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遺言の効力と遺言書作成の際の注意点

自分が亡くなった後の意思をあらかじめ残しておく遺言。遺言には、どのような効力があるのかご存知でしょうか。

この記事では、遺言が持つ効力やその効力が無くなってしまうような場合について説明した上で、実際に遺言書を作成する際にどのような点に気をつけなければならないのかを整理していきたいと思います。

 

 (目次)

1. 遺言の種類

1-1 自筆証書遺言

1-2 公正証書遺言

1-3 秘密証書遺言

2. 遺言の効力

3. 遺言の効力が無くなる場合

3-1 自筆証書遺言で無効となる場合

3-2 公正証書遺言で無効となる場合

4. 遺留分について

4-1 遺留分とは

4-2 遺留分の割合

5. まとめ

 


 遺言の種類

遺言とは、死後にその効力を発生させる目的であらかじめ残しておく意思表示のことです。

その意思表示を書面の形で残したものを遺言書といいます。

 

遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言と3つの種類があり、それぞれに特徴があります。

はじめに、この特徴についておさえておきましょう。

 

1-1 自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言を残す方(「遺言者」といいます。)が自筆で書いて保管しておく一番シンプルな方法です。

 

遺言者は、書面に作成年月日、氏名、遺言の内容を自筆で記入し、自身の印鑑を押印することによって、遺言を残すことができます。

2019年1月13日に施行された改正民法により、相続財産の目録については、自筆である必要はなくなりました。

 

自筆証書遺言について覚えておきたいのは、後述するように、民法により定められたルールをきちんと守っていないと無効となってしまうケースがあるということです。また、遺言書そのものが見つからなければ当然遺言の効力は発生しません。

さらに、遺言書が見つかったとしても、裁判所で遺言書の確認をしてもらう「検認」という手続きが必要なので、相続発生後の手続きが煩雑で時間がかかるというデメリットもあります。

 

これらのデメリットを解消するための制度として、2020年7月10日より、自筆証書遺言を法務局で原本保管できる制度が法改正によりスタートしました。

 

この制度を利用して法務局で保管してもらっていた自筆証書遺言については、紛失や破棄といったリスクがなくなるだけではなく、相続発生後の検認の手続きが不要となります。

また、法務局では遺言の原本を保管するだけでなく、その内容を画像データにして保存してくれます。

遺言書をデータ化することで、死亡後相続人は全国で遺言書の有無や内容を確認することができるようになったのです。

 

しかし、注意点もあります。

保管する自筆証書遺言の内容まで、法務局が確認してくれるわけではありません。

実際に相続が起こった際に、法務局に保管していた遺言の内容に不備があっては元も子もなくなります。

不備のない遺言にするためには、やはり専門家のチェックを受けることをお勧めします。

 

自筆証書遺言の保管制度の詳細はこちらの記事をご覧ください

自筆証書遺言の保管制度について ~遺言書どこに保管する?~

自筆証書遺言保管制度 2つの「通知」と相続開始後の手続きについて

 

 

1-2 公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場で公証人が遺言者の意思に基づいて作成する方法です。

 

公証人は、その多くが、判事や検事などを長く務めた法律の専門家で、法務大臣から任命されています。

公証人が作成する公正証書は、公文書として私文書と比べて高い証拠力と証明力を持ちます。

 

自筆証書遺言(法務局への保管制度を利用しない)との比較で、相続開始後に遺言が発見された場合に、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認を受けなければならないのに対して、公正証書遺言は検認を必要とせず、その遺言をもって遺言のとおりに執行(名義変更等の手続き)が可能です。

 

公正証書遺言の作成は、事前に遺言者やその代理人から遺言にしたい内容を公証人と打ち合わせをして、公証人が法的有効性を確認しながら行います。

自分で自筆証書遺言を作成するケースでよくある、「法律で決められた様式になっていなかったため無効になった」ということは、まずありません。

 

公正証書の遺言作成当日には、証人2人の立ち合いのもと、公証人が遺言の内容を遺言者と証人に読み聞かせるか閲覧させて、公正証書の原本に公証人、遺言者、証人が署名・捺印をします。

この場合の証人は、誰でもなれるわけではなく、推定相続人と受遺者、それらの配偶者及び直系血族、未成年者はなれません。

 

また、公正証書遺言を作成する場合で、遺言者の死期が迫っている時など遺言を書くことができない場合でも、病院などに公証人が出張してくれるので遺言書の作成が可能です。

 

 

1-3 秘密証書遺言

秘密証書遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言の折衷的な方法です。

 

遺言の内容を遺言者だけが把握した状態で、遺言の存在を公証役場で公証人と証人2人に証明してもらうというものです。

その名称のとおり、公正証書遺言遺言の時のように公証人が遺言の内容を確認することはありません。

 

秘密証書遺言は、公正証書遺言と同様に、病気などで公証役場へ行けない場合などには公証人から出張してもらうことが可能です。

 

公証役場に遺言を提出する当日は、遺言が入った封印済みの封筒を持参し、公証人と証人の前で封筒の中身は自分の遺言書だということ、氏名、住所を申述します。

その後公証人が提出した日付と申述内容を封紙に記載し、遺言者、証人それぞれが署名・捺印をします。

 

こうすることで、遺言の執行まで他人に遺言の内容が知られないことと、遺言を封印後に内容の改ざんや偽造される心配もないことがメリットといえます。

 

また、自筆証書遺言と違い、署名の箇所以外の遺言の内容は自筆ではなく、ワープロなどで作成されたものでも有効ですので、自筆で何度も書き直さなくてもよいところもメリットといえます。

 

ただし、秘密証書遺言は遺言の執行まで内容を知られずに済む反面、公証人や証人が遺言の内容を確認することがないため、自筆証書遺言と同様に遺言が法律の方式に沿って書かれているか等のルールが守られていなければ、無効となる可能性があります。

この点には注意が必要です。

 

 

 

 遺言の効力

では次に、遺言が持つ効力を確認しておきましょう。

一般的によく使われる順番に書いてあります。

 

 

遺贈

相続財産は原則として、法定相続人(配偶者や子など)に相続されますが、遺言者は、法定相続人以外の第三者(例えば愛人やお世話になった人など)に対し、相続財産を取得させることが出来ます。これを遺贈といいます。

相続分の指定

遺言書では、法定相続分にかかわらず、遺産の取り分を、遺言者が自由に決めることができます。

例えば、妻1人、子2人がいた場合に、法定相続分は妻が1/2、子がそれぞれ1/4ずつとなります。しかし、遺言により相続分が指定されていれば、子の片方の取り分を多くするなど、法定相続分とは異なる分配をすることができます。

 

民法902条 遺言による相続分の指定

被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

 

遺言執行者の指定または指定の委託

遺産相続の結果、相続財産の名義変更等の手続が必要となります。預貯金の名義変更や土地の変更登記のように、事務手続が必要となることもあります。

遺言者は、このような遺産相続を実施する上で必要となる手続を行う人(遺言執行者)を指定したり、遺言執行者の指定を第三者に委任したりすることが出来ます。

特別受益の持ち戻し免除の意思表示

特別受益とは、相続人が被相続人から生前に贈与を受けていたり、遺贈や死因贈与によって特別に利益を受けることをいいます。

これは、相続人は財産を公平に取得すべきという法律の考え方によるものです。

 

例えば、被相続人が生前に相続人のうちの1人に1000万円の住宅資金を贈与していた場合、何も財産をもらわなかった相続人に不公平が生じます。

この場合、相続が起こった後に、相続財産に生前贈与した分を加算(持ち戻し)した上で、相続分を計算することになります。

 

しかし、被相続人が遺言で、この贈与した分(特別受益)は相続財産に持ち戻しをしない旨の意思表示をした場合は、上記の金額を相続財産に加算せずに、残った財産を分けることになります。

 

民法第903条 特別受益者の相続分

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。

3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

 

※相続税法では、相続開始前3年以内の生前贈与は相続財産に加算して、相続税を計算する決まりになっています。上記の特別受益の持ち戻しとは分けて考えます。

 

参考記事

👉特別受益と遺産分割

👉特別受益があった場合の相続税額の算定方法

 

遺産分割方法の指定と分割の禁止

遺言者は遺産分割の方法を決めることもできます。また、遺産分割方法を決めることについて、第三者に委託することも可能です。さらに、相続開始の時から5年を超えない期間で、遺産の分割を禁ずることもできます。

 

遺産分割においては相続人間で揉めてしまうこともあり、禁止の期間を冷却期間として設けることも想定されているのです。

 

民法908条 遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止

被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

 

子の認知

婚姻をしていない女性との間に出来たいわゆる隠し子がいる場合、遺言者は、遺言でこれを認知する(正式に自分の子であると認める)ことができます。

遺言で認知された子は、被相続人の子として認められるため、法定相続人として財産を相続することが可能です。

相続人の廃除

相続人になる予定の人について、その相続人には遺産を渡したくないという場合には、当該相続人の相続権を消失させることが出来ます。

例えば、被相続人への虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行などの行為が認められる場合等が想定されます。

 

相続人の廃除は、生前に本人か遺言の中で指定された遺言執行者が家庭裁判所に申立てをすることになります。

しかし、例え、遺言で相続する権利を廃除する意思表示があったとしても、廃除したい相続人からの被相続人への虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行などの行為が、実際に裁判官から認められることは少ない傾向にあるようです。

 

民法893条 遺言による推定相続人の廃除

被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

 

未成年者の後見人の指定

残された子が未成年であり、遺言者の死亡により親権者が不在となってしまうような場合、遺言者は第三者を後見人とすることで当該未成年者の財産管理等を委ねる事が出来ます。

相続人相互の担保責任の指定

遺産を相続したにもかかわらず、財産が他人の物であったり、相続財産に欠陥があったりした場合、当該相続人は他の相続人に比べて損をすることになってしまいます。

 

そこで民法においては、問題のある財産を相続した相続人が、他の相続人に対して、損害賠償を求めることができるといったことが認められています。

このような他の相続人の担保責任について、遺言者は、当該担保責任の負担者や負担割合を、遺言により指定する事が出来ます。

 

 

 

 遺言の効力が無くなる場合

これまで遺言の効力を説明してきましたが、遺言を正しく残さなかった場合、これらの効力が発生しなくなってしまうことがあります。

どのような場合に効力が無くなってしまうのか、自筆証書遺言と公正証書遺言に分けて例を挙げていきたいと思います。

 

3-1 自筆証書遺言で無効となる場合

自筆証書遺言が無効となるのは、以下のような場合です。

 

●遺言書を自筆ではなくパソコンで書いた場合やレコーダー等で音声を録音して遺言書とした場合

※民法の改正により相続財産の目録についてはパソコンで打ち出したものも可能です

●形式的な遺言書の要件が満たされていない場合

例:遺言書を作成した日付や押印がない場合などは、日付の記載があっても遺言書を作成した日付と異なる日付である場合にも無効となる可能性があります。

●遺言者以外の人が書いた遺言の場合

※遺言者に言われて代筆した場合も無効となります

●相続する財産の内容が遺言書の記載からでは不明確な場合に無効の可能性

●遺言書作成時点で遺言者が認知症等で意思能力がないと判断された場合

 

 

 

3-2 公正証書遺言で無効となる場合

公正証書遺言の場合は、基本的に無効となることは考えられませんが、以下のような特殊なケースにおいては無効となってしまいます。

 

●遺言者に認知症等の判断能力に欠けることがあった場合

⇒遺言者に遺言能力が無かったとされます

●遺言者が口頭で遺言内容を確認する口授を欠いていた場合

⇒適法な口授がないと無効とされます

●本来証人になれない者が証人となった場合

⇒証人が不適格して無効となります

※1-2で説明したとおり、未成年者、推定相続人やその家族、財産を譲り受ける人とその家族は証人になれません。

 

 

 

 遺留分について

 

4-1 遺留分とは

遺言の効力について正しく理解するためには、遺留分というものについて知っておいた方がいいでしょう。

 

遺留分とは、兄弟姉妹、相続欠格者、相続廃除者以外の相続人に相続する権利が保障された、ある一定以上の財産のことです。

 

少しわかりにくいので、順を追って説明していきます。

 

遺言者が書き遺した遺言書は、形式的な要件が整っていて、かつ明確に内容が記載されていれば、必ずそのとおりの効力を発揮する訳ではありません。

 

例えば、「愛人に全ての財産を譲る。」といった遺言が記載されていた場合、子等の法定相続人からすれば、遺言書の効力に従って親族でもない赤の他人が遺産をすべて相続するというのは納得がいきませんよね。

 

配偶者や子、あるいは孫や親が法定相続人となる場合には、遺言によっても除外できない一定以上の相続分が定められています。

これを遺留分といい、遺言の内容が遺留分を害する場合には、遺留分侵害請求により、該当の遺言部分を無効とすることが出来ます。

このように、子等の法定相続人は最低限の遺産を相続することができるのです。

 

また、上記「特別受益の持ち戻し免除の意思表示」で説明した、生前贈与や遺贈した分を遺言で持ち戻しを免除する意思表示をした場合の遺留分については注意点があります。

 

もし、特別受益をすることで、他の相続人の遺留分を侵害している場合は、遺言等で持ち戻し免除の意思表示をしたとしても、遺留分を侵害された相続人からの請求は免れません。

 

相続人のうちの誰かに、特別に生前贈与や遺贈をする場合は、トラブルにならないように専門家に相談することをお勧めします。

 

 

4-2 遺留分の割合

直系尊属(例えば親や祖父母)のみが相続人である場合は『相続財産の1/3』で、その他の場合(例えば、配偶者や子、孫が相続人となるような場合)は『相続財産の1/2』となります。

 

なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。

 

 

 

 まとめ

遺言の効力についてすべて理解するためには、法律的な専門知識が不可欠です。

 

本やインターネットで調べても、難しく書かれていてわかりづらいことが多いですよね。

ただ、すべてを理解していなくても、目的に沿った遺言を作成することはできます。

 

参考記事

👉遺言作成に必要な書類と具体的な手順

 

一番大切なのは、ご自身が遺言を書く目的を明確にしておくことでしょう。

遺言で想いを実現する早道として、相続無料相談会を活用し相続の専門家に話を伺うことをお勧めします。

 

また、今や、財産を承継する方法は、遺言だけではありません。

財産内容に応じた、専門家からの節税対策や相続対策など耳よりな情報を受けられるチャンスもあります。

 

ぜひ、お近くのソレイユ相続無料相談会にご予約ください。

 

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