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「生計を一にする」の定義とは? 小規模宅地等の特例

    小規模宅地等の特例が受けられる「生計を一にする親族とは」?

    宅地を相続税評価する際、相続開始の直前において、被相続人と生計を一にしていた親族の事業又は居住の用に供されていた宅地は、小規模宅地等の特例を利用することができるかもしれません。

     

    この、小規模宅地等の特例の適用を受けることができると、宅地の評価額が、本来の価格の20%か50%で評価できるようになるので相続税の負担が大幅に減少する可能性があります。

    例えば、通常5,000万円と評価される宅地が相続税を計算するときだけ1,000万円で評価されたりするわけです。その効果は非常に大きいです。

     

    小規模宅地等の特例の適用を受けるためには様々な条件があるのですが、その中の一つ、「生計を一にする」と認められる場合とは、いったいどのような状況でしょう。

     

    今回は「生計を一にする」とは何なのか検討してみたいと思います。

     

    「生計を一にする」についての判断基準

    その通達によると、税金の種類によって多少異なりますが、「生計を一にする」とは…

    ●納税者と有無相助けて日常生活のお金(資)を共通にしていることをいう。

    ●必ずしも同居であることを要件としない。

    ●仮に同居していても、互いに独立し、日常生活の資を共通にしていない場合は生計を一にするものではない。

     

    例えば、会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、

    ①生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、

    ②日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

     

    生計を一にするイメージ図

     

    したがって…

    (1)同居している場合には、明らかにお互い独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、一般的には「生計を一にしていた」ものと認められます。

    (2)別居している場合には、個々の事情と実態に応じ判断することとなりますが、少なくとも住居費や食費、光熱費などの生活費や、学費、病院や介護施設等の療養費など、日常の生活に係る費用を負担しあっていたかどうかが、判断基準となります。

    実務の上では、上記の基本的な考え方を基に、家計簿や預金通帳などからお金の流れを確認し、経常的に生活費や学費、療養費等の援助があったかどうか、判断していきます。(税務調査の際などは、数年遡って実態を確認します。)

     

    こんな場合は?

     

    家計費を一定割合ずつ分担している場合

    親子で同居している場合に、親が一旦家計費を支払い、子供がそのうちの50%を一律負担することにして、後日清算しているような場合はどうでしょう。

     

    パソコンで作業をする女性のイラスト

    親子の双方で家計費の負担が生じているので、別々で生計を立てているようにも感じますが、判例では「家計費を一定の割合で負担している事実は、「生計を一にする」との要件の充足を否定する方向に働くものとはいえず、むしろ逆にこれを裏付けるものである。(東京高裁、平成16年6月9日)」とされています。

     

    つまり、家計費の金額のうち一定割合を負担することは「生計を一にする」要件の一つになるということです。別の生計であるためには、例えば「全体の金額のうち、食費○○円、光熱費××円はうちの分だから、その分だけ清算するね。」と個別具体的に清算するようにした方が確実です。

     

    家計費は負担していないが生活を助けている場合

    高齢の親を助けるため、子供が食事を作ったり介護をしたりすることがあります。その食費や介護の費用を親自身が負担している場合には、生計は別であると解されることになります。「生計を一にする」と証明するためには経済的な負担が生じていることが重要です。

     

    生前の相続税シミュレーションにおいて小規模宅地の特例を活用する計画のある方は、推定相続人が「生計を一にする」親族かどうかで全く計算結果が異なってしまうかもしれません。

    親族間でのお金の流れを確認し、「生計を一にする」判断を誤らないようにしたいものです。

     

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