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中小企業経営承継円滑化法 民法特例

    2014年7月3日の記事にて「非上場株式等の贈与税の納税猶予及び免除の特例」(以下、「事業承継税制」)制度について取り上げていましたが、同じ経営承継円滑化法の基本的枠組みの中に、「遺留分に関する民法の特例」(以下、「民法特例」)制度があります。

    事業承継税制については平成25年度税制改正により、平成27年1月1日以降後継者の要件等が緩和されましたが、民法特例についても平成27年8月21日に経営承継円滑化法が改正されたことにより、従前は先代の相続が開始した場合に相続人となるべき者(以下、「推定相続人」)に限定されていた対象者が、平成28年4月1日以降の合意に限り推定相続人以外にも拡充されることになりました。

    上記のように制度緩和された事業承継税制と民法特例を活用することで、事業承継の税務面の問題点をクリアできるかもしれません。

     

    自社株式の移動時の問題点

     

     株価が低い時に先代から後継者に自社株式の生前贈与をし、先代の相続発生時に後継者の経営努力の成果で生前贈与時より株価が上昇していたような場合に、後継者以外の相続人(以下、「他の相続人」)から遺留分減殺請求がされた時には、遺留分減殺請求の算定基礎金額は相続開始時を基準に評価された株価となりますので、その上昇した部分の金額も遺留分減殺請求の算定基礎金額に含まれ、結果、後継者の経営努力の成果が他の相続人の財産として還元されてしまうということが起こり得ます。

     また、他の相続人が各自家庭裁判所に申し立て、相続発生前に遺留分を放棄する事もできますが、他の相続人にとっては何もメリットが無い手続きを自身で行わなければならないのは手間であり、相当の負担になると考えられます。

     

    民法特例の意義

     

    上記問題点を受けて、経営承継円滑化法では、後継者が先代から贈与等により取得した自社株式について、遺留分減殺請求をできる推定相続人(相続人となるべき者のうち、兄弟姉妹及びこれらの子以外の者)と後継者の全員の合意を前提として、以下の2つの民法特例が設けられています。

    ①除外合意

     自社株式を遺留分減殺請求の対象から除外するという特例です。後継者が先代からの贈与等により取得した自社株式は、原則として全て遺留分減殺請求の算定基礎金額に算入され、遺留分減殺請求の対象となります。

     しかし、この自社株式を除外合意の対象とすれば、遺留分減殺請求の対象から除く事ができます。 

    ②固定合意

     自社株式を遺留分減殺請求の対象には含めるが、算定基礎金額の計算上は合意がなされた時点での評価額で固定するという特例です。

     後継者が先代からの贈与等により取得した株式等を遺留分減殺請求の算定基礎金額に算入する場合、相続開始時を基準とする評価額となります。
     つまり、合意時3,000万円だった株価が相続時に1億2,000万円になっていた場合、遺留分減殺請求の算定基礎に含まれる金額は1億2,000万円となります。

     この自社株式を固定合意の対象とすれば、あくまでも遺留分減殺請求の算定基礎に含まれる金額を3,000万円とすることができ、9,000万円は算定基礎金額から除く事ができます。


    適用するための手続


     民法特例の適用には、経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可を受ける必要がありますが、他の相続人との間で合意さえ取り交わせれば、その後の手続き自体は後継者単独で進めることができます。

     なお、期間の制限があり、合意をした日から1ヶ月以内に経済産業大臣への確認申請をし、経済産業大臣の確認を受けた日から1ヶ月以内に家庭裁判所への申立をする必要があります。

     また、手続きには、規定された様式の経済産業大臣への申請書や家庭裁判所への申立書を準備するほか、添付書類として合意書、対象となる会社の定款や謄本、一定期間の決算書、先代と推定相続人の戸籍謄本などを添付することとなります。


     将来のご自身の相続を見据えて、従前より門戸が広がった事業承継税制、民法特例を用いた事業承継に取り組まれてはいかがでしょうか?

     ソレイユ相続相談室では、上記特例制度等に拘らず、ケースバイケース様々なご提案をご用意できます。

     是非一度当相談室に相談いただければと思います。

     

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