居住権が遺贈されたとき。
③被相続人と配偶者間に、配偶者に、配偶者居住権を取得させる死因贈与契約があるとき。
配偶者は建物の所有者に対し「配偶者居住権」の登記を請求でき、登記することで、第三者に対する権利の主張も可能となります。
なお、「配偶者短期居住権」「配偶者居住権」は、いずれも譲渡することはできず、配偶者の死亡等により消滅します。配偶者の死亡によりこれらの権利が消滅した場合、原状回復義務等の義務は、配偶者の相続人が相続することになります。
また、「配偶者短期居住権」は評価の対象とはなりませんが、「配偶者居住権」はその財産的価値に相当する価額を相続したものとして扱われますので、注意が必要です。
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